CLファイナリストのリヴァプールに見る、日本代表の理想形。西野ジャパンは強豪相手にどう戦う?

COLUMN清水英斗の世界基準のジャパン目線 第64回

CLファイナリストのリヴァプールに見る、日本代表の理想形。西野ジャパンは強豪相手にどう戦う?

By 清水 英斗 ・ 2018.5.11

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レアル・マドリードとのチャンピオンズリーグ決勝に駒を進めたリヴァプール。個人的に、このチームにはハリルジャパンの理想形を重ねて見ていた。


基本システムはバランス良く配置した[4-3-3]。バリエーションはほぼない。コンパクトなプレッシングを武器とし、ハイプレスとロープレス、あるいはカウンタープレスと自陣撤退を、スコアや時間帯によって使い分ける。


ゲームプランは“前高後低”が主体で、後半のゲームコントロールはやや甘い。デュエルで激しく戦うチームスピリットがあり、奪ったボールは即時カウンターへ。全般的に、つなぐ相手は美味しい獲物、引いた相手はちょっと苦手。リヴァプールとハリルジャパンには、いろいろな共通点を感じていた。


ただし当たり前だが、レベル的には次元の違うチーム。リヴァプールから相当の引き算をしなければ、ハリルジャパンにならない。


まずはFWの引き算。サディオ・マネ、ロベルト・フィルミーノ、モハメド・サラーの3トップは世界最高クラスだ。自陣深くに押し込まれた場面でも、フィルミーノとサラーを残した4-4-2に変形し、奪ったらロングボールを蹴って前線に起点を作る。どんな状況でもカウンターに行くことが可能だ。この点はロングカウンターがうまくいかず、押し込まれてサンドバッグになりやすいハリルジャパン、というか歴代の日本代表には無いクオリティだ。


重要な中盤の守備


FWだけでなく、中盤の守備も、引き算をしなければならない。


ハリルジャパンはウクライナ戦や、アウェーのオーストラリア戦でも見られたように、ハーフスペースを突かれる弱点がある。サイドバックが大外へアプローチに行き、センターバックが中央でFWに付いたとき、その間のレーンがすっぽりと空く。ボランチのカバーが遅く、ウイングが最終ラインまで戻れる状況でなければ、どうにもならない。この状況でサイドが1対1で突破されたり、あるいは後方からサイドバック等に飛び出されたりすると、簡単にペナルティエリアへ侵入されてしまう。


リヴァプールはこのハーフスペースを、3人のMFが状況に応じて最終ラインの間へ下がり、流動的に埋めている。前から人を捕まえる意識と、下がってスペースを埋める意識のバランスが良い。


しかし、ハリルジャパンはこのようなカバーを中盤が実践できず、試合中に長谷部誠がコーチングして守備を修正するなどの対応を取ってきた。だが、サッカーというリアルタイムスポーツの中で、静的な修正には限界がある。特にワールドカップのスピード感になれば、尚更だろう。ウクライナ戦やオーストラリア戦は、それが表面化したものだ。


中盤、前線の不足をどう補うか


ハリルジャパンの守備陣はベストメンバー前提ならば、結構レベルは高い。しかし、中盤とFWの不足がどうしても目につく。ハリルホジッチも、解任を受けて来日した記者会見で次のように語っていた。


「(親善試合について)W杯に向けての調整だと思っていました。特に中盤とFWについて、解決策を探しました。W杯が要求してくるもの、W杯でしっかりとパフォーマンスを出せる者を求めていた。だから、今まで以上に選手が幅広い力を持ってプレーできるようにしました」


ロングカウンターに行けないFWの質不足を、どう解決するか。ロープレス時にスペースを封鎖しきれないMFのカバー不足を、どう解決するか。引いた状況における攻守に課題が残り、ゲームプラン的には、後半に表面化することが多かった。


その欠陥を対戦相手が突いてくるなら、別の要素で足し算をするしかない。できないことがわかれば、修正は可能だ。それでこそ親善試合の価値がある。ハリルホジッチの本番プランでは、どのような解決策が見出されたのだろうか。


5バックも考えていた?


ミドルゾーンの守備では、5バックがオプションに加わったのではないかと推測する。リヴァプールのように流動的にカバーが出来ないのなら、明確に人を置いて塞ぐのが解決策になる。マンツーマン傾向のハリルジャパンなら、フィットしやすかったはず。ここ1~2年のプレミアリーグやブンデスリーガでも、中堅以下のクラブがこのような方針で5バックを採用する試合をよく見かけた。単純に1人増やすことで、両幅を突く攻撃にも、ハーフスペースを突く攻撃にも対応できる。


一方、ロングカウンターなど攻撃面の不足は、どう足し算をするか。すでにFWでは中島翔哉のジョーカー起用を解決策として発見しているが、それだけでは心許ない。


中盤の解決策探しに力を入れていたハリル


リヴァプールに話を戻すと、彼らの攻撃が驚異的だったのは、3トップだけが要因ではない。インサイドハーフ、特にオックスレイド・チェンバレンが重要な役割を果たしてきた。FWの一列後ろから、運ぶドリブルによってバイタルエリアへ侵入したり、あるいはハーフスペースへ飛び出したりと、オンザボール、オフザボールを問わず、3トップに対する相手のマークをかく乱させる。さらに、そこでマークが剥がれなければ、自らスペースに切り込んでミドルシュートで決める能力もあった。チャンピオンズリーグ準決勝のローマ戦で、今季絶望の怪我を負ったのは残念だが、それほどインサイドハーフを務めたチェンバレンのプレーは効いていた。


ハリルホジッチも、中盤の解決策探しに力を入れていた。井手口陽介に期待をかけつつ、長澤和輝、森岡亮太、大島僚太、柴崎岳と、欧州遠征4試合では攻撃的な選手ばかりをテストした。


個人的には、彼らに加えて原口元気もオプションになり得たと考える。過去記事でも書いたが、私はハリルホジッチによる原口のボランチ起用を高く評価していた。ウイングの主力になってからは、この起用が鳴りを潜めたが、当時よちよち歩きのボランチ原口を見ながら思い描いた将来像と、今季リヴァプールでチェンバレンが見せてきたプレーは、私の中ではぴたりと重なる。もちろん、質の差はあるけれど。


西野ジャパンはどう戦う?


ハリルホジッチの本番プランは、どのような完成を見る予定だったのか。チャンピオンズリーグ・ファイナリストの完成度から引き算される部分があるのは当然だが、そこを対戦相手に応じて、どう足し算するつもりだったのだろうか。


その本番プランは、西野ジャパンにとっても課題と言える。もはやゼロからチームを作ることは現実的ではないので、ハリルホジッチのやってきたことが基盤になる。現状の欠落部の見極めと、試合毎の足し算を、どう組み立てるつもりなのか。


もはや何をやるのか、身内からも相手からも見えにくい西野監督。より嫌がっているのは相手チームかもしれない。『敵を欺くにはまず味方から』とは、よく言ったものだ。(文・清水英斗)


写真提供:getty images

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清水 英斗

清水 英斗

サッカーライター。1979年生まれ、岐阜県下呂市出身。プレイヤー目線でサッカーを分析する独自の観点が魅力。著書に『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』、『サッカー観戦力が高まる~試合が100倍面白くなる100の視点』、『サッカー守備DF&GK練習メニュー 100』など。

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