森保ジャパンの背番号10、中島翔哉が魅せた“連打系リズム”は、日本の新たな武器になる

COLUMN清水英斗の世界基準のジャパン目線 第71回

森保ジャパンの背番号10、中島翔哉が魅せた“連打系リズム”は、日本の新たな武器になる

By 清水 英斗 ・ 2018.9.13

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サッカーをプレーするときに聞く、嫌いな言葉の中に「一発で行くな!」がある。それを言われたとき、たいがい私は「うるせー。行けると思ったから、行ったんだ。奪えると思ったら、次も一発で行くぞ」と心の中で思っている。いちいち反論はしないが。


もちろん、一発で飛び込めないタイミングなら、間合いを調整して二発、三発で粘り強く行くことも重要。状況判断に改善の余地はある。そこは駆け引きになるからこそ、「行くな!」と短絡的には言われたくない。


そんな云々を、中島翔哉のプレーを見て思い出した。


この必殺仕掛人は、一発で行かない。二発、三発、四発と、連続で仕掛けるのがうまい。またいで、縦に行って、スピードアップと見せかけ、ギュッと中へ切り返して置き去り。相手のバランスを崩して、崩して、最後に仕留める。小さく連打を繰り出すドリブルだ。そのテンポがとても早い。また、抜くのが無理そうなら、仕留めず、途中でやめることもできる。一発で行くか行かないかは、守備方法だけでなく、攻撃も同様だ。


中島のプレーはタイミングが読みづらい


南米系のテクニシャンには同様のセンスをよく見かけるが、日本の選手は、フェイント一回でダーッと持ち出すタイプが多いように思う。仕留めのタイミングがわかりやすい。対応が良いDFにはサッと身体を入れられてしまう。


その点、連打系の中島はタイミングが読めない。外から見ていても虚を突かれることが多くある。そこが彼の面白みであり、魅せる選手なのだろう。


ところが、相手DFだけでなく、味方にとってもわかりづらいのは難点。前半37分のシーンは、左サイドで中島が相手を翻弄して仕掛けたが、右足に切り返してクロスを蹴ったとき、ボールがGKとDFの間を通り抜けてしまった。絶好球だが、小林悠も、南野拓実も、誰もタイミングを合わせられない。ああ……さもありなん、と。


クロッサーが連打系だと、中央で合わせるほうも難しい。むしろ、シンプルに一発で持ち出し、抜き切らずにクロスを蹴ったほうが、合わせる味方はタイミングを取りやすい。しかし、その要求はドリブラー中島を半減させるだろう。


中島と南野、小林が魅せたコンビネーション


試合は面白いけど、あと一歩。まだビッグチャンスはそれほど多くない……と、そんな心持ちで迎えた後半12分。左サイドで中島がボールを持った。1対1。一旦動きを止めた中島は、右にクンッと突き、素早くクロス。連打ではないが、タイミングが早い。そこに南野がフリーで走り込む。


ヘディングは空を切り、肩に当たって外れたが、タイミングはぴたりと合っていた。映像で振り返ると、中島のクンッに対して、南野もクンッと同期してステップを踏み、DFを外している。そこにジャスト・クロス。中島の独特なリズムに、南野が俊敏性と適応力を見せたシーンだ。


中島のタイミングに合わせれば、虚を突かれたDFを高い確率で外せる。彼ら2列目の連打系リズムで、もっとコンビネーションを深めることができれば、面白いことになりそうだ。そして、そのリズムを殺さず、加速させる1トップとして、小林のパフォーマンスも抜群に良かった。川崎フロンターレの速いパスワークに慣れているせいか、この連打リズムにも気持ちよく順応している。


中島や南野に限らず、最近の日本の若い選手には、U-21日本代表の三好康児をはじめ、連打系のリズムを持った小柄なアタッカーが目につく。これは武器だ。


そして、今後どのように生かされていくのか。コスタリカ戦のように、コンディション差で殴り勝つようなイケイケのゲームプランばかりでは行き詰まる。スローテンポで展開したり、ポゼッションを重視したり、いろいろな調整は必要になるだろう。すなわち『対応力』。


しかし、そんな云々も、明確な武器があっての話だ。システムなど細かいところはまだわからないが、チームの芯は少し見えた気がする。森保ジャパンは期待感のあるスタートを切った。(文・清水英斗)


写真提供:getty images

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清水 英斗

清水 英斗

サッカーライター。1979年生まれ、岐阜県下呂市出身。プレイヤー目線でサッカーを分析する独自の観点が魅力。著書に『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』、『サッカー観戦力が高まる~試合が100倍面白くなる100の視点』、『サッカー守備DF&GK練習メニュー 100』など。

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