ガーナ戦で見えた、西野ジャパンの戦い方。コロンビア戦までに戦術を整備できるか?

COLUMN清水英斗の世界基準のジャパン目線 第66回

ガーナ戦で見えた、西野ジャパンの戦い方。コロンビア戦までに戦術を整備できるか?

By 清水 英斗 ・ 2018.6.4

シェアする

ガーナ戦で日本代表が採用した【3-4-2-1】は、森保一時代のサンフレッチェ広島を思い起こさせる。もっとも、選手が異なり、ビルドアップや守備の完成度も差があるので、うす紫くらい。


ウイングハーフに長友佑都と原口元気を置き、スピード豊かな縦のアタッカーがスペースへ飛び出す。そして、シンプルにクロス。右の候補は酒井宏樹、酒井高徳もいるが、あえて原口をコンバートしたのは、ボールを持って1対1で仕掛けるサイドアタッカーを起用するためだろう。


広島の場合も柏好文やミキッチが、サイドから推進力を与えるプレーが多かった。ウイングハーフが独力でボールを運んだり、裏を取ったり、1対1で仕掛けることができれば、むやみにサイドで人数をかけなくて済む。


一方、真ん中はどうか。1トップ2シャドーは大迫勇也、宇佐美貴史、本田圭佑だった。3人とも足元で受けるタイプで、ほとんどスペースへ飛び出さない。前半の途中からガーナの重心が下がり、日本がボールを持つ展開になると、宇佐美は左サイドいっぱいに開き、長友と数的優位を作って突破を図ろうとした。しかし、ハーフタイムに退いた宇佐美は、西野監督からサイドに開かず真ん中に留まってプレーするようにと、指示を受けたそうだ。


理想的ではない、本田のシャドー起用


その宇佐美以上にフリーダムが目立ったのは、本田圭佑だった。右サイドでガーナのウイングが原口をマークして下がり、人につく守備意識が強かったので、そのねらいを外して混乱を引き起こそうとしたのはわかる。だが、逆サイドのタッチライン際まで出て行くのは一線を越えているのか、越えていないのか。後半の本田は、前半のフリーダムさが姿を消したので、やはり宇佐美同様、ポジションを逸脱しすぎないように指示があったのだろう。


真ん中で人数をかけてボールを回し、サイドで裏を取る。ザックジャパンでも裏へ飛び出す選手は、ほぼ両サイドバックだったので、4年前と似た面もある。ただし、[3-4-2-1]の場合は後ろに3バックが残るため、カウンターを食らうリスクは軽減される。


カギを握るのは、2シャドーの選択か。本田は決して理想的ではない。アジリティーが無く、直線的なプレーヤーなので、狭いスペースではドリブルが引っかかりがち。2シャドーには不向きな面もある。しかし、サイドを突破した後、クロスに対してゴール前に入ってくる場面では迫力があり、2015年に広島でプレーしたドウグラスを彷彿とさせる。サイド攻め+真ん中保持を、徹底する上では、悪いチョイスではない。


ボランチは柴崎&大島がベターか


この場合、ボールの奪われ方をコントロールできるのがメリットだ。サイドを突破できなかったり、あるいはゴール前を割り切って固められたりすると、攻撃が手詰まりになるが、そこでむやみにリスクを負わず、我慢すれば試合をコントロールできる。


ただし、状況認知に難のある山口蛍のところでパスミスが増えると、かえって危険が増す。ポゼッションによる試合コントロールを重視するなら、柴崎岳と大島僚太の組み合わせがベターか。後ろが3バックなら、ナシではない。山口はボール奪取に優れた選手だが、ガーナ戦の様子では、相手のボール奪取力のほうが高まってしまう。


フィニッシュパターンも、改善が必要だ。単純なクロスばかりのガーナ戦でも、日本代表にレヴァンドフスキがいれば、それなりに形になった気もするが、いないのだから仕方がない。アーリークロス、シャドーのハーフスペースへの飛び出しなど、前線のパターンを突き詰め、これも徹底する必要がある。


攻撃以上に守備の改善点が多い


ガーナ戦を基本とした戦術で、コロンビアに対してはそれなりに機能するかもしれない。正直、ハイプレスで刈り取るハリルホジッチの戦術を見たかったのが本音だが、西野ジャパンのやり方でも一定の機能性は見込める。ただし、相手は一瞬の隙を突くのがうまいので、ポゼッションでコントロールするなら、焦れずに徹底しなければならない。フリーダムはアウト。守備をイメージしながら、パスを回す必要がある。


一方、この戦い方でセネガル戦に向かえば、まさしく正面衝突だ。世界屈指のボールハンター集団と、日本のパスを回したい集団が激突する。かなり危険が大きい。もはやロマンだ。2シャドーには乾貴士や原口の選択肢もあるので、カウンター型のチョイスを「使い分ける」のも選択肢だろう。


また、西野ジャパンは攻撃以上に、守備の改善点が多い。ガーナ戦は前線で守備のスイッチが入らず、全体が引きすぎた。コロンビア戦であれほど引くと、今大会随一の精度を誇る、ハメス・ロドリゲスのフリーキックに沈められる。ハメスにはマンツーマンでプレッシャーをかけたいが、あっさり倒れてファウルをもらう傾向もあるので、可能な限り、高い位置で守備に行きたい。[5-4-1]から本田、原口、吉田が縦ズレし、[4-4-2]に変形しながら前へ押し出す守備は、ガーナ戦の前半途中から見られた。この連動はもっとスムーズにしたいところ。


課題は多いが絵は描ける


もう一つ、ガーナ戦で痛かったのは、ハイプレスを受ける機会がなかったことだ。前半8分に先制したガーナは、引いてしまった。日本の3バックやGKが強いプレッシャーを受けたとき、どうするか。あるいは、攻撃に人数をかけられたときに、どう守るか。早い時間帯の失点と、同点ゴールを決め切れない拙攻が、テスト要素を減らしてしまった。


西野ジャパンの方向性は、ハリルジャパンとは大きく異なるが、「絵を描けなくはない」。ただし、時間は足りるのだろうか。課題は多く、全部消化したところで、通じるかどうかはわからない。


あるいは、親善試合で一応の形になった戦術を、研究される恐れもある。昨年のE-1選手権では、2戦目の中国戦で形になった国内組ハリルジャパンが、3戦目の韓国戦で見事に対策を立てられて完敗した。一夜漬けは剥げやすい。試合中のセカンド・プランまで、実戦レベルに持って行けるか。心配は尽きない。オールジャパンの“不安タジー”だ。(文・清水英斗)

写真提供:getty images

シェアする
清水 英斗

清水 英斗

サッカーライター。1979年生まれ、岐阜県下呂市出身。プレイヤー目線でサッカーを分析する独自の観点が魅力。著書に『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』、『サッカー観戦力が高まる~試合が100倍面白くなる100の視点』、『サッカー守備DF&GK練習メニュー 100』など。

このコラムの他の記事