コパ・アメリカからちょうど1年。代表メンバーの現在地を追う

COLUMN河治良幸の真・代表論 第59回

コパ・アメリカからちょうど1年。代表メンバーの現在地を追う

By 河治良幸 ・ 2020.5.27

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2019年のコパ・アメリカに挑む、日本代表のメンバーが発表されたのは、5月24日だった。それから1年が経ったわけだが、23人のメンバーのうち、東京五輪世代の18人はブラジルでの貴重な経験を経て、どのような位置にいるのだろうか?


【コパ・アメリカ2019メンバー(所属クラブは大会当時)】


GK

○川島永嗣(ストラスブール/フランス)

小島亨介(大分トリニータ)

●大迫敬介(サンフレッチェ広島)


DF

○植田直通(セルクル・ブルージュ/ベルギー)

●板倉滉(フローニンゲン/オランダ)

岩田智輝(大分トリニータ)

立田悠悟(清水エスパルス)

原輝綺(サガン鳥栖)

杉岡大暉(湘南ベルマーレ)

菅大輝(北海道コンサドーレ札幌)

●冨安健洋(シント=トロイデン/ベルギー)


MF

○柴崎岳(ヘタフェ/スペイン)

○中島翔哉(アル・ドゥハイル/カタール)

●中山雄太(ズヴォレ/オランダ)

三好康児(横浜F・マリノス)

●伊藤達哉(ハンブルガーSV/ドイツ)

松本泰志(サンフレッチェ広島)

渡辺皓太(東京ヴェルディ)

安部裕葵(鹿島アントラーズ)

●久保建英(FC東京)


FW

○岡崎慎司(レスター・シティ/イングランド)

前田大然(松本山雅FC)

上田綺世(法政大学)


○非東京五輪世代

●東京五輪世代のA代表経験者


久保建英ら一部の選手はキリンチャレンジ杯に参加してからブラジルに飛ぶスケジュールだったが、多くの東京五輪世代にとって、A代表として日の丸を付けるのは初めてだった。他大陸の選手権には代表チームの拘束力がないという事情により、欧州組を中心とした大半のA代表選手を招集できない事情はあったが、森保一監督はここをA代表と東京五輪世代が融合を図る好機と捉えていた。


コパ・アメリカは2分1敗


このリストで言えば久保建英、板倉滉、冨安健洋がA代表経験者で、さらに大迫敬介と中山雄太が同日にキリンチャレンジ杯のメンバーにも選ばれており、コパ・アメリカに先立ち、A代表を経験することとなった。もう一人、フランスでのトゥーロン国際トーナメントに参加する伊藤達哉も森保監督のA代表での初陣となった、2018年8月のキリンチャレンジ杯に招集されている。


伊藤はトゥーロン国際で日本が決勝に進む原動力の一人になったが、コパ・アメリカの開幕に間に合わせるため、ブラジルとの決勝を待たずしてブラジル入りしている。


コパ・アメリカに22.3歳という若いメンバーで臨んだ日本。初戦でチリに0-4と大敗したものの、強豪ウルグアイと2-2で引き分け。3戦目でエクアドルに勝利すれば、準々決勝進出という状況で1-1から多くのチャンスを決めきれず、2分1敗で大会を去ることとなった。


久保建英が「さらに試合ができるチャンスがあった中で、自分たち次第だったので悔しい」と話していた通り、決勝トーナメントを経験する・しないでは、大きな違いがあった。


若い選手たちは3試合での経験を噛み締めて帰路についており、その後の成長が期待された。本来なら1年後の今頃は東京五輪に向けた最後のアピールの時期になっていたが、新型コロナウイルスの影響で世界のリーグが中断となり、東京五輪も1年延期となった。


順調に歩む、久保建英


A代表の試合がいつ再開するか未定の状況だが、当時のメンバーの現在の状況を整理したい。


1年前はJリーグに所属していて、現在は欧州クラブに移籍しているのが久保建英、三好康児、前田大然、安部裕葵だ。久保に関しては2019年の6月14日にレアル・マドリーへの移籍が発表されており、本人もブラジル入りした初日練習後、開口一番に「すみません、大会に集中したいので、大会が終わるまでは大会のことだけしか答えないです。よろしくお願いします」と語っており、報道陣もそれを受け入れる形で取材していた。


コパ・アメリカ終了後、久保はレアル・マドリーのプレシーズンキャンプに参加し、ジネディーヌ・ジダン監督から高評価を得て、北米ツアーなどにも参加したが、その後、マジョルカへ期限付き移籍となった。


新天地で苦闘する様子も見られたが、堅守速攻をベースとするチームでもやるべきタスクを理解し、高度な技術とゴールに直結するプレーを適合させ、主力に定着している。さらなる成長環境を求めて再レンタルの噂も取りざたされるが、コパ・アメリカ参加メンバーの中でも、順調に歩んでいる一人だろう。


フルメンバーのA代表入りが近い三好康児


ウルグアイ戦で衝撃的な2ゴールをあげた三好康児も、ベルギーで着実な成長を見せている。大会後しばらくは横浜F・マリノスでプレーし、ジョーカー的な役回りを担っていたが、8月に契約を解除して、所属元の川崎フロンターレからロイヤル・アントワープへの期限付き移籍が発表された。


加入当初は途中出場が多かったが、少ない時間で存在感を示し、シーズン半ばに主力に定着。新型コロナウイルスの影響でベルギーリーグも中断されたが、3月にアントワープが買い取りオプションを行使して完全移籍となった。


コパ・アメリカ後はA代表に招集されていないが、それには東京五輪に向けた活動を優先する狙いもあったはずで、森保監督もA代表への”引き上げ”のタイミングを計っていたところでの中断になったと考えられる。引き続き、東京五輪に向けた活動との綱引きになることは間違いないが、フルメンバーのA代表に未招集の選手の中で、もっともA代表に近い一人であることは間違いない。


状況判断に磨きがかかる前田大然


コパ・アメリカでは何度も決定機を外すなど、ある種の挫折を味わった前田大然も、松本山雅から期限付きで移籍したポルトガルのマリティモで、確かな成長を見せている。爆発的なスピードは誰もが認めるところだが、その使い方に課題があり、ワンパターンになったり、試合の流れに飲まれてしまう傾向が見られた。しかし、前半戦だけで3得点を記録したマリティモでのプレーを観る限り、力強さとともに状況判断に磨きがかかっているようだ。


昨年12月のU-22ジャマイカ戦で右太ももを負傷し、リハビリを強いられたが、今年2月に復帰しており、ここからというところで中断期間となってしまった。彼が不参加だったAFC U-23選手権では、東京五輪世代にとって多くの課題が出たが、チーム随一のスピードスターである前田の不在が響いた部分もある。代表戦の再開後は、引き続き東京五輪が目標になるが、フルメンバーのA代表入りも十分に視野に入ってきそうだ。


大怪我を負った安部裕葵


安部裕葵はコパ・アメリカが終わって間もない7月12日、スペインの名門バルセロナと完全移籍で契約した。レアル・マドリー加入後、すぐにレンタルに出された久保と違い、バルセロナB(スペイン3部)でクラブのスタイルを学びながら、トップチームへのアピールを続けるという境遇だ。20歳(当時)という年齢的に、厳しい立場に置かれるという声も多かったが、鹿島アントラーズで培ったブレないメンタリティをベースにパフォーマンスを上げ、11月のコルネージャ戦で初ゴールをあげると、仲間から熱い祝福を受けるなど、新天地に溶け込んでいる様子が見られた。


その後、さらにゴールを重ね、リーグ戦とUEFAチャンピオンズリーグを並行する過密日程により、トップチーム合流の期待も高まっていたが、右足大腿二頭筋を断裂する大怪我を負い、手術を強いられた。


公式インスタグラムで「誰もが悲しむ日がある。いい方向を見て。なんとかなるさ」とコメントした安部だが、長い中断期間や東京五輪の1年延期をあえてポジティブに考えれば、彼のキャリアにとってプラスになる可能性もある。


圧倒的な評価を受ける冨安健洋


彼ら4人以上に欧州でインパクトを与えているのが冨安健洋だ。7月9日にベルギーのシント=トロイデンからセリエAのボローニャに加入すると、4バックと3バックが可変する特殊なシステムの右サイドバックとしてブレイクし、昨年8月にはクラブの月間M V Pに輝くなど、ディフェンダーにうるさいイタリアのファンやメディアを唸らせている。


市場価値もうなぎのぼりとなっており、ボローニャで地道に成長を続けるのか、さらなるステップアップを果たすのか、動向に目がはなせない。もっとも冨安の場合はA代表でも守備の要と呼べる存在なので、年齢に関係なく、良い意味で厳しく評価していくべきだろう。


コパ・アメリカで経験と自信を得た板倉滉は、オランダのフローニンゲンで奮闘を続けている。東京五輪を目指すチームでは間違いなく主力候補だが、A代表で並み居るライバルを抑えて主力に定着するには、クラブでのさらなるパフォーマンス向上が期待される。


中山雄太も同じオランダのズウォレで一時出番を失いながらも、今年に入り、中断まで8試合連続で出場するなど、気を吐いている。東京五輪チームではキャプテン候補として期待されるが、ボランチ、センターバック、サイドバックのどこでもこなせるだけに、どこがメインポジションになっていくのか、気になるところだ。


コパでの悔しさを成長の糧にしたい上田綺世


動き出しのセンスを見せながら、コパ・アメリカで決定機を逃し、厳しい批判を浴びた上田綺世(法政大学/当時)。その後、鹿島アントラーズに加入し、良質な外国人FWや経験豊富な伊藤翔などとハイレベルな競争を続けている。


具体的な数字や他者との比較を好まないところは元鹿島の安部裕葵に通じるところもあるが、どうしても小川航基(ジュビロ磐田)と比較されやすい。マイペースに地に足を着けてレベルアップして行けば、東京五輪の有力候補だろう。


昨年夏に東京ヴェルディから横浜F・マリノスに移籍した渡辺皓太は、貴重なバイプレーヤーとして、マリノスのリーグ制覇に貢献した。しかし、中盤における主力の一角を奪うことはできなかった。今シーズンもサブの位置付けにあるが、再開後の過密日程で嫌が応にも出番は増える。確かな観察眼と独特のセンスを融合したスペシャリティを発揮して、代表にもアピールしたい。


コパ・アメリカでセンセーショナルな活躍を見せた杉岡大暉は、鹿島アントラーズへ移籍。東京五輪チームの主力にも定着した。しかし、今シーズンは同時に永戸勝也という実力者が加入したこともあり、コンディショニングも含めて難しい立場にある。中断期間を生かして挽回できるか注目だが、鹿島で左サイドバックのポジションを取れないと、東京五輪もA代表も見えてこない。


ポジション争いが激しいGK


大分トリニータから、J2のアルビレックス新潟に移籍したGK小島亨介は、今季の開幕戦に先発し、安定したパフォーマンスで3-0の勝利を支えた。代表では、成長を続ける大迫敬介が依然として優位にあるが、試合に出続けることで成長することは間違いない。


ただし、GKは浦和レッズでセカンドGKのポジションを得ている17歳の鈴木彩艶や、ポルトガルの名門ベンフィカでトップチームに昇格した19歳の小久保玲央ブライアンといったU-20の才能がひしめいており、大迫や小島もうかうかできない。


所属クラブが変わっていない選手では、清水エスパルスの立田悠悟は中心的な存在になることを期待されており、ピーター・クラモフスキー新監督から、3人キャプテンの一人に指名された。


FC東京との開幕戦では、素晴らしいボール奪取から得点に繋がるプレーと、致命的なファウルという両極端なパフォーマンスが目に付いた。冨安をのぞけば、この年代のセンターバックはまだまだプレーに波がある。言い換えれば、そこを克服した選手が東京五輪、A代表のメンバーに生き残る可能性が高い。


激しい競争を勝ち残るのは誰だ?


岩田智輝は大分トリニータで、3バックの右ポジションを確立しているが、AFC U-23選手権のメンバーに選ばれなかったことで、昨年台頭してきた橋岡大樹(浦和レッズ)などに比べて、序列的に厳しい位置にいる。


東京五輪が1年延期されたことによりチャンスは出てきたが、コパ・アメリカのエクアドル戦後には海外志向を明かしており、大分で良いプレーをすることが代表入りにつながるとともに、クラブレベルでのステップアップにもなるというモチベーションを、再開後のプレーに現してくれるだろう。


松本泰志(サンフレッチェ広島)、原輝綺(サガン鳥栖)、菅大輝(北海道コンサドーレ札幌)といった選手たちも、コパ・アメリカの当時より確実に成長している。昨年のトゥーロン組やさらに下の年代からの突き上げも想定される中で、年間のベスト11に入ってくるような、再開後のパフォーマンスに注目したい。(文・河治良幸)


写真提供:getty images

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河治良幸

河治良幸

サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを担当。著書に『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)、『解説者のコトバを聴けば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)。

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