3連敗後、低迷脱出の兆しが見えない浦和。チームの決断はいかに。

COLUMN清水英斗の世界基準のジャパン目線 第45回

3連敗後、低迷脱出の兆しが見えない浦和。チームの決断はいかに。

By 清水 英斗 ・ 2017.7.7

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浦和にとって、6月は鬼門になってしまった。昨シーズンも鹿島、G大阪、広島に3連敗した苦しい時期だったが、今シーズンも柏、磐田、鳥栖に3連敗。ACLで緊張感のある日程を5月まで続けるせいか、その反動が6月の国際Aマッチウイークを過ぎたころにドッと出る。


過密日程も、夏場もそうだが、本当に怖いのは当日よりもその後だ。重ねた疲労がなかなか抜けず、夏バテのような気だるい日々が続く。身体が重くて良いプレーができないので、スッキリせず、心まで滅入る。悪循環だ。


それでも昨シーズンの浦和は、3連敗のすぐ後に不調を抜け出したが、今シーズンは脱出の兆しがない。むしろ、谷底すら見えていない。7月1日の広島戦は辛うじて4-3で殴り勝ったが、5日の川崎戦は1-4で完敗。何より、選手たちの顔がまったく輝いておらず、その点が不安をあおる。


川崎戦ではシステムを[4-4-2]のダイヤモンド型に変更した。それは不調だから変えたというより、川崎に合わせた変化だった。川崎は[4-2-3-1]の両サイドハーフが中に入って来るため、1トップとトップ下を合わせた4人を、浦和の3バックが捕まえきれない。


特にダブルボランチの阿部勇樹と柏木陽介の裏で、相手のトップ下が浮きやすくなるため、過去の川崎戦でも、森谷賢太郎にフリーで飛び出される失点が目立った。今季も柏戦で、このエリアから中川寛斗に飛び出されている。何とか対策をしなければ、という意図はあったはず。そこでアンカーに明確な担当者として阿部を置き、川崎の攻撃陣4人を捕まえようとした。


守備が崩壊し、大量失点を喫する


そして後ろに対策を施しても、ボールは高い位置で奪いたい。5バックのままでは、中央に人を集める川崎に対して両ウイングバックがダブつくので、4バック+アンカーに変更。そうやって後ろをかみ合わせた上で、前線は2トップと、トップ下の柏木陽介、左右のインサイドハーフに入る関根貴大と駒井善成らが、前からプレスをかける。似たような4バックへの変更は、一昨年辺りから何度か見かけている。浦和はマンツーマンで守備をするので、相手の配置に人をかみ合わせ、シンプルに解決を図った。


初期配置からそれほど動かない、開始10分くらいは安定していたが…。


しかし、川崎の攻撃陣4人がポジションを越えて流動性を出し始めると、まったく捕まえられなくなった。マンツーマンは流動性に弱い。川崎としては、動けば動くほどマンツーマンの浦和を振り回すことができる。リズムが出てくると、浦和のプレスはすべて後追いになり、人に釣られて中盤にスペースが空いた。そんな中で、前半16分の阿部浩之→小林悠の先制ゴールが生まれている。


相手のポジションよりも、味方とのコンパクトな距離を意識してブロックを作ること。スペースを空けないように、中央を優先して守るのがゾーンディフェンスだ。しかし、ゾーンの習慣がない浦和は、川崎のようなチームが乗ってくると手がつけられない。


前線からのプレスも、タイミングが決まらず、スイッチが入らない。連動しても、とても遅く、決断力に欠けている。1歩ずつ寄せが遅れ、川崎には簡単にかいくぐられた。


個の質が上がった他チームに対抗できず


もっとも、この大敗の主要因は、システムやチーム戦術ではない。むしろ大きいのは、局面の部分だ。柏木のプレスは、ハリルジャパンに呼ばれていた昨年とは比較にならないほど浅いし、槙野智章もボールや自分のマークばかりを見て、中央で浮いた相手に絞ることがまったくできていない。危険なスペースはいつも放置され、ここ数試合は失点に絡み続けている。遠藤航も、個々の局面で抜かれる場面が目立つ。そして、そうやって突破されたとき、相手チームの決定力も高い。


ちょっと思い出したのは、2015年にミハイロ・ペトロビッチが言っていたことだ。


「この20年で日本のサッカーは戦術も、個々の能力も、大きく進歩した。日本人は勤勉で、学習するのが速い。日本人選手を明らかに上回るパフォーマンスをしていたのは、私が思うに新潟のレオ・シルバと、川崎のレナトだけ」


当時はその通りだったが、今年は外国人選手の質が上がっている。12節の清水戦では鄭大世やチアゴ・アウベスにスーパーゴールを食らい、磐田にはアダイウトン、鳥栖には登録抹消となったがイバルボがいて、特にカウンター場面ではフィジカルとスピードを見せつけられた。また、日本人でも開幕戦でやられた齋藤学、川崎戦の小林や阿部浩などに、質の高いゴールを食らっている。


各チームで個々のレベルが上がり、逆に選手の顔ぶれに変化がない浦和は、例年通りのマンツーマン。そして、やられる。


リフレッシュが必要な時期にも見えるが…


さらに今季の浦和の上積みは、攻撃面が意識されていたと思う。右サイドの森脇良太が上がるだけでなく、左サイドからも槙野智章が出て行くなど、テコ入れしている。浦和は右サイドに人数をかける攻撃がパターン化されていたが、そればかりでは相手に読まれるので、変化をつけた。しかし、槙野が出て行けば、ボールの奪われ方によっては最後尾が遠藤1人になる。川崎戦の2失点目も、サイドに開きすぎた槙野が絞り切れず、遠藤との間を、中村憲剛のスルーパスで通された。


各チームのカウンター破壊力が強まった今シーズンにおいて、浦和はますますカウンターに弱くなっている。


失点がかさむと、自信が無くなり、ああしなければ、こうしなければと考えるうちに、判断ミスからイージーな失点が増える。イージーな失点は、責任をめぐって仲を引き裂くものだ。雰囲気が悪くなれば、献身的な守備も消滅する。浦和は完全に悪循環に入ったように見える。


チームにはリフレッシュが必要。そのために、解任は手っ取り早い方法だ。しかし、浦和はペトロビッチの戦術に特化した選手ばかりなので、果たしてそれでうまくいくだろうか。確かに守備は崩壊しているが、得点はリーグトップの41を稼いでいる。その攻撃力まで無くなったら厳しい。さらに悪くなるかもしれない。


ただ、いずれにせよ、限界は来る。最近は外国人選手にとって、アジアの中でJリーグを選択する魅力が見直されている。それはDAZNマネーもそうだし、中国が外国人選手の移籍にブレーキをかけ始めたこともそうだ。有力な外国人選手が増えれば、日本人選手のレベルも上がる。そんな中で中盤を空洞化させるペトロビッチの戦術は、浦和がものすごいセンターバックを補強しない限り、行き詰まるのではないか。


難しいところだが、今後の浦和の決断を見守りたい。(文・清水英斗)


写真提供:getty images

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清水 英斗

清水 英斗

サッカーライター。1979年生まれ、岐阜県下呂市出身。プレイヤー目線でサッカーを分析する独自の観点が魅力。著書に『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』、『サッカー観戦力が高まる~試合が100倍面白くなる100の視点』、『サッカー守備DF&GK練習メニュー 100』など。

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