“絶対的キャプテン”長谷部の穴を埋めるのは、酒井高徳のボランチ起用!?

COLUMN清水英斗の世界基準のジャパン目線 第38回

“絶対的キャプテン”長谷部の穴を埋めるのは、酒井高徳のボランチ起用!?

By 清水 英斗 ・ 2017.3.22

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「なぜ、あの選手が選ばれていないの!?」


直近のパフォーマンスを見れば、川崎フロンターレの小林悠、大島僚太、あるいは横浜F・マリノスの齋藤学らが、日本代表に選ばれないのは実に不可解だった。


しかし、チーム作りはベストイレブン選考ではない。状況や対戦相手など、一戦一戦を見すえたベストフィット型の選考になる。優れている順に1~23位の選手が日本代表になるわけではないのだ。


今聞くと笑ってしまうような話だが、1950年代のイングランドの代表チームは、委員会でポジションごとに投票を行い、得票数の多かった選手が代表に招集される選挙方式だった。“平等に”“公平に”代表チームが決められたと言える。戦術の方向性やスタイルといった発想はなく、1対1でサッカーのすべてが考えられた時代だ。


しかし、そこに圧倒的な組織力を持つ伝説のチーム、ハンガリー代表が現れる。このチームは監督1人にすべてを決める権限があった。選手の個性をどうやって組み合わせ、どうやってコンビネーションを生み出すのか。監督の独断によるメンバー選考という“偏り”が、ハンガリーの異次元の連係プレーを生み出し、個の発想を抜け出せないイングランドを散々に打ち破ったことがある。


その敗戦の当事者であるアルフ・ラムゼイは、1963年にイングランドの監督に就任。66年ワールドカップでは守備的サッカーで母国を初優勝に導くことになるが、そのラムゼイが就任の条件として出したのが、独断でメンバー選考を行う権利だったことは面白い。


監督という偏りが、サッカーに組織力を生み出す


その意味では、世界中で代表メンバーが発表されるたびに、「なぜ、あの選手が選ばれてないんだ!」と不満が出るのは自然なこと。そもそも偏っているのだから。


その言葉を聞くと、ああ、代表ウイークが来たなあと感じる。


こんなテンションで書いていると、「何をのんきなことを言っているんだ!」と怒られそうだ。理由はわかっている。我らが絶対的キャプテン長谷部誠が、膝の負傷で離脱するという緊急事態が起きているからだ。


「強行招集」という言われ方になったが、長谷部をUAEに呼んだこと自体は、別に問題ではないだろう。本人がセカンドオピニオンを希望していたし、その後は日本に帰国して内視鏡検査を受ける予定だったので、UAEなら途中で立ち寄る程度のことだ。


それよりも、この絶対的キャプテンがいなくなった穴を、どうやって埋めればいいのか。


ダブルボランチの人選はいかに?


ボランチは山口蛍が軸になるだろう。問題はその相棒だ。守備重視の試合が予想されるアウェーのUAE戦では、今野泰幸をセットで起用すれば、ボールを奪う力は、むしろ長谷部よりも高まる。


もし、今野に不安があれば、ハンブルガーSVでボランチ併用されている酒井高徳も面白い。彼は技巧的アタッカーをうまく料理する。ブンデスリーガ第20節のライプツィヒ戦では、テクニシャンのスウェーデン代表エミル・フォルスベリと対面したが、見事な1対1で封じた。相手の技巧的な変化、タイミングの緩急に対し、酒井高は粘り腰で実にうまく対応する。テクニシャン・キラーだ。


UAEといえば、10番のオマル・アブドゥルラフマンの技術が目を引く。酒井高がマッチアップすれば、うまくやれるのではないか。長友佑都がコンディション的に出場OKなら、酒井高のボランチはおすすめだ。ハリルホジッチがやるか、やらないかは別の話だが。


プレー以外にも重要な長谷部の役割


ただし、誰が出るにしても、不安があるのはディフェンスラインのカバーか。長谷部はDF間に空いた穴を、実にうまく埋めてくれる。同じレベルでやれる選手はいないかもしれない。しかし、長谷部が出られなくても、長谷部にない特長を持つ選手がたくさんいるので、プレー的には悪いことばかりではない。


難しいのはプレー以外だろう。長谷部が果たす仕事は多岐にわたる。


ハンブルガーでは酒井高不在の試合でキャプテンを務めたGKアドラーが、コイントスを忘れて自分のゴールに走って行くシーンが話題になった。慣れは怖い。


それはいいとしても、長谷部はキャプテンとして常に主審とコミュニケーションを取っている。これは地味に効く。


10月のイラクとの試合では、ピッチに寝転んで時間をつぶそうとする相手の行いについて、審判とコミュニケーションを取り、厳正に対処することを求めた。主審は厳しい態度を取ったし、アディショナルタイムをしっかり6分取り、それが山口の劇的ゴールを生み出している。


9月のホームのUAE戦などでも、相手が寝転ぶ様子があったが、味方に手を振って攻撃を続けさせ、チームを鼓舞した。すぐに相手から猛抗議を受けるのだが、毅然と応えている。


また、もはや誰もが知っているように、ゴール後の喜びの輪に加わらず、あえてセンターサークルに残って相手のキックオフを制限する。そんなことも長谷部はやっている。


長谷部が抜けるのと、他の誰かが抜けるのはワケが違う。UAE戦はいろいろな意味で見どころが増えてしまった。正直、若手がパッと活躍できるような試合とは思えない。ベテランを集めたハリルホジッチの招集リストは、なかなか良いのではないか。(文・清水英斗)


写真提供:getty images

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清水 英斗

清水 英斗

サッカーライター。1979年生まれ、岐阜県下呂市出身。プレイヤー目線でサッカーを分析する独自の観点が魅力。著書に『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』、『サッカー観戦力が高まる~試合が100倍面白くなる100の視点』、『サッカー守備DF&GK練習メニュー 100』など。

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