ハリルジャパンの参考になる!? モウリーニョが見せた、セネガル代表のキーマン封じ

COLUMN清水英斗の世界基準のジャパン目線 第60回

ハリルジャパンの参考になる!? モウリーニョが見せた、セネガル代表のキーマン封じ

By 清水 英斗 ・ 2018.3.13

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プレミアリーグ第30節は、マンチェスター・ユナイテッドが好調リヴァプールを2-1で下した。首位マンチェスター・シティに水を開けられ、優勝は絶望的な状況だが、2位&チャンピオンズリーグ出場権争いにおいては、貴重な勝利を挙げている。

日本代表の視点でも、ユナイテッドの戦い方は参考になった。その一つは、相手の看板となる両ウイングへの対処だ。ロシアワールドカップで日本が対戦するセネガル代表のFWサディオ・マネと、得点ランキング首位のエジプト代表FWモハメド・サラー。リヴァプールが誇る看板ウイングを、ユナイテッドはうまく封じた。


その戦術が興味深い。立役者となったのは、両サイドバックのアシュリー・ヤングと、アントニオ・バレンシアだ。マンツーマンで看板ウイングを密着マークし、まったく自由を与えない。ヤングもバレンシアも、元々はウイングだけに、スピードには自信がある。サラーはそのマークをかなり嫌がっていたし、マネのほうはサイドを離れて中盤へ下がったり、真ん中へ行ったりと、ボールに触ろうとする動きが目立った。

しかし、マネが怖いのは、やはりサイドに張っているときだ。たとえば2-0とリードされた後半21分、マネが1人スルーパスで左サイドを突破し、クロスからオウンゴールを誘発した場面のように、サイドで単純な1対1を作られると、この選手は止めようがない。


一方で密着マークを嫌い、サイドを離れてくれるのなら、守備にとっては都合が良いし、ユナイテッドはそう仕向ける守備をやっていた。


セネガルの両ウイングをどう抑える?

そして、両サイドバックのヤングとバレンシアが、人に付いて深追い気味になる以上、空けたスペースをカバーする意識も必須だ。ダブルボランチのネマニャ・マティッチと、スコット・マクトミネイは、中央突破に対してバイタルエリアを閉じつつ、サイドのカバーに目を光らせていた。また、両ウイングのフアン・マタとマーカス・ラッシュフォードも、相手サイドバックの上がりについて行き、空いたスペースに蓋をした。

すばらしい守備だった。リヴァプールは14本のシュートを打ったが、大半はペナルティーエリア外で、決定機と呼べるチャンスはほとんどなかった。やはりマネとサラーの看板ウイングを封じられたことが大きい。

リヴァプールと同じく、セネガル代表も両ウイングを看板とするチームだ。マネと、もう一人はモナコに所属するFWケイタ・バルデ。バルセロナの下部組織で育ち、16歳でラツィオのユースへ移り、トップチームデビューしたウイングは、昨シーズンにセリエAで16得点を挙げ、モナコに移籍している。この2人をいかに抑えるか。

バレンシアを酒井宏樹、ヤングを長友佑都に見立てると、ロシアワールドカップのセネガル戦のイメージが沸く。密着マークで看板ウイングを潰し、周囲がカバーする。ハリルホジッチの日本代表も、モウリーニョのユナイテッドも、守備のベースはマンツーマンだ。親和性のあるユナイテッドの戦い方は、日本代表にとっても参考になるのではないか。


セネガルの4-3-3対策

もう一つ、ユナイテッドの攻撃面も参考になった。

リヴァプールのユルゲン・クロップ監督が、「たくさんのロングボールを蹴られた」と振り返ったように、ユナイテッドは明らかにそれをねらっていた。モウリーニョは試合後、こんなコメントを残している。

「リヴァプールにはクオリティと弱点の両方がある。それは私たちも同じだ。だが、私の監督としての長所の一つは、自分が指揮するチームの弱点を、常に熟知していることだ。時々はそれを隠そうとし、時々は他の部分で補うようにしなければならない」

弱点は露わだった。ユナイテッドがやったことは単純だ。相手センターバックのロヴレンに向けてロングボールを蹴り込み、FWロメル・ルカクがフィジカルで競り勝つ。このとき、リヴァプールはロヴレンが空けたスペースを埋めるのが遅い。中央への収束が遅く、いわゆる『ギャップ』を放置する癖がある。そこをねらって、両サイドからラッシュフォードとマタが飛び出し、ルカクからラストパスが出る。2得点はどちらも、同じ場所をねらったロングボールから生まれた形だった。

リヴァプールを相手に、下手にショートパスをつなぐと、相手が得意とするプレッシングに飲み込まれ、カウンターを食らうリスクが大きい。そこで中盤を越えるロングボールで勝負し、DFのカバーの遅さを突いて仕掛ける。ユナイテッドのねらいは、実にきれいにはまった。

これも日本にとっても参考になる戦い方だ。リヴァプールとセネガルには、強力な両サイドアタッカーだけでなく、ボール奪取に長けたMF3人をそなえた[4-3-3]という共通点もある。日本も同じように、相手の激しい中盤を避け、ロングボールで勝負できればいいのだが。


セネガル戦のキーマンは…

ハリルホジッチはセレッソ大阪の杉本健勇に、屈強な身体作りやポストプレーなど、『ルカクワーク』を期待しているように見える。大迫勇也もボールは収まるが、ダイレクトに相手の裏をロングボールで突くとなれば、最前線で相手DFと競り合い、スピードもある杉本のほうが面白い素材だ。

さすがに相手を抑え込んでターンするような、本家のルカクワークまでは求められないが、ヘッドフリックで後ろへ流したり、相手のクリアを許さずに小さなこぼれ球にすることができれば面白い。おそらく、ハリルホジッチは3戦共にメンバーをがらりと変え、特徴を使い分けることを考えるだろう。

対戦相手が決まると、各ポジションに求められる役割が何となく見えてくるし、普段のリーグ戦などからも、代表候補選手の「ココを見よう」というポイントも定まってくる。たとえば、杉本の『ルカクワーク』を期待するなら、フィジカルのぶつかり合いが激しいACLに注目するのもいいかもしれない。(文・清水英斗)

写真提供:getty images

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清水 英斗

清水 英斗

サッカーライター。1979年生まれ、岐阜県下呂市出身。プレイヤー目線でサッカーを分析する独自の観点が魅力。著書に『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』、『サッカー観戦力が高まる~試合が100倍面白くなる100の視点』、『サッカー守備DF&GK練習メニュー 100』など。

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