ナカイ(中井卓大)がレアル・マドリーのトップチームでプレーするという夢の実現にまた一歩近づいた。フベニール2年目に当たる今シーズン、彼はフベニールB(U-18)に所属。マドリーではフベニールBの有望株を積極的にフベニールA(U-19)にプロモーションする方針が取られており、開幕前から正念場の1年と位置付けられていた。
そんななか、ナカイはその恩恵にあずかる形で、ここまでフベニールAが主戦場とするディビシオン・デ・オノールで2試合に出場。ロス・ジェベネス戦(1月23日)では1ゴールを挙げた。一方、フベニールBでは5試合に出場。こちらでも好パフォーマンスを見せ、アスレティック・ビルバオのレジェンド、フレン・ゲレーロのジュニアで、お互い切磋琢磨しながらチームを牽引するフレン・ホン・ゲレーロとともに世代を代表する選手として位置付けられるまでに至っている。
進化の土台となっているのが課題と指摘され続けてきたフィジカルの向上だ。バルデベバス(マドリーの練習場)の責任者のひとりは、「皆がその変貌ぶりに驚いている。コロナによる中断を経て、筋肉量が数キロ増えた」と興奮気味にその事実を証言すると、さらに今後の成長への期待感を次のように語る。
「これまでは線の細さが否めなかったが、随分たくましさが増してきた。もともとテクニックは素晴らしいものを持っている。このままフィジカルを強化していけば、プロへの道も見えてくるはずだ」
ナカイの進化はピッチ内にとどまらない。子供の頃からの愛称である「ピピ」という呼び名がマドリーでも定着していたが、本人のたっての希望で名前のままの「ナカイ」と呼ばれるようになったのだ。すでに監督、コーチ、チームメイト、クラブスタッフからそう呼ばれており、試合を中継する「レアル・マドリーTV」でも呼称が変更されている。
単なる呼び方の違いに過ぎないかもしれないが、ナカイの子供から大人への成長を物語るエピソードの一つと言えるだろう。
いずれにせよ、今の時点でフベニールAの戦力として考えられていることは、来シーズンの残留(つまりはフベニールAへの昇格だ)が見込まれていることの何よりの証だ。そしてそうなれば来夏カスティージャのプレシーズンキャンプに帯同するのはほぼ確実だろう。
そしてさらにもう一つ上のステージも見えてくる。今夏はEUROと東京五輪の開催が重なり、トップチームのキャンプ序盤は、多くの選手を欠くことが予想される。そういったケースでは下のカテゴリーのチームから補充するのが通例で、この種の抜擢はカンテラーノにとって単なる穴埋め要員というよりも、重要なアピールの場となっている。
ナカイは昨年10月にすでにトップチームの練習を経験済み。今後の活躍次第では、その栄えあるメンバーのひとりに選ばれるチャンスも広がってきそうだ。
ただ、現在故障を抱えており、それをしっかり治すことが先決だ。。コロナの影響で各チームとも例年以上に欠場者が増えており、上のカテゴリーの監督が下のチームから欠員を補充する傾向も相対的に強まっている。ナカイの場合も、フベニールBでアピールを続けることが、すなわち飛び級でディビシオン・デ・オノールの試合に抜擢される機会の増加へと繋がっていくはずだ。
文●セルヒオ・サントス(アス紙レアル・マドリー番)
翻訳●下村正幸
記事提供:サッカーダイジェストWEB