戦術はハリルホジッチ、マネージメントは西野朗。良いとこ取りで作り上げる『森保カラー』

COLUMN清水英斗の世界基準のジャパン目線 第75回

戦術はハリルホジッチ、マネージメントは西野朗。良いとこ取りで作り上げる『森保カラー』

By 清水 英斗 ・ 2018.11.23

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就任から5試合。これでアジアカップ前の親善試合をすべて終えた。これまでの森保一監督の働きを一言で表現するなら『質の良いスポンジ』だ。


10月に続いて11月も、招集したメンバーの全員起用(GK3人目を除く)を実現させた。それも試合終了間際の3分出場とか、ケチなことは言わない。A代表キャップの少ない選手を、ドーンとスタメンに並べてきた。9月こそ地震の影響で1試合しかできなかったが、仮に2試合あれば、やはり全員起用したに違いない。


過去の日本代表で言えば、初招集の選手が試合に出場することは、かなりハードルが高かった。とりあえず招集されただけ、という選手も少なくない。それこそ「お客さん」のような気持ちで参加せざるを得ない部分はあったはず。


ところが今、森保監督が作っているのは、23人総活躍チームだ。マネージメントやチームビルディング論でも言われることだが、全員参加型のチームは、すべての構成員から活発な意見と反応が出やすく、自主的な成長を遂げていく特徴がある。


実際、森保ジャパンの選手は非常に活発だ。山中亮輔は招集から2試合目で初スタメンを果たし、わずか2分で初ゴールまで決めた。シュート自体も素晴らしかったが、それ以上に注目したいのは、山中が「そこにいた」こと。


北川航也を経由した右サイドからの速攻で、反対側のサイドバックの山中が、思い切ってゴール前まで詰めていた。何よりそれが素晴らしい。どの選手を見ても、自分を表現する意欲にあふれており、「お客さん」という雰囲気はない。全員参加型チームの長所だ。


マネージメントは西野式


だが、このマネージメントが森保カラーかと問われれば、少し違う。これは西野カラーだ。ロシアワールドカップに臨む日本代表も、ガーナ戦、スイス戦、パラグアイ戦と、ほとんどの選手をスタメン等で長時間起用したうえで、本番のコロンビア戦を迎えた。


当時の西野ジャパンと言えば、選手同士で活発に意見をぶつけ合い、監督は最後の調整役として見守りながら、戦術を組み立てたことが記憶に新しい。あの全員参加型チームのメリットを、森保監督はスポンジのように吸収している。


そして、それは完全コピーを意味しない。なぜなら、チームビルディングにおいて西野カラーを取り込みつつも、戦術のほうは自身のサッカー観が色濃く出ているからだ。


たとえば、アジアカップがイメージされたキルギス戦を除けば、両サイドバックはあまり高い位置を取らない。個の仕掛けに優れたアタッカーをシンプルにサポートする。また、ボランチも大島僚太ではなく、守田英正を招集した。これらは西野ジャパンで長谷部誠と柴崎岳、あるいは大島を組み合わせたチョイスとは傾向が異なるものだ。森保監督は、攻守でバランスを取れるボランチを好む傾向があり、自身も「バランスの良いサッカーをしたい」と発言してきた。


そして攻守の切り替えから、相手の背後を突くのが速い。バランス重視のボランチと共に、トップ下にはアグレッシブにゴールへ向かう南野拓実を置き、強い守備と速い攻撃を実現している。西野ジャパンの中盤は、長谷部、柴崎、香川真司のポゼッション三角形で構成されたが、森保ジャパンのチョイスは違う。


戦術的志向はハリルホジッチに近い


各ポジションの忠実な役割、個のアタッカーなど、戦術的に言えば森保ジャパンの志向は、むしろハリルジャパンに近い。3年半前のハリルジャパンも、発足直後の数試合はアグレッシブさ、鋭いカウンターが際立っていた。あの当時を思い出す。


戦術的にはハリルカラー、マネージメント的には西野カラー。各人が実践した良いところ取りをしながら、サンフレッチェ広島時代とも異なる、森保カラーを作っている印象だ。


元々広島時代も、コーチから昇格した監督だった。ミハイロ・ペトロヴィッチの戦術に学びつつ、欠けていた守備バランスを付け加えながら、森保カラーを作り上げていた。


スポンジ監督・森保一の手腕は、日本代表を率いても変わっていない。


今は吸収ステージが終わったところか。順調に来ているが、今後はどこかで停滞するタイミングが来るかもしれない。広島時代も最初の2シーズンでリーグ連覇した後、1シーズンは停滞。その次の2015年で、新しいチームに生まれ変わらせ、再びリーグ優勝を成し遂げた。それが、ちょうど4年目。代表監督で言えば、ワールドカップの年になる。そんな”青写真”を描いてもいいだろう。(文・清水英斗)

写真提供:getty images

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清水 英斗

清水 英斗

サッカーライター。1979年生まれ、岐阜県下呂市出身。プレイヤー目線でサッカーを分析する独自の観点が魅力。著書に『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』、『サッカー観戦力が高まる~試合が100倍面白くなる100の視点』、『サッカー守備DF&GK練習メニュー 100』など。

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