キリンチャレンジカップはチームの実戦経験よりも個の発掘。ハリルジャパンの方針は吉と出るか?

COLUMN清水英斗の世界基準のジャパン目線 第52回

キリンチャレンジカップはチームの実戦経験よりも個の発掘。ハリルジャパンの方針は吉と出るか?

By 清水 英斗 ・ 2017.10.6

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ハリルジャパンがワールドカップ出場を決めたのは過去のこと。すでにロシアW杯に向けた強化シーズンが始まっている。この1年に満たない期間に、何を積み上げられるか。


日本代表は10月6日にニュージーランド、10日にハイチとの親善試合でスタートを切るが、正直に言って、マッチメークに疑問は残る。ハイチはすでに予選敗退し、ワールドカップの出場経験がほとんどないチーム。ニュージーランドは南米とのプレーオフに勝てばワールドカップに出場するが、それでもFIFAランクが低い国同士、ロシアW杯で対戦する可能性は低い。本大会をイメージしづらい相手だ。


もちろん、この10月は欧州、南米共にW杯予選の日程が残っており、親善試合を組みづらいのは間違いない。


しかし、そんな中でも韓国はロシアとモロッコ、イランはトーゴとロシアと親善試合を組み、W杯開催国でプレーすること、アフリカ勢との対戦経験を積むことに費やしている。選択肢が限られる中でも、彼らはアウェーや中立国に出かけ、より本大会をイメージできる実戦的なマッチメークを行った。


個をベースとする、ハリルホジッチのチーム作り


翻って日本はどうか。チームの実戦経験よりも、あえて国内で開催し、対戦相手にこだわらず、新戦力を発掘する場に使うと。それは個をベースとするハリルホジッチのチーム作りにおいて、悪くないリスタートと言えるかもしれない。


しかし、柴崎岳、大島僚太、齋藤学といった候補者がケガをしたこともあり、招集メンバーは思ったほどの新鮮味がないのも正直なところ。また、日本との長距離移動も、欧州組にとってはクラブでの出場機会を失うリスク。それは対戦相手のハイチにとっても同じことで、FWバジルが招集を断るなど、すでに弊害が起きている。


おまけにせっかく国内でファンに向けて開催できる残り少ない機会なのに、ハイチ戦のチケットは完売しておらず、まだ残っている。いろいろな意味でこのマッチメークは、出だしからかみ合わない印象が拭えない。果たして、この2試合に収穫はあるのか。新しい選手を中心に、秋の実りを見せてほしいところだが。


期待しているのは、武藤嘉紀


今のところ1トップには大迫勇也が君臨しているが、裏抜けタイプの武藤が入ると、面白いオプションになる。大迫とは違い、ポストプレーはうまくないが、DFと入れ替わって背後をねらう飛び出しのタイミング、コース取り共に絶妙。スピードがあり、クロスに対してゴール前に飛び込む動きも良い。ドイツに行ってから、よりシンプルにゴールをねらう動きが洗練された。欧州に多く見られる大柄なDFは、前には強いが、裏に弱い特徴があるため、武藤タイプがフィットすると面白い。


武藤を生かすには、トップ下も重要だ。昨シーズン途中までマインツでプレーしていたユヌス・マリのように、質の高いパッサーがいれば、武藤の飛び出しが輝く。柴崎岳をケガで欠くのは残念だが、香川真司らが、どのように武藤を生かせるか。あるいは大迫がトップ下でも良いかもしれない。その組み合わせに注目したい。


疑問符が付くマッチメークではあるが、10月の強化シーズンに挑むハリルホジッチの態度には好感が持てる。


前指揮官のザッケローニの場合は、親善試合を「テストマッチ」と繰り返すことが多く、あまり結果に対するプレッシャーを与えていなかった。しかし、ハリルホジッチは違う。内容も大事だが、まずは勝利を求める。勝ち癖を求める。


ワールドカップについても、美しい大会であるだけでなく、準備ができていなければ、後悔、屈辱、フラストレーションを残す、選手にとって危険な大会であることも警告した。これも素晴らしい。ただメンバーに入るだけでなく、本大会をいかに戦うか。そのイメージを、選手が持ちやすくなったのではないか。


戦術、選手起用、キャラクター、本大会の経験。いろいろな意味で4年前とは正反対の指揮官が率いている。ワールドカップを知る男が、今後どんな準備をして行くのか。楽しみだ。(文・清水英斗)


写真提供:getty images

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清水 英斗

清水 英斗

サッカーライター。1979年生まれ、岐阜県下呂市出身。プレイヤー目線でサッカーを分析する独自の観点が魅力。著書に『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』、『サッカー観戦力が高まる~試合が100倍面白くなる100の視点』、『サッカー守備DF&GK練習メニュー 100』など。

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