選手発掘が終わった森保ジャパン。アジアカップのメンバーに見る、指揮官の狙いとは?

COLUMN清水英斗の世界基準のジャパン目線 第75回

選手発掘が終わった森保ジャパン。アジアカップのメンバーに見る、指揮官の狙いとは?

By 清水 英斗 ・ 2018.12.14

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「アジアカップのメンバーから、なぜ香川真司は外れたのか?」


メンバー発表直後、このようなトピックスが上がったが、一度も森保ジャパンに選ばれていない選手が「外れた」という表現はおかしい。単純に、入れなかっただけ。その必要がなかったからだ。


これは乾貴士にも、昌子源にも、川島永嗣にも同じことが言える。一度も招集していない選手を、緊急的に加える必要が、今のチームにはなかった。それだけのこと。ロシアワールドカップ後、序列の垣根を取り払い、真っさらの状態でスタートした森保ジャパンだったが、周囲の手垢はなかなか取れない。


必要があるなら、年齢がどうであれ、クラブの状況がどうであれ、招集されたはずだ。長友佑都は、32歳でも招集された。吉田麻也も、クラブで出場機会がない10月の時点から、森保ジャパンに招集されていた。柴崎岳も同じだ。それは彼らが、抜けた力を持っているから。彼らのポジションと個性において、他に並ぶ人材がいないからだ。


逆に、香川、乾、昌子については、替わる人材(南野拓実、中島翔哉、冨安健洋)といった若手のスタメン有望株が出てきている。そんな状況下で、1月の代表招集という海外組にとってのリスクを冒させてまで、緊急招集する必要はない。まして「サブ組を増強したい」などという理由で呼べるはずもない。


今後、ワールドカップ予選で必要に迫られたときは、緊急出動を要請する試合もあるだろう。たとえば、スタメン候補の若手が怪我をしたり、極端に調子を落としたり、といったケース。その場合は控えではなく、経験のある選手をスタメン起用するイメージを持って、招集することになる。


香川や乾の招集見送りは、一方でハリルジャパン時代の『今野泰幸枠』を、より分厚いものにした。当時アウェーのUAE戦で躍動した今野について、「頼もしい」と語っていた香川だが、今度は自分がその立場になっていく。代表のサイクルが、そこにある。



「プランA」のみのメンバー


そのほか、今回のアジアカップの23人について興味深いのは、プランBを感じさせる選手がほとんど入らなかったこと。極めて順当なリストだった。


プランBと言えば、純正左利きの攻撃的サイドバック、山中亮輔はそのひとり。キルギス戦で負った肉離れは、経過が順調ならアジアカップも間に合ったはず。しかし、メンバーに入らなかった。


山中だけでなく、シント=トロイデンで大活躍中の鎌田大地にも注目が集まった。


今の前線4人、大迫勇也、南野、中島、堂安律は、縦のスピードと仕掛けのアグレッシブさ、ワンタッチコンビネーションを先鋭化させた、とてつもない魅力がある。そして、控え選手と見られる、原口元気、北川航也、伊東純也、浅野拓磨も、同じ方向性を持っている。


だが、鎌田は違う。タメを作るキープ力、ドリブルやスルーパス、得点感覚を兼ね備えた、純正の司令塔だ。このような10番タイプ、遅攻で変化を付けられる奇術師は、今の森保ジャパンには存在しない。選出されれば面白い存在になったと思うが、この異分子も、やはりメンバーには入らなかった。


選手選考が終わり、次の段階へ


現状の森保監督の選手リストには、プランB感がない。プランAと、プランA(-)の23人だ。


戦いの幅を出す意味では、ちょっと物足りない。ただし、森保ジャパンの基本スタイルが浸透したメンバーであることは間違いなく、“発掘”のフェーズは終わっている。「現在のA代表はこういうサッカーですよ」と、改めて説明が必要な選手は1人もいない。


とすれば、これは“戦術家・森保一”の狼煙か。


これまでの親善試合では、あえて最初の招集でロシアワールドカップ組を1人も呼ばなかったり、招集したほぼ全員を長時間起用したり、戦術的に細かい指示を与えなかったりと、“新人発掘”のフェーズにおける戦略家としての顔を、森保監督は見せてきた。


だが、今回のリストは、まさに森保定食。食材の発掘が終わっており、目新しいものは全くない。どこにどんなおかずがあるのか、手に取るようにわかる。目をつぶったって、食べられる。


この順当なメンバーで、1カ月の長期合宿を張る。食材の発掘が終わったチームは、第2フェーズで料理されることになる。これまでとは異なり、森保監督から脳みそを握るような細かい指示が飛ぶかもしれないし、3バックもやるかもしれない。


プランAの選手リストのまま、どこまで柔軟に戦うことができるか。たとえば、アグレッシブな攻撃が通じないとき、じゃあ遅攻にしましょう、ではなく、通じるためにどう調整するか。


両手に武器を持つのではなく、一本の槍を、さらに尖らせるための23人。一本の槍のまま、出来る限りの状況に対応したい。このリストからは、そんなイメージを持った。(文・清水英斗)

写真提供:getty images

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清水 英斗

清水 英斗

サッカーライター。1979年生まれ、岐阜県下呂市出身。プレイヤー目線でサッカーを分析する独自の観点が魅力。著書に『日本サッカーを強くする観戦力』、『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』、『サッカー守備DF&GK練習メニュー 100』など。

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