ターンオーバーで挑むエクアドル戦。 FIFA ワールドカップ に向けたシミュレーションは果たして?

COLUMN河治良幸の真・代表論 第120回

ターンオーバーで挑むエクアドル戦。 FIFA ワールドカップ に向けたシミュレーションは果たして?

By 河治良幸 ・ 2022.9.27

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27日、森保一監督率いる日本代表は、ドイツのデュッセルドルフでエクアドル代表と対戦する。W杯を考えると、ドイツとの初戦からコスタリカ戦という流れに似たところがあり、シミュレーションにはなるが、指揮官はひとつの決断をくだした。完全なターンオーバーである。


「残念ながら、全員の選手を使うことはできないと思います」と前置きしながら、アメリカ戦からスタメンを入れ替えると明言したのだ。


DF冨安健洋がチーム事情でロンドンに戻り、アメリカ戦で負傷したGK権田修一も所属クラブで治療するために帰国した。アメリカ戦でスピードを生かした守備から多くのカウンターをお膳立てしたFW前田大然も、右足を痛めている。前日練習では復帰したが、4人のFWがいる中で、無理させることはないだろう。


以上のことから、最低3人はスタメンの入れ替えが確実だったが、総入れ替えは意外なところではある。


完全ターンオーバーとなると、W杯のシミュレーションに結び付かないように思える。しかし森保監督は「W杯初戦のプレッシャーや、相手の力を踏まえ、普段以上に大きなエネルギーを使う時に、心身ともに中3日では回復できないような試合をしなければ、勝つことは難しい」と語る。


11人すべてではないにせよ、ドイツ戦から中3日で行われるコスタリカ戦に過半数の選手を入れ替え、スペインとの第3戦に、中1週間でドイツ戦のメンバーをぶつけるプランは有効だ。


W杯でそれを実行するためには、アメリカ戦で控えだった選手たちが、エクアドル戦で良いパフォーマンスをすることが条件になるだろう。


注目の1トップのスタメン


エクアドルはシンプルで正確な組み立てから、個人能力を生かすサイドアタックが強力だ。相手のストロングをケアする必要はあるが、アメリカ戦と同じ4-2-3-1で、コンパクトな守備から、ボールを奪ってショートカウンターにつなげる攻撃など、大筋のプランに変更はないだろう。


1トップのスタメンは古橋亨梧か、J1前半戦の得点王で、現在はベルギーで挑戦中の上田綺世が候補になる。古橋は「(前田と)タイプが似ているので、どういうふうにやれば良いか勉強になりました」と守備のタスクを意識すると同時に、エゴイスティックにゴールを狙って行くようだ。


上田も「FWとして求められる守備や、最低限のタスクは全うしないといけない」と語る。アメリカ戦ではベンチ外だったが、エクアドル戦に向かう流れがW杯に似ていることについて聞くと「W杯も連戦になると思いますし、緊張感や環境、疲労感もW杯になると全く違ってくる」答えた。


「僕はアピールする立場なので、出場時間が何分であれ、どんな環境であれ、自分のパフォーマンスを全うすることに集中して、出ていない時間もチームのためになることを選んで、率先してできたら」


1トップに重要な守備


FWにとってゴールは最大の仕事だが、前からの守備がひとつの評価基準になるのは確かだ。守備のスイッチに関して、中盤の要である遠藤航は、「基本FWが引っ張る形で、後ろの選手は、(前が)行かない方がいい時に、止める役割がメインになる」という話をしていた。そのことを上田に伝えると、次のコメントが返ってきた。


「例えば『行け』という声のリアクションで行ったとしても、守備はリアクションなので、リアクションにまたさらにリアクションになる。スイッチはスタートが肝心で、迫力を出して行くことで、相手に対する圧力になる」


スタートを切るのが少し遅れるだけでも、はまり方が違ってくることを上田は指摘する。


「僕らFWの感覚で、はめられると思うタイミングがあるので、僕らの判断で行って、それに付いてきてくれる、連動してくれる方が(プレッシャーが)上がると思う」


ただFWの習性として、自分が行ける時にガンガン行くことがマイナスになることもある。


上田は「なんでも行きがちで、途中から入ったらなおさらエンジンかけがちなので。そこは行きながらも耳は立てて、チームメートの状況や疲労を加味しながら、スイッチを入れるところを選べたら良いのかなと思います」と語る。


守備のタスクをこなしながら、巧妙な動き出しを発揮して、ラストパスを引き出すことができれば、エクアドルの屈強なディフェンス相手にも、ゴールネットを揺らすチャンスはある。


存在感を示したい南野


エクアドル戦のスタメンは古橋か上田になると見られるが、アメリカ戦で結果を残せなかった町野修斗に、もう一度チャンスがあるかどうか。4-2-3-1では、1トップの交代枠も古橋か上田になるだろうが、終盤に4-4-2に変更するプランであれば、町野にもチャンスが出てくるかもしれない。


二列目は右サイドに堂安律、トップ下に南野拓実、左が三笘薫という3人か。特に10番を背負う南野は、アメリカ戦で出番が無かっただけに、存在価値を示す必要がある。


上田はトップ下との連携について「僕は動き出しとか、そういうところで選手としての魅力を出せると思っている。それは同時にトップ下の選手を生かすことになるし、生かされることにもなる」と語る。


「動き出しやポストプレー、スペースメイクも含めて、トップ下の選手がプレーしやすいようにすることが、自分がプレーしやすいタイミングにもつながる」


ボランチの組み合わせは?


二列目には、相馬勇紀と旗手怜央というアメリカ戦で出番の無かったタレントもいる。ボランチはアメリカ戦で効いていた守田英正と遠藤が控えとなると、田中碧と柴崎岳という本職の組み合わせか。あるいはDF瀬古歩夢のボランチ起用も、板倉滉が怪我で休んでいる状況では考えられる。


田中と柴崎であれば、組み立てや攻撃参加が強みになるが、ブライトンで三笘の同僚であるカイセドなど、体の強い中盤を揃えるエクアドルに対して、前向きなボール奪取と効果的なファーストパスを出していけるかどうか。


センターバックは谷口彰悟と伊藤洋輝、瀬古歩夢のうち二人が先発になる見込みだ。冨安が離脱、キャプテンの吉田麻也もベンチスタートが見込まれる中で、どれだけ守備の安定をもたらすことができるか。


サイドバックは右が山根視来、左が長友佑都が有力。GKは川島永嗣と谷晃生の競争だが、メンバー選考前、最後の試合であるだけに、前後半で分ける可能性もある。


エクアドル戦ではチームと個人のせめぎ合いが、いつもより起きるだろう。チームの結果はもちろん、良い意味で森保監督を悩ます状況を作るパフォーマンスができるか、注目したい。(文・河治良幸)


写真提供:getty images

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河治良幸

河治良幸

サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを担当。著書に『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)、『解説者のコトバを聴けば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)。

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