日本でもっともメッシに近い男。乾貴士の登場で一変したシリア戦

COLUMN清水英斗の世界基準のジャパン目線 第43回

日本でもっともメッシに近い男。乾貴士の登場で一変したシリア戦

By 清水 英斗 ・ 2017.6.9

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もっともメッシに近い男だと思う。今の日本では。


キリンチャレンジカップ2017のシリア戦、後半13分からは乾貴士のショータイムだった。仕掛けまくり、抜きまくり。シリアの選手に疲れが見えたとはいえ、退屈だった試合は乾の登場で一気に華やいだ。


いちばん印象に残った乾のテクニックはダブルタッチ? それとも相手の背中を取る切り返し?


筆者は後半43分に見られたような、トラップが印象的だった。サイドチェンジのロングパスを、つま先に当ててピタッと落とす。体全体をクッションのようにして、ボールが当たった瞬間に足を引いて勢いを吸収する……なんて大げさなことはしない。乾は足先だけでピタッと止める。事も無げにやってのける、省モーション。


守備側にとっては厄介だ。チャレンジするタイミングを失うだろう。相手のトラップ際をねらうのは守備のセオリーだが、乾の足が浮いていた時間はほんの少し。足先しか動かしていないので、体勢にまったく隙がない。バランスが保たれたまま、乾はすぐに仕掛けてくる。


このボールの止め方は、まるでメッシだ。大げさな動きをせず、足先だけでちょちょいと止める。トーキックやアウトサイドキックは、モーションが小さいので相手の意表を突くパスやシュートをしやすいが、それはつま先のトラップやアウトサイドトラップにも言える。省モーションなので、トラップ際に隙がない。


乾、メッシ、久保建英の共通点


つい最近も、こんなプレーをする日本人を見た気がした。久保建英だ。正確に止めて蹴るだけでなく、それを最短のフォームでやってのける。メッシも、乾も、久保も、普通の選手に比べてアクションを起こせるタイミングが多い。切り返したり、スピードアップしたり、パスをしたり、シュートしたり。タイミングが大股な選手は、彼らの小刻みなリズムについていけない。


スペースがない、スペースがないと言われる現代サッカーにおいて、彼らは実にモダンなプレーヤーだ。たかが省モーションのトラップだが、印象的だった。


これは未来向けの妄想だが、乾のようなサイドアタッカーと、久保のようなトップ下が一緒にプレーしたら、どうなるのだろうか。


読めないタイミングで出てくるワンツー、変幻自在のリズム。それは1人で仕掛けるより、もっと複雑で、守備にとっては対応しづらいものになるかもしれない。とはいえ、乾と久保建は13歳も歳が離れている(現在は乾が29歳、久保建は16歳)ので、実現するには、乾にかなり長く現役でいてもらわなければならないが。


乾と本田の相性の良さ


もっと直近の話をするなら、乾と本田圭佑の相性は良さそうだ。シリア戦でも何度も見られたが、本田は右サイド寄りのスペースで、左足でボールキープするのがうまい。すると、ボールを覆った姿勢のまま、逆サイドへロングパスを展開しやすくなる。これはバルセロナで司令塔化したメッシが、左足でキープし、ネイマールへサイドチェンジする流れと同じだ。利き足とポジションが、幸せな関係になっている。


イラク戦はどんな起用になるのだろうか。個人的には、この2人は後半まで取っておいて、前半が今ひとつなら、後半の頭から乾と本田で2枚替えをしてもいいと思う。もっとも、けが人続出で、そんなことを言ってはいられない台所事情かもしれないが。


散々なイメージを残し、1-1で引き分けたシリア戦だが、乾といい、本田といい、あるいは昌子源といい、今後の可能性をたくさん見出すことができる試合だった。とても楽しく観戦できたし、すばらしいプレーをしたシリアの最終予選の行方も、ちょっと気になってきた。(文・清水英斗)

写真提供:getty images

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清水 英斗

清水 英斗

サッカーライター。1979年生まれ、岐阜県下呂市出身。プレイヤー目線でサッカーを分析する独自の観点が魅力。著書に『日本サッカーを強くする観戦力』、『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』、『サッカー守備DF&GK練習メニュー 100』など。

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