ウルグアイ戦で明らかになった、森保ジャパンにフィットする選手像

COLUMN清水英斗の世界基準のジャパン目線 第73回

ウルグアイ戦で明らかになった、森保ジャパンにフィットする選手像

By 清水 英斗 ・ 2018.10.18

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「オールジャパン」で発進した森保ジャパンだが、サッカーの内容はむしろ欧州スタイルだった。アグレッシブで、ポジションの役割に忠実。ウルグアイ戦の後半こそ間延びしたが、攻守のバランスは強く意識されている。西野ジャパンのサッカーとは全く違う。


戦術のベースとなるのは、2列目のアタッカーだ。中島翔哉、南野拓実、堂安律は個人で仕掛け、個人でターンし、個人でキープできる。この3人に大迫勇也が加わり、前線の4人は少ない人数で攻撃を完結させる力がある。「日本は個で劣るからグループで――」の常套句は、ついに過去の物になった。むやみに数的優位を作る必要はない。まずは個で仕掛け、必要であれば後方の助けを得る。優先順位は入れ替わった。


いや、むしろこれが、サッカーの自然な形と言うべきだろう。局面で数的優位を作れば、ピッチの別の場所では数的不利が生じるものだ。その偏りというリスクをむやみに冒さず、質の優位を生かして、シンプルな連係で攻め切る。バランスを維持するには重要な要素だ。


攻守一体のポジショナルプレー


森保監督はサンフレッチェ広島を指揮したときも、アタッカーの質的優位をベースに、攻撃パターンを整理していた。典型的なのは、両ウイングハーフの柏好文とミキッチだ。サイドはシンプルにドリブルで運び、クロスへ持ち込む。この大外レーンは、むやみに数的優位を作らなかった。水本裕貴や塩谷司は、守備に備えてハーフスペースを抑える。1トップや2シャドーが動く範囲を含めて、誰がどのポジションに立つのか、広島は明確に決まっていた。


ここで重要なポイントは、攻撃パターンが整理されているために、ボールの失い方を想定できること。攻めながらポジションを整え、守備に切り替わったときの準備をしておく。2015年に3度目のリーグ優勝を果たした広島は、最近で言うところの、攻守一体のポジショナルプレーを実践した。


ボランチとサイドバックに求められる役割


同じような特性は、森保ジャパンにも垣間見える。アタッカーの質的優位をベースに、後方のバランスを決めていく。


そうなると必然、日本のボランチとサイドバックに求められる役割も変化する。攻撃時はシンプルに前線にボールを預ければいい。預けたボールはそう簡単には戻って来ないので、創造性は必要ない。早く縦パスを通せばいい。また、2列目は個で仕掛ける能力が高いので、サイドバックも数的優位を作るために、むやみにオーバーラップする必要はない。出て行くとしたら、押し込んだ状況だけ。通常は斜め後ろでサポートすればいい。


その代わり、守備に切り替わった瞬間は大事だ。その状況に備えてポジションを取り、激しいインテンシティでボール、あるいは陣地の回復に務める。森保ジャパンのボランチとサイドバックは、守備ベースのバランサーとしての働きが主要タスク。遠藤航はその役割にピタッとはまった人材と言える。


同じポジションでも異なる要求


これは西野ジャパンとの大きな違いだ。4カ月前にワールドカップを戦ったチームの場合、ボランチは長谷部誠と柴崎岳だった。どちらも、かつてはトップ下。欧州クラブが喜んでボランチで起用するタイプではない。長谷部もボランチで安定起用されるようになったのは、割と最近のことだ。おそらく森保ジャパンで、このような組み合わせはあり得ない。


同じポジションでも要求が異なる。たとえば、ウルグアイ戦の柴崎のデュエルは、特に相手に勢いがあった前半、地上戦でも空中戦でも劣勢を強いられた。もっと強さを見せなければ厳しい。試合勘の問題があるとはいえ、根本的な特徴が、森保ジャパンのボランチ像にフィットしづらい。青山敏弘よりスピードはあるので、もっと球際で強く競ることが出来れば話は変わるかもしれないが、現状はあまりにもアッサリと負けている。


状況はおそらく香川も似ている。いかに技術で優れても、ゴールに向かう推進力、得点に絡むアグレッシブなプレーで南野に劣る場合、森保ジャパンの2列目としてはフィットしない可能性はある。


柴崎と香川については、森保ジャパンに限らず、所属クラブでも出場機会が少ない。アグレッシブで攻守の切り替えが早く、バランスが重視される昨今の欧州サッカーにおいて、彼らのような純ポゼッション派は、12番目のポジションになりがち。その魅力には心惹かれるが、如何せん、置く場所がない。


サイドバックに求められる要素


サッカーは監督が戦術を決める以上、はまる選手がいて、はまらない選手もいる。それは当然のことだ。3試合を経て森保ジャパンの骨格が見えてきたことで、光り輝く選手と同時に、このチームがロスする才能も徐々に見え始めた。


それは攻撃的サイドバックも同様だ。好プレーを見せる川崎フロンターレの車屋紳太郎、横浜F・マリノスの山中亮輔、柏レイソルの小池龍太など、技巧派サイドバックも苦しい立場。代表入りする実力はあるが、同じ理由で戦術的に合わない。3バックのウイングハーフで起用されたり、あるいはビハインドスコアで起用されたりと、機会を限定すればチャンスはあるかもしれないが、スーパーサブ的な位置付けに過ぎない。


この状況は今後、変わるのだろうか。新たな可能性を見せるとしたら、それは個人か、組織か。『融合』の耳聞こえは良いが、対義語は分裂である。このバスに乗り遅れるわけにはいかない。(文・清水英斗)

写真提供:getty images

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清水 英斗

清水 英斗

サッカーライター。1979年生まれ、岐阜県下呂市出身。プレイヤー目線でサッカーを分析する独自の観点が魅力。著書に『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』、『サッカー観戦力が高まる~試合が100倍面白くなる100の視点』、『サッカー守備DF&GK練習メニュー 100』など。

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