森保ジャパンメンバー発表。“主力”の大半を招集しなかったのは妥当な決断

COLUMN清水英斗の世界基準のジャパン目線 第70回

森保ジャパンメンバー発表。“主力”の大半を招集しなかったのは妥当な決断

By 清水 英斗 ・ 2018.9.1

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森保一監督率いるA代表の初陣メンバーが発表された。


ロシアワールドカップの主力メンバーは選外。これは妥当だ。もちろん、世代交代を目指すなら、本来は何人かの主力は残しておきたいところ。4年前のアギーレジャパンを振り返っても、初陣でフレッシュな選手、あるいは出場機会が少なかった選手を起用し、テスト色が強い試合をしたが、主軸の本田圭佑、吉田麻也、川島永嗣といったメンバーは残していた。


これは新旧の融合において、当然のステップだろう。フレッシュなだけの無秩序サッカーをしても、新戦力のテストとは言えない。核となる選手がいて、チームの規律があり、その中でフレッシュな個人が何をできるか。ここが肝心だ。


ところが、今は新旧の融合が難しいタイミングでもある。


選手個々に差はあるが、ロシアワールドカップの主力選手はあまりにも消耗してしまった。吉田麻也や昌子源が典型だが、逆境からすべてを出し尽くし、燃え尽き症候群のような症状に陥った選手もいる。それがコンディション不良とシーズンの出遅れを引き起こし、サウサンプトンの吉田の場合、プレミアリーグ第3節まで出場機会がない。ベンチ外も2試合あった。このタイミングで代表に呼ばれて日本と欧州を短期往復すれば、さらに回復が遠のく。


それ以外に、大迫勇也、乾貴士、原口元気、武藤嘉紀など、今夏に移籍した選手も多い。新しいクラブで地盤を固めるために、そして再び日本代表に“飢えて”合流するために。彼らが一度、日本を外から見るのも、良い時間になるはず。この初陣で主力を招集外としたのは、妥当な決断だ。


森保式に適した選手が日本には多い


しかし、繰り返しになるが、主力を欠いたことで単なる無秩序サッカーをしてしまえば、それはテストマッチとすら呼べない、時間の浪費だ。森保一監督は9月7日のチリ戦、11日のコスタリカ戦に、どんなテーマを持って臨むのか。


おそらく、五輪世代のチームと同じステップになるだろう。すなわち、ビルドアップだ。五輪代表のトレーニングで多くの時間が割かれているように、A代表も、森保式のビルドアップからチームが起動するはず。3バックを基本としながら、追い込まれそうになったらセンターハーフが1枚下りて変形し、ボールを運ぶ。


ドリブルで持ち運べる3バックの両サイド、運動量豊富なウイングハーフ、ライン間のプレーと飛び出しが求められるシャドー。日本はこれらのポジションに適した人材が多い。カギを握るのは、1トップ、センターハーフ、さらにビルドアップへの参加がより求められるGKだろう。


今回のフレッシュなメンバーが、主力に先んじて森保ジャパンでトレーニングを始められるのは利点がある。若手が「お客さん」のように代表に来るのではなく、森保式の戦術理解というアドバンテージを得て、主力よりも先を走る。10月以降に主力が招集されても、トレーニング中から存在感を出してもらいたいところだ。


U-21代表のA代表招集は?


また、森保監督は、インドネシアでアジア大会を戦うU-21代表選手のA代表招集について「心情的にはある」と答えた。いや、むしろ心情ではなく、実効において招集したほうがいい。森保理解において先を走る若手を、チーム構築のスピードを早めるために招集する。そんな考え方もありだ。もちろん、近未来の融合も見据えて。


ただし、所属するJクラブが難色を示すかもしれない。アジア大会で長期離脱したのに、この上さらに!? と。しかし、そうは言ってもA代表。選手のバリューやモチベーションを高める意味では、決してクラブにとってもマイナスではない。その交渉と決断をしてほしいところだ。


森保監督がA代表と五輪代表を兼任するメリットは、最大化しなければならない。そうでなければ、監督の目が行き届かないというデメリットが上回ることになる。


少し先の話をすると、東京五輪については、ゲームコントロール重視の森保式ポゼッションがハマると見ている。アジア大会を見ていても感じるが、過密日程の中で相手が待ち構えるカウンター戦術を選択してくれると、森保式はハマる。決勝トーナメントの3戦、マレーシア戦、サウジアラビア戦、UAE戦はそんな試合だった。


むしろ怖いのは、グループステージ最終戦のベトナム戦のように、相手に精力的なプレッシングを仕掛けられ、球際の逃げ場を絶たれたところで、バチバチの戦闘に巻き込まれること。そうやって圧力で押し込まれると、森保サッカーは苦しい。このような状況に対して、Jリーグで率いたサンフレッチェ広島では、浅野拓磨らを武器としたロングカウンターに磨きをかけてクリアし、2015年は3回目のリーグタイトルを獲得した。


日本代表でも今後、同様の課題が発生すると考えられるが、ロングカウンターは個の力に頼る部分が大きい。Jリーグでは出来たことでも、果たして世界のDFを置き去りにする個を、つまりエデン・アザールやデ・ブルイネのようなアタッカーを、日本の五輪代表やA代表が獲得できるだろうか。そこはなかなか難しいと、個人的には見ている。


森保式と東京五輪の相性の良さ


その意味では、暑熱と過密日程に悩まされる東京五輪は、運動量を上げるプレッシングサッカーを相手が選択しづらいため、森保サッカーは相性が良い。元々、原型であるミハイロ・ペトロヴィッチのサッカーも、夏場に結果を残してきた印象がある。対戦相手にもよるが、渋い試合が増えそうな五輪については、カウンターの爆発力が足りなくても、今の方向性で粘り強く勝っていく目処は立つ。


逆に心配なのはA代表だ。


冬場のカタールは運動量を上げやすく、また、ワールドカップの日程は五輪に比べると余裕がある。アジア大会のベトナム戦のように、運動量を上げた相手に飲み込まれるかもしれないし、そもそも相手が強いので、ゲームコントロール自体を握られるかもしれない。もっと言えば、最終予選のアウェーで芝の問題に悩まされると、森保式ポゼッションが機能しないリスクがある。いずれにせよ、ロングカウンターは必須だ。


浅野が飛躍すれば……。デ・ブライネ級の推進力を発揮できるセンターハーフが現れれば、あるいは……。ちょっと先の話をしすぎたかもしれない。まずはチームを起動させるビルドアップだ。9月のチリ戦、コスタリカ戦、最初はここがポイントになる。


もっとも、初陣にしては相手がやけに強いので、散々にやられるかもしれないが。(文・清水英斗)


写真提供:getty images

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清水 英斗

清水 英斗

サッカーライター。1979年生まれ、岐阜県下呂市出身。プレイヤー目線でサッカーを分析する独自の観点が魅力。著書に『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』、『サッカー観戦力が高まる~試合が100倍面白くなる100の視点』、『サッカー守備DF&GK練習メニュー 100』など。

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