大迫に見えた若さ、川島に見られた落ち着き。ベテランが発揮した、国際舞台の経験値

COLUMN清水英斗の世界基準のジャパン目線 第90回

大迫に見えた若さ、川島に見られた落ち着き。ベテランが発揮した、国際舞台の経験値

By 清水 英斗 ・ 2019.6.24

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若さのアクセル、経験のブレーキ。安定して走るためには、どちらも必要な要素だ。


コパ・アメリカ、グループリーグ第2戦。ウルグアイ戦の前半12分、日本はカウンターを食らった。エディソン・カバーニがワンツーで突破し、最後はクロスをルイス・スアレスがヘディングで合わせる。危険な場面だが、GK川島永嗣は、正面でボールをキャッチした。


その後、川島は前方へ歩を進めるも、すぐには配球せず。手を前に出して「待て」と合図し、間を作った。そして味方がポジションに戻り、状況が落ち着いたのを確認すると、ゆっくりとアンダースローで板倉滉へボールを渡した。


何でもないプレーだが、チームに落ち着きを与える川島の所作は、目立って感じられた。この場面に限らず、後半の押された時間帯では、特に。


素早い配球が招いたピンチ


なぜかと言えば、チリ戦ではGK大迫敬介の配球を急く判断に、気になる場面があったからだ。


前半35分、チリはコーナーキックの流れから、アレクシス・サンチェスがミドルシュートを打った。ボールは枠上に外れ、ゴールキックに。すると大迫は、すぐにボールを受け取り、すぐに冨安健洋へ渡す。


ところが、冨安はチリの鋭い出足に追い詰められ、前方へ苦し紛れのロングボールを蹴るしかなくなった。これをチリの選手に跳ね返され、ショートカウンターを食らう展開になった。ピンチに次ぐ、ピンチ。呼吸を整える暇もない。最後はアルトゥーロ・ビダルのスルーから、またもサンチェスがシュートを放った。


たしかに大迫が配球した時点で冨安はフリーだったが、それ以外の選手はほとんどポジションに着いていない。準備が出来ていたのは、冨安と植田直通だけだ。日本はコーナーキックの守備だったので、ほぼ全員が自陣に帰っており、特に前線の選手はポジションに戻るため、長い距離を移動しなければならない。その最中、大迫が拙速な配球をしたために、プレッシングの標的となり、日本は二次攻撃を受け続けた。


前半の中ごろ以降はチリに押し込まれる展開が続き、日本にとっては苦しい時間帯。息を整え、心の落ち着きを得て、立て直しを図りたい。そこへ大迫から、即時配球のムチが振られてしまったため、日本はさらに苦しくなった。


もちろん、森保ジャパンにおいて、GKが素早く配球し、足下を使ってビルドアップを行うことは基本的な戦術だ。それは大迫に限らず、川島も、テンポ良くボールを動かそうと努力した。


だが、チームのやりたいことが、いつでも有効なわけではない。アクセルとブレーキは、セットで使う。チームとしてビルドアップのアクセルを踏む約束事があったとしても、状況が許さなければ、ブレーキを踏むべき場面もある。どちらも堂々とプレーしたが、状況判断について、大迫には若さを、川島には経験を感じる、この2試合だった。


岡崎が見せた、適切な判断


同じような要素は、川島だけでなく、岡崎慎司にも感じられた。


ウルグアイ戦の前半25分、三好康児が先制ゴールを挙げた直後、ウルグアイは左サイドバックのディエゴ・ラクサールが負傷し、ピッチ外へ出た。すると、キックオフの笛と同時に岡崎慎司が猛烈なプレスをかけ、あわやPKという場面に持ち込む。失点のショックと、1人少ない数的不利の状態にあったウルグアイの隙を、岡崎は狡猾に突いた。


深い位置にいる相手センターバックを追い回すことは、この試合の森保ジャパンの約束事ではなかったはず。しかし、岡崎はそれをやった。約束事を踏まえた上で、試合の状況を読み、必要なプレーは自分で探す。


川島と同じく、岡崎にも経験を感じる試合だった。U-22世代の選手にとっては、大きな刺激になったのではないか。


そして、いつまでも「若さ」で済ませるわけにはいかない。


前述した岡崎の場面の直後、ウルグアイも狡猾な所作を見せていた。DFラクサールを失い、1人少ないコーナーキックの場面で、突然、MFルーカス・トレイラがすねを押さえて座り込んだことだ。メディカルスタッフが走ってきたが、大した処置をするわけでもなく、トレイラは外へ。これらを行っている間に、ウルグアイはラクサールに代えてDFジョバンニ・ゴンサレスを投入し、補充に成功した。


たまたま168センチと、コーナーキックの守備では役に立たないトレイラが足を痛め、その間に交代完了。ああ、ウルグアイは幸運だったね……と言うサッカーファンは何処にもいないだろう。トレイラはその後もプレーを続け、フル出場したし、試合翌日のトレーニングでは、レギュラー組でランニングをこなした。


日本の五輪世代とそれほど変わらない23才の選手だが、あの場面で自分が座るべきと、サッと座り込んでしまう。あまりにも自然で驚く。


そんなことも、こんなことも、コパ・アメリカには盛り沢山だ。東京五輪世代にとっては、何より身になる実戦経験だろう。だとすれば、何としてもエクアドルに勝ち、決勝ラウンドを経験するべき。武運を祈る。(文・清水英斗)


写真提供:getty images

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清水 英斗

清水 英斗

サッカーライター。1979年生まれ、岐阜県下呂市出身。プレイヤー目線でサッカーを分析する独自の観点が魅力。著書に『日本サッカーを強くする観戦力』、『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』、『サッカー守備DF&GK練習メニュー 100』など。

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