新春特別対談 河治良幸×清水英斗「どうなる?日本代表のアジアカップ」

COLUMN【新春特別対談】河治良幸×清水英斗 世界基準の真・日本代表論 ①

新春特別対談 河治良幸×清水英斗「どうなる?日本代表のアジアカップ」

By 河治良幸 ・ 2019.1.1

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2019年の日本代表は、1月にアジアカップというビッグマッチを控えている。果たして、森保ジャパンはどのような戦いを見せてくれるのか? 日本代表の取材を長年続ける河治良幸氏と清水英斗氏に、アジアカップの展望について話を聞いた。


清水:最近、話題になってますね。ロシアW杯の日本対ベルギーの最後の場面。いわゆる「ロストフの14秒」。


河治:そうですね。1シーンをあれだけ踏み込むのは、今後のためにもいいことだと思います。ただ、勝負の本質として問題なのは、2-0とリードしている状態から追いつかれたことなんですよね。ベルギーが素晴らしかったのもありますけど、W杯の全64試合中、2-0から追いつかれたチームは日本しかいないので。


清水:そうですね。2-0からの事故っぽい失点は、たちが悪かったですね。「それで入っちゃうんだ」と大迫勇也も言っていましたけど、入ってしまって、一気に日本は浮ついた。


河治:4年前(ブラジルW杯)、アルジェリアを率いていたハリルさんが、ベルギー戦でフェライニにやられてるじゃないですか。そういう経験もありましたからね。ハリルさんでああいうシチュエーションになったかどうかは、実際に率いていないから仮定してもしょうがないですけど。


清水:やはり1点返されたところが、転機だったなと。ベルギーの選手も「あのゴールで息を吹き返した」言っていますし。


河治:「魔の時間帯」というか、何回やり直しても結局フェライニのゴールに行きそうな。10回試合をしたら、8、9回はフェライニのゴールで追いつかれるだろうなと。


清水:植田直通を入れて、3バックにする判断もあったと思いますが。


河治:そういう時のために用意しているメンバーなのに、使いきれないで終わるのは、辛いものがありましたよね。西野さんはコロンビア戦で神がかっていたし、セネガル戦でいいサッカーをして、ベルギー戦もあそこまで持って行ったのは素晴らしかったですけど、選手交代を含めたメカニズムみたいなところは・・・


清水:ゲームプランの甘さはありますよね。


河治:現場に立っている監督の心理もあるので、俯瞰の上から目線で言うと偉そうになっちゃうけど、そこが問われるのが監督ですから。


清水:4年ごとに課題を持ち越しているんです。2014年の時は、チームが全力を発揮できず、ファーストプランの時点でうまく戦えなかった。2018年は西野さんになったことで、チームビルディングはうまく行ったんですけど、この4年間でやるはずだった世界仕様や、ゲームプランを持って戦うこと、相手の長所を潰すところは無くなったも同然になり、結局はその部分で負けてしまった。アジアカップでは持ち越した課題を消化するような、ベルギー戦の反省が生きるようなゲームを、森保さんに期待したいですね。


河治:A代表だけでなく、U-19、21代表を含めて森保さんが率いるのは、東京五輪のためだけでなく、協会もそのあたりを考えてやっているとは思いますけどね。2018年のW杯で出た課題を2022年につなげていくためにやっていると思いたいです。


清水:その意味でも、アジアカップは決勝トーナメントの戦いに注目したいですね。ベルギー戦のように、うまくいかない時やリードされた時に、選手起用も含めて、どういう戦い方ができるか。日本は岡田さんもザッケローニも、4-4-2で守備をしていましたよね。ハリルさんが4-3-3にして、中盤を相手に噛み合わせた時もありましたけど、西野さんになって4-4-2に戻りました。森保さんも4-4-2で守備をしています。


河治:そうですね。


清水:4-4-2で守備をする場合、たとえば相手が両サイドバックを上げてくると、日本の両サイドハーフが下げられます。いわゆる引かされた状況。結果としてDFラインと中盤の4-4と、2トップの距離が離れ、相手に一方的に押し込まれる。そういう問題が、過去の試合でよく起きてきた。森保さんのチームもそのリスクはあるんです。中島翔哉と堂安律が低い位置に下げられると苦しい。そこで、相手の最終ラインの裏のスペースに一発で抜けて、ポイントを作るために、アジアカップのメンバーに浅野拓磨を招集したと思ったんです。ケガで辞退し、代わりに武藤嘉紀が選ばれましたが。リードした状況のしのぎ方であったり、4-4-2の守備が相手にハメられたときの打開策などは、アジアカップで見られたらいいなと。


河治:キリンチャレンジカップのウルグアイ戦も、4点取ったので問題視されていませんでしたが、6バックになる時間帯がありました。そうなると、耐えるしかないですからね。森保さんのチームは南野がトップ下に入る4-2-3ー1にはなっていますが、守備は完全な4-4-2です。


清水:4-4-2ですね。そこから奪ったボールを南野拓実や大迫に当てる。2人とも真ん中で作るのがうまいので、足元でつないで堂安や中島が上がる時間を稼げると、いいカウンターになるんです。でも、それが常にできるわけじゃないし、引かされた状況から何度もやるのはリスクがある。浅野がケガをしたので、一発裏抜けの選択肢は武藤嘉紀になりましたけど、どうマネジメントしていくのかは注目したいです。


河治:アジアカップはグループリーグ初戦のトルクメニスタン戦から始まって、2戦目がオマーン。順当であれば、3戦目のウズベキスタン戦が、グループの1位と2位を決める試合になりそうです。ウズベキスタンはクーペルが監督になって、サイドアタックが強く、推進力に定評があるチームになりました。日本の課題が出やすい相手です。守備を固めてから前に出て来るので、日本は一度引き出された状態で戻されて、たとえ跳ね返しても相手サイドバックの上がりに対して、中島や堂安が下げられた状態になって、二次攻撃からやられる展開も考えられます。


清水:はい。


河治:ただ、ウズベキスタン戦は3戦目なので、両チームともメンバーを替えて戦う可能性もあります。なんせ、決勝戦まで7試合ありますから。


清水:そうなんですよ。グループリーグ3試合の中で、サブ組をメインにする試合を1つは作りたい。普通に考えれば3戦目のウズベキスタン戦ですけど、初戦のトルクメニスタン戦でやっても面白いんじゃないかと思います。


河治:例えば2018年シーズンの鹿島は、JリーグとAFCチャンピオンズリーグで常にスタメンの2、3人を替えていました。チームが成熟していない段階では難しいかもしれませんが、やり方としてはあると思います。


清水:そうですよね。森保さんが選んだメンバーって、ポジションごとに似た選手を選んでいるので、AとBではなく、AとAマイナスだと思うんです。そう考えると、2、3人替えながら戦うのは、やりやすいんじゃないかなと。アジアカップのメンバーにいないタイプという意味では、鎌田大地を招集するのもアリと思ったけど、そういう変わり種はなく、慣れた選手で固めてます。


河治:アジアカップのチームは、いわゆるトップ下タイプがいませんからね。


清水:南野はFWですからね。2トップのセカンドタイプ。


河治:鎌田の方がボランチの前で攻撃の起点、フックになれる。そこは南野と違う部分です。アジアカップのメンバーだと、柴崎岳が1つ前に上がるぐらいしか選択肢がありません。


清水:大迫の控えを考えるなら、鎌田だと思います。鎌田をトップ下に入れることで、ボールをキープすることができます。そこでためて、相手のDFラインの裏に抜けるタイプの1トップを前に置けばいい。


河治:浅野の使い方もイメージしやすくなりますね。


清水:ザックジャパン時代のトップ下に本田圭佑、前線に柿谷曜一朗という構成に近いです。


河治:鎌田がハマったら、中盤に青山敏弘を置く意味も強まります。鎌田の前後で、浅野と青山の縦のホットラインも生きるかもしれません。鎌田がボールをキープしながら相手DFを釣り出しておいて、青山から浅野へ一発でパスを通すという。バリエーションができますね。アジアカップは優勝を目指す中で、出てくる課題にどう向き合うのか。何ができて、何ができないかをチェックする大事な機会でもあります。


清水:そうですね。


河治:少なくともグループリーグの時点では、決勝トーナメント進出は問題ないだろうと思っています。その中で選手をどう起用するのか。決勝までの7試合を想定してターンオーバーなのか、何人かずつ替えるのか。


清水:日本以外に注目するチームはありますか?


河治:優勝を争うライバルと言う視点で見ると、イランは戦力的に日本より1ランク上だと思っています。ロシアW杯でのイランの戦いぶりを見てもそうですし、ケイロス監督は2011年からチームを率いているので、継続性もあります。韓国は日本には強いかもしれませんが、イランが苦手です。


清水:それぞれ苦手なチームはありますよね。韓国は日本とはやりやすいけど、イランやオーストラリアとはやりずらいと思う。


河治:決勝トーナメントでイランがサウジアラビアに当たって、気づいたら負けていたということもあるかもしれません。韓国がイランに負けて、イランがサウジアラビアに負けて、日本がサウジアラビアと戦うという理想的な流れも考えられます(笑)


清水:サウジアラビアは戦いやすいですよね。日本はロシアW杯のアジア予選最終戦で負けましたけど、あれはW杯出場決定後の試合でしたから。


河治:前回のアジアカップで、オーストラリア対韓国の決勝戦を取材したのですが、すごく熱い試合でした。決勝ってやっぱりすごいなと思ったので、日本にも熱量のある試合を経験してほしい。決勝戦だからこそ、味わうことのできる緊張感や経験もあると思うので。自分は日本が勝っても負けても、決勝戦まで滞在する予定です。


清水:今回は3位決定戦が無いですからね。勝ってもらわないと、河治さんは独りぼっちになるという。(笑)


河治:そんな感じですね。宇都宮徹壱さんだけいるかもしれない(笑)


写真提供:getty images

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河治良幸

河治良幸

サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを担当。著書に『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)、『解説者のコトバを聴けば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)。

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