ブラジル戦で見えた“速さ”と“早さ”の違い。ハリルジャパンの向上すべき点とは?

COLUMN清水英斗の世界基準のジャパン目線 第54回

ブラジル戦で見えた“速さ”と“早さ”の違い。ハリルジャパンの向上すべき点とは?

By 清水 英斗 ・ 2017.11.13

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のけぞった。重箱の隅をつつくような話だが、どうしてもアレが気になって仕方がない。


0-1で迎えたブラジル戦、前半14分。高い位置でマルセロを追い詰め、苦し紛れのパスを山口蛍がインターセプトした場面。ダイレクトに縦へ打ち返し、ショートカウンターに入った。ぽん、ぽんとつなぎ、裏へ飛び出した久保裕也へ、井手口陽介から右足のアウトサイドで浮き球のパスが出る。


しかし、これが少しズレた。受け手のスピードを殺す格好になり、久保もトラップミス。その瞬間、井手口は足を止め、のけぞった。


あ~クソッ、しまったっ。そんなことを思ったのだろうか。


失敗することは誰でもあるし、ブラジルの選手もミスを犯す。しかし、井手口が“のけぞった”こと。あの試合の中では、とても異様な姿に見えた。


ボールは生きているのに。インプレー中なのに。のけぞっている場合じゃないのに。


その後、マルセロはフリーでボールを拾った。もし、井手口がすばやく状況判断していれば、もう一度カウンタープレスに行くことができたはず。あるいは行かない判断をするにしても、いち早くポジションを取り直す必要があるんじゃないか。


そんな些細な行為が、ノドに引っかかった小骨のように気になって仕方がないのは、ブラジルとの間に、絶望的な“早さ”の差を感じたからだ。


判断スピードと物理的なスピードが速いブラジル


デュエルを強調してきたハリルジャパンだけあって、球際で劣勢に立たされた印象はなかった。井手口も山口蛍も、よくボールを奪っていたし、酒井宏樹は1対1でネイマールを抑えた。吉田麻也もネイマールに走り負けしなかった。“速さ”で負けた印象はない。


ところが、“早さ”の差はかなり感じた。日本はどうしてもボールを持ってから考え、周りも動き始めるが、ブラジルは常にフライングしている。ロングカウンターに出るときも、ちょっと動いてパスコースを作るときも、ボールが転がっている間にサッと行く。スッと顔を出す。その判断が早い。


それに対し、日本の予測やプレスバックは間に合わない。“早さ”の差が大きく、どうしても置いて行かれる。『縦の速さ』を目指して走り始めたハリルジャパンだが、それを判断する早さで、攻守ともに完敗だ。


この判断の早さに、速さを加えてプレーしても、ブレない技術はさすがブラジルと言うしかない。このスピード感に合わせると、日本はトラップミスを繰り返してしまう。


習慣の積み重ねが、大一番で露呈


どうしてこんなに差が付くのか。そう考えたとき、やっぱり“のけぞり”が気になるのだ。


それ自体は大したことじゃない。のけぞったことが試合結果を左右するとか、そんな大げさな話じゃない。たかが1秒程度のロスだ。しかし、そういう遅い習慣で普段からプレーしていること。ぶつ切りのプレーで間に合ってしまうこと。その日々が積み重なると、絶望的な差になるんじゃないか。


結局、この速さと早さの中で普段からプレーしていないことが、大きな差を生み出してしまう。のけぞることのロス。そこに違和感を覚えない試合を繰り返しても、ワールドクラスには永遠にたどり着けない気がする。


ブラジルさん、勉強になりました。(文・清水英斗)


写真提供:getty images

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清水 英斗

清水 英斗

サッカーライター。1979年生まれ、岐阜県下呂市出身。プレイヤー目線でサッカーを分析する独自の観点が魅力。著書に『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』、『サッカー観戦力が高まる~試合が100倍面白くなる100の視点』、『サッカー守備DF&GK練習メニュー 100』など。

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