セットAとセットBの併用でグループリーグを突破した森保ジャパン。2つの戦い方の違いは?

COLUMN清水英斗の世界基準のジャパン目線 第77回

セットAとセットBの併用でグループリーグを突破した森保ジャパン。2つの戦い方の違いは?

By 清水 英斗 ・ 2019.1.18

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森保一監督は、セットAとセットBを分けて3試合を戦い、アジアカップ・グループリーグを首位通過した。


トルクメニスタン戦とオマーン戦では、主力のセットAを長く引っ張り、3戦目のウズベキスタン戦ではセットBへ全面チェンジ。セットAは7日の休みを得て、身体をリセットし、ラウンド16のサウジアラビア戦に挑める。


ウズベキスタンのクーペル監督のように、各試合で3~4人を入れ替えながらマネージメントする方法もあったが、森保監督が採用したのはAB方式だった。


日本の両セットは、全体設計こそ同じだが、選手の特徴により、細部が異なっていた。いちばんわかりやすいのは、攻撃の志向性だろう。セットAは中央の飛び出しやコンビネーションに優れるが、セットBはサイド突破とクロスに怖さがある。ウズベキスタン戦では、伊東純也の縦突破からのクロス、武藤嘉紀の迫力あるワンタッチシュートが目立ち、セットAにない魅力を、存分に発揮した。


また、守備も違いがある。それはボランチを軸に考えると、わかりやすい。


オマーン戦で先発したセットAの遠藤航と柴崎岳は、スペース管理を丁寧に行っていた。試合中、遠藤は吉田麻也と何度も話しながら、ジェスチャーをまじえて、相手FWを縦に挟むポジションを取ることを、確認し合っている。遠藤はスペースを埋める作業を丹念に実践し、トルクメニスタン戦でそれが出来なかった柴崎も、オマーン戦では意識が変わり、修正の跡が見られた。


ところが、ウズベキスタン戦の青山敏弘と塩谷司の守り方は違う。


『スカサカ!ライブ』で岩政大樹さんも指摘していたが、青山と塩谷は、相手インサイドハーフの22番シディコフと18番ムサエフをマンツーマンで見ている。もちろん、どこまでも追うわけではない。ポジショニングはボランチの範囲だが、マークは人に付くやり方を採った。そのためバイタルエリアが空き、センターバックの槙野智章と三浦弦太の前で、蓋が出来ない状況は多かった。


しかし、ウズベキスタンの1トップ、14番ショムロドフは、裏へ抜ける意識こそ強いが、下りてボールを受けたとき、何が出来るわけでもない。日本はボランチが人中心の守備を行い、ディフェンスラインも、槙野と三浦で14番ショムロドフ、サイドバックはそれぞれ1対1と、全体的に人合わせの守備をしていた。


ウズベキスタンの特徴を踏まえた「プランB」


日本の守備は、3戦共に[4-4-2]で構えているが、過去2戦、特にオマーン戦と比べると、3戦目のウズベキスタン戦は味方同士にバラバラ感がある。それはスペース管理よりも、人に付く傾向が強かったからだ。セットBの特徴、連係の不安、さらにウズベキスタンの特徴を踏まえた上で、このやり方を採ったのではないか。


両サイドの乾貴士と伊東の守備も特徴的だった。相手のサイドバックが高い位置を取っても、マークに付いて下がらない。中盤ポジションを保ち、前へ圧力をかけ、カウンターの起点になっていた。


象徴的だったのは、前半19分の場面。ウズベキスタンのサイドバックが高い位置を取ってきたが、乾は下がらず、マークを捨てた。そしてコースを切りつつ寄せ、ボールを持った22番シディコフへ武藤がチャレンジすると、こぼれ球を拾った乾がロングドリブルを開始。カウンターの起点になった。


サイドチェンジに対して弱みは抱えるものの、むやみにマークに付いて最終ラインに吸収されると、中盤を打開できる乾の特徴が出ない。伊東も同様だ。ウズベキスタンの両サイドバックが控え選手ということもあり、日本はこのような戦術を採ったと考えられる。


マンツーマン守備の課題


しかし、物事には必ず、表裏がある。日本が迎えたピンチは、このマンツーマン守備の弱点を突かれる形がほとんどだった。


どこでマークを受け渡すか、どこまで付いていくか。相手がポジションを横断する動きを繰り出すと、マンツーマンは課題を抱える。


たとえば前半16分、左サイド側に下りた14番ショムロドフにロングボールが入った。ここで日本は槙野と佐々木翔が、2人共にショムロドフに突っ込んでいる。結果、ボールはスルーされ、タッチライン際でフリーの17番ハムダモフへわたり、ピンチを迎えた。


そのまま付いて行った槙野と、マークを受け取ろうとした佐々木。ショムロドフが中央からサイドへ流れ、ポジションを横断して行く動きが、2人に問題を引き起こしている。


前半36分にも、ショムロドフへのロングボールから裏を取られたが、こちらは単純なチャレンジ&カバーのミスだった。槙野と三浦の2人で充分に対応できる場面だったが、単純な連係ミスで裏を取られ、シュートを打たれた。特に何かを仕掛けられたわけではない。自滅だ。


スローインを整理していたウズベキスタン


一方、前半40分の失点シーンは、うまく連係でマークをずらされた。起点はウズベキスタンが陣内で始めるスローインである。


青山は目の前の18番ムサエフを見ていたが、ムサエフがタッチライン際まで流れると、佐々木がそのマークを受け取った。ところが同時に、佐々木がマークしていた17番ハムダモフが中へ入ってきた。間違いなく、反復練習されたパターンだ。このマークを青山が受け取ることができず。また、塩谷が代わりにマークして、青山が再カバーといった連動も間に合わない。


その結果、ムサエフのフリックから、ハムダモフがフリーで前を向くと、遅れて寄せた塩谷よりも一瞬早く、スルーパスを出されてしまう。そして槙野を振り切ったショムロドフが、カバーに入った三浦をかわし、ゴールネットを揺らした。付け加えるなら、三浦の予測がもう少し早ければ、もっとボールサイドへ寄り、突進するショムロドフの正面に間に合ったかもしれない。


いずれにせよ、起点となったのはマンツーマン守備の泣き所。ポジションを横切る連係プレーだった。


この場面に限らず、クーペル率いるウズベキスタンは、スローイン戦術をしっかりと整理していた。「スローインはスロワーが1人外に出ている。数的不利だ」と警告したのは、イビチャ・オシムだが、ウズベキスタンは、はめられたマークをずらす連係により、人に付く日本の守備を攻略した。


決勝トーナメントでどのような融合を見せるか


もっとも、このようなウズベキスタンの連係は、流れの中では限定的だった。それによって助かった部分もある。


青山と塩谷のコンビは確かに良かった。しかし、相手がウズベキスタンだからこそ、人に付く守備を採用できた面もある。青山と塩谷は、相手インサイドハーフとポジションが重なり、マークをつかみやすい。特に塩谷にとっては、やりやすかったはず。もし、失点場面のような連係を、流れの中でも複数繰り出されていれば、耐えられただろうか。


あるいは相手がトップ下を置き、バイタルエリアで1人浮く南野タイプの選手がいたとき、そのスペースをうまく潰せるだろうか。相手が2トップを敷く場合を含め、センターバックとの協力が求められる試合では、人につくボランチのやり方ではうまくいかない。青山と塩谷は確かに良かった。しかし、オマーン戦のように、バイタルエリアのスペースを管理しながら戦えるかどうかは未知数だ。


セットAとセットBは、全体設計こそ同じだが、選手の個性により特徴は異なる。両セットの接点をどこに見出し、融合するのか。決勝トーナメントが楽しみだ。(文・清水英斗)


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清水 英斗

清水 英斗

サッカーライター。1979年生まれ、岐阜県下呂市出身。プレイヤー目線でサッカーを分析する独自の観点が魅力。著書に『日本サッカーを強くする観戦力』、『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』、『サッカー守備DF&GK練習メニュー 100』など。

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