レジェンド・長谷部誠も感銘を受けた、遠藤航のリーダーシップ

COLUMNミムラユウスケの本音カタール 第3回

レジェンド・長谷部誠も感銘を受けた、遠藤航のリーダーシップ

By ミムラユウスケ ・ 2022.9.28

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 日本代表とドイツ・ブンデスリーガのLEGENDが、代表とブンデスリーガと浦和レッズの後輩であるLEGEND”O”にエールを送ったところに感慨を覚えずにはいられない。


 今回のドイツ・デュッセル遠征で、日本代表として初めての試みがあった。すでに代表から身を引いているものの、日本代表の歴史上もっとも多くの試合でキャプテンマークを巻いてピッチに立った長谷部誠が代表合宿へと招かれたのだ。3日間限定ではあったが、長谷部は練習に同行するだけではなく、チームと同じホテルに宿泊。代表選手たちの前で日本代表としての誇りや思い、過去の代表での経験についてスピーチをした。ドイツのブンデスリーガの現役最高齢選手としても活躍する長谷部からは、若手も、ベテランも刺激を受けたようだった。


しっかり継承されていた代表選手のメンタリティ


 そんな長谷部が3日間の活動が終わるタイミングで、現在の代表選手たちのメンタリティーやパーソナリティーについて、こんな話をした。


「一昔前の日本代表の方が、言動でも、色々な部分でも表に出す人が多かったなというのは感じます。でも、だからと言って、今いる選手たちが情熱を持っていないわけではなくて。僕も今回、中に入ってみて初めて、『彼らはこんなに(多くのことを、深く)考えてやっているんだ』と感じました。監督に対してもどんどん話しますし、要求もするし。


そして、この前のW杯で(メンバーに)選ばれても(試合に)出られなかった選手。そういう選手のW杯にかける『想い』はすごく強くて、そういうのはヒシヒシと感じました」


あの大会で出番を得られなかったのはGKでは東口順昭と中村航輔。フィールドプレーヤーでは植田直通や大島僚太、そして遠藤航だった。その5人のなかで、今回の合宿に参加したのは遠藤だけだった。


 ロシアW杯のときの遠藤の振る舞いを知っている長谷部が、今回の活動で何かを感じたとしても不思議ではない。


 あの大会の最中にはこんなことがあった。原口元気が不慣れな右MFとして起用されていたため、当時得意としていた左サイドからドリブルをしかけるときの感覚の違いに戸惑い、それを修正しようとしていた。そのため、チームでの全体練習後に原口はドリブルの個別トレーニングに励んでいた。そこで一対一のドリブルのトレーニングの相手をして、ドリブルを止めようとする相手として汗を流していたのが遠藤だった。試合に出られない悔しさなど見せずに、それを続けた。そんな原口は、ベルギー戦で日本史上初めての決勝トーナメントでのゴールを記録したのだが、遠藤はそこに一役買ったわけだ。


悔しさを力に変えられる男


長谷部が、自身について言及したことを聞かされた遠藤本人は、こんな風に分析する。


「個人的にハセさんからそういう話をされたわけでもないし、特別に僕から当時のことを話したわけではなくて。ハセさんが何故そう言ってくれたのかわからないですいけど、ひょっとしたら、自分のプレーを見て、そう感じてくれたのかなと思います」


 確かに、先日のアメリカ戦などは、相手のボールをものすごい勢いで狩りにいった遠藤は、チームに勇気をもたらしていた。そうしたプレーは間違いなく、想いが乗り移ったものだろう。遠藤はこう話す。


「自分はあのときの悔しさを持っているので、それを表に出さないといけないというのはわかっています。逆に、そういうふうに(悔しさをパワーに変えられていると)周りから見られていないとしたら、そっちのほうが問題なのかなと思います(笑)」


常にプレーで引っ張ってきたLEGEND”O”


そんな遠藤は、湘南ベルマーレでは19歳のときにキャプテンを任され、リオ五輪に臨む代表チームでも腕章を腕にまいた。そしてドイツのシュツットガルトでは、あのブラジル代表の闘将ドゥンガなども務めたキャプテンを務めている。遠藤のリーダーシップは誰もが認めるところだ。


本稿冒頭のLEGEND”O”というのは、昨シーズンのブンデスリーガ最終節でシュツットガルトを奇跡の残留に導く決勝ゴールを決めた遠藤をたたえることで有名になったフレーズだ。遠藤の奮闘に感銘を受けたシュツットガルトファンの子どもたちが作りだしたものである。彼らは試合後に遠藤の家の前にいき、シュツットガルトのレジェンドとなったキャプテンに敬意を示すために「LEGEND」という単語に「ENDO」の名字をくっつけて「KEGEND”O”」と表現。それを遠藤家の前のアスファールトにチョークで書き記したものだった。


そんなレジェンドとなった遠藤だが、日本人にも馴染みが深い元ブラジル代表のキャプテン・ドゥンガのように、仲間を怒鳴りつけたり、ものすごい剣幕で指示を送ったりすることはない。そのかわり、一つひとつのプレーについて――ゴールを決めたとき、相手のシュートをブロックしたときなど――の後には、感情を爆発させる。いわば、プレーで引っ張るタイプなのだ。

 

キャプテンとは、なるべくしてなるもの


 その意味で、長谷部もまたドゥンガのような闘将とは違うタイプだ。彼は人をつなぐリーダーだった。選手と選手の意見を、チームとファンを、時にはチームとメディアをもつないだ。そんなタイプだからこそ、遠藤のプレーや姿勢に感銘を受けたのかもしれない。


あのジョゼ・モウリーニはリーダーシップとキャプテンの関係について、こんな名言を残している。


「キャプテンになったからリーダーになれるのではない。実際には見えないところにも優れたリーダーがたくさんいる」


 現在の日本代表のキャプテンは吉田麻也であり、遠藤は副キャプテンだ。ただ、今回のエクアドル戦のように、W杯でも試合展開によってキャプテンマークを巻くこともあるかもしれない。


 ただ、何よりも大切なことは、キャプデンマークを巻いても、巻かなくても、チームを引っ張るためにリーダーシップを発揮すること。強いチームには必ず、そういう選手がいる。


 だから、日本代表のキャプテンマークになる前から「チームを引っ張る気持ち」を抱き、それを公言し続けてきた長谷部が遠藤にインスピレーションを受けたと明かしたことには、きっと意味がある。キャプテンマークを巻かなくてもリーダーシップを発揮できる選手として、伝説のキャプテンに評価されるようになったのが遠藤なのだ。


写真提供:getty images

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ミムラユウスケ

ミムラユウスケ

2009年1月にドイツへ移住し、サッカーブンデスリーガを中心にヨーロッパで取材をしてきた。Bリーグの開幕した2016年9月より、拠点を再び日本に移す。現在は2か月に1回以上のペースでヨーロッパに出張しつつも、『Number』などに記事を執筆。W杯は2010年の南アフリカ大会から現地取材中。内田篤人との共著に「淡々黙々。」、近著に「千葉ジェッツふなばし 熱い熱いDNA」、「海賊をプロデュース」がある。

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