高い授業料を払ったチリ戦。キャプテン柴崎が語る、ウルグアイ戦に向けたポイント

COLUMN河治良幸の真・代表論 第38回

高い授業料を払ったチリ戦。キャプテン柴崎が語る、ウルグアイ戦に向けたポイント

By 河治良幸 ・ 2019.6.20

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「1試合を無駄にしてしまったな」と、チリ戦後に冨安健洋は語っていた。その意味の捉え方は簡単ではないが、コパ・アメリカの大事な初戦を授業にしてしまったということだろう。


今回のメンバーは東京五輪でメダル獲得を目標とする構成であり、ベストメンバーで参加できないとわかった時点で、そういう路線は想定されていた。しかしU-22、A代表ともに主力として定着してきている冨安のような選手は、コパ・アメリカを”経験の場”として捉えてはいないだろう。本気で勝ちに行って、そこから何を得られるかが大切なのだ。


ただし、チリ戦で得た教訓を、2試合目のウルグアイ戦に生かすことはできる。ウルグアイ戦の前日会見に森保一監督とともに出席した冨安は「正直、チリ戦のような戦いをしていたら、ウルグアイには勝てない」と厳しい表情で語った。


「戦術の前に、精神的なベースでウルグアイより有利に立てるか。チームとしても個人としても、求めて行きたい」(冨安)


チリ戦は選手たちが気持ちで負けていたとは言わないが、探り探りのプレーになっていたところを、経験豊富なチリの選手に付け込まれた。ウルグアイ代表のオスカル・タバレス監督は日本のチーム力を評価しながらも「チリが、より経験があったことが重要だ」と、4-0の結果に繋がった見解を語っていた。


経験値に大きな差があるのは試合前から想定できていたことであり、それが現実として示されたにすぎない。大舞台に臨むにあたり、現地でトレーニングマッチを組むなどの準備をして大会に入ることができれば、初戦は地に足を付けて戦うことができたかもしれないが、今回はブラジルに渡り、4日間という準備期間で初戦に入るしかなく、用意周到なチリにアドバンテージを握られる結果となった。


コパ・アメリカはW杯と同等の大会(柴崎)


チリ戦の前日会見で森保監督にキャプテンマークを託された柴崎岳は、コパ・アメリカについて「ロシアW杯と同等の大会だと個人的には思っている。フルメンバーで来たかったのが率直な感想」と正直な気持ちを語った上で「同じ心意気でやらないと、一瞬でやられてしまう」と、現在の若いメンバーも、A代表として勝負に行かなければ、相手に有利なポジションに立たれてしまうことを警戒していた。


確かにチリ戦は、局面を切り取ればチャンスもあり、ボールを握って攻め込んでいた時間もあった。しかし、それはあくまで局面であって、全体としては要所でチリに試合をコントロールされていた。0-2になった状況から久保建英の突破や上田綺世の飛び出しなど、日本のゴールになってもおかしくないシーンはあったが、仮に1-2にできたとしても、それはそれで残り時間をコントロールされていただろう。


実際はそこから2点を追加されたわけだが、柴崎は「ちょっとした攻守の距離に関して、攻めているときほどリスクマネジメントをしっかりしないといけない部分で、管理が足りなかった」と振り返る。


したたかだったチリの戦い方


柴崎はチリに関して、今回のスタメンではもっとも経験が豊富な選手らしい観察をしていた。


「(若手主体の日本についての)情報は、チリもあまり無かったでしょう。でも試合が始まって時間が経つにつれて、どこにウィーク(弱点)があるのかが分かると、そこを徹底的に突いてくる。敵ながらうまいなと感じました。逆に僕らが、そこをちゃんと修正しなければいけない」


立ち上がり10分ぐらいまで、日本がリズムよくチャンスを作れていた時間帯は、チリが観察をしながら試合を進めていたのは確かだろう。だからこそ、早い時間にゴールを奪って、自分たちのペースに持っていきたかったが、そうはできなかった。チリが攻守両面のギアを上げてきたところで日本は後手を踏み、原輝綺と中山雄太にイエローカードが立て続けに出される流れになった。


そして、前半の終盤にセットプレーから最初のゴールを決められると、後半の序盤にセットプレーでサイドをえぐられたところから、バルガスに打たれたシュートが冨安のブロックに当たり、コースを変える形でゴールを割ってしまった。


ウルグアイ戦に生かしたい教訓


2点リードしてからは、ベテランの多いチリが意図的にペースを落としてきたことで日本はボールを握れたが、チリとしては仮に失点しても2-1ということで、危険なところにだけ人数をかけ、いい形でボールを奪い、効率よくカウンターを狙う形に変えていた。


そうした状況において、ある程度仕掛けられるのは当たり前で、久保建英や途中出場の三好康児、安部裕葵が惜しいシーンを作り出したことは評価したいが、リスクを負って攻めている中で決められないと、どこかで裏を返されることになる。


初戦はそれなりにチャンスは作れたが1点も決められず、逆に4点を決められた試合という見方もできる。日本のチャンスの多くは、そうしたプレーをチリが許してくれた時間帯であり、高い位置から強度を上げられた時間帯はなかなかボールを運べず、パスをカットされるシーンも目立った。


「(経験の少ない)彼らも未体験のレベルだったでしょうし、いっぱいいっぱいだったと思いますが、彼らなりにこういった相手にどう対応して行くか、対応を変えたりしていたと思います。もっと上を目指さないといけないので、この試合に関してアップデートして行くことが大事だと思います」


柴崎は若い選手たちを労うとともに、チリ戦の教訓をウルグアイ戦で生かす重要性を語った。初戦から中2日で迎えるため、森保監督は数人のスタメン変更があることを明かしたが、初めて試合に出る選手がいたとしても、チリ戦で払った授業料をウルグアイ戦で回収できないと、初戦が無駄になってしまう。


ウルグアイはチリとは違った特徴を持つ相手だが、相手のゲームコントロールに持っていかれないような入り方、試合中のアダプトを選手それぞれが意図を持ってやっていきたい。(文・河治良幸)


写真提供:getty images

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河治良幸

河治良幸

サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを担当。著書に『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)、『解説者のコトバを聴けば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)。

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