アジアカップに追加招集にされた武藤嘉紀に期待する“カットアウト”

COLUMN清水英斗の世界基準のジャパン目線 第76回

アジアカップに追加招集にされた武藤嘉紀に期待する“カットアウト”

By 清水 英斗 ・ 2018.12.26

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何の変哲もないアジアカップ23人のメンバーリストにおいて、浅野拓磨は唯一、サプライズと呼ぶことができた。しかし、負傷によって辞退を強いられることに。


そこで白羽の矢が立ったのが、武藤嘉紀だ。森保ジャパンでは、過去に一度も招集されていない選手である。森保一監督が「相手のディフェンスを突破するスピードは、今の日本代表に必要だなと思って招集しました」と、浅野について語った内容は、そのまま武藤にも通じるだろう。


特に彼らに期待するプレーは、カットアウト(外流れ)だ。


森保ジャパンの両ウイング、中島翔哉や堂安律が厳しくマークされたとき、前に出てきた相手サイドバックの裏を取り、カットアウトする。サイドに流れながら飛び出す。これは大迫勇也が得意とするプレーではなく、スピード自慢の浅野や武藤にこそ、期待したいプレーだ。


2トップのコンビに増えるバリエーション


たとえば11月のベネズエラ戦では、相手が果敢なプレッシングを仕掛けてきたため、ポストプレーに下がる大迫と入れ替わり、相手のハイラインの裏を一発で突こうと、南野拓実が飛び出しをねらっていた。


だが、狭いスペースに入って行く敏捷性では一級品の南野も、広いスペースへ出て行くプレーはあまり向いていない。この役回りを、浅野や武藤のようなスピード派に任せるオプションはあって然るべきだろう。2トップのコンビネーションに、バリエーションが増える。


もちろん、大迫、南野、中島、堂安が、足元のコンビネーションで崩し切ることができれば、それに越したことはない。しかし、それがうまくいかない時間帯もある。たとえば、ハイプレスを受けて苦しんだとき。あるいは相手のビルドアップに対して日本のプレスがはまらず、押し込まれた状況だ。


中島や堂安が守備に追われ、両サイドが低い位置に押し下げられると、前線4人の距離が離れ、攻撃に転じるのが難しくなる。大迫や南野のところで時間を作り、両サイドが上がってくる時間を稼げれば良いが、足元にこだわりすぎると、カウンターを食らうリスクも大きい。


そこで、一発で裏のスペースを突くカットアウトが、有効なオプションになる。青山敏弘や柴崎岳から精度の高いロングボールが出るのは、容易に想像がつくだろう。完全に裏を陥れなくても、サイドに流れて時間を作り、味方の押し上げを待てば、相手の勢いを押し返すことができる。


武藤に期待したい、クロスに飛び込むプレー


こうした飛び出しのタイミングの図り方、あるいはカットアウト後に背面から迫る相手センターバックとの駆け引き、さばきを考えると、武藤よりも、浅野のほうが巧みだ。スーパーサブ起用にも慣れている。その意味で、浅野の負傷は残念だった。


一方で、武藤の長所もある。クロスに対して勝負するプレーだ。ニアとファーで入れ替わりながら、ゴール前へ入るプレーは、いつも相手の急所をねらっている。クロスに対するフィニッシャーとして、ゴール前での怖さは、むしろ武藤が上だ。


抜群のコンビネーションを見せる森保ジャパンの前線4人だが、大迫と南野で2トップを組んだ場合、クロスから点を取るイメージが沸きづらかった。たとえば、左サイドから中島がクロスを上げる場面など、南野の頭に合うシーン、合いそうなシーンは多くあったが、今ひとつ決定機にならない。


そこで武藤をセンターフォワードに置き、大迫をトップ下気味とする縦の2トップに変化すれば……。一発の裏抜け、クロスからのフィニッシュ。2つの面において、攻撃のオプションができる。大迫を軸に、いろいろなパターンが考えられるだろう。ここは注目したい。


日本代表のオプションになれるか?


やや心配なのは、武藤のコンディションだ。


11月3日のワトフォード戦で負傷交代し、3試合欠場した後、12月5日のエヴァートン戦でベンチに復帰したが、そこから4試合も出場機会がない状況だ。


所属クラブのニューカッスルでは、11月の国際親善試合にベネズエラ代表として来日したサロモン・ロンドンが、センターフォワードに君臨している。相棒となるトップ下は、アヨゼ・ペレスだ。


武藤はトップ下タイプではないため、ロンドンとはプレーしたいスペースが重なる。同時に起用しても合わない。現状はロンドンと武藤の二択になっている。ところが、186センチ、86キロとフィジカルの強さを押し出すロンドンが、今はエースとなっており、なかなか武藤に出番が訪れないのが現状だ。


10月6日のマンチェスター・ユナイテッド戦で、武藤は鮮烈なプレミア初ゴールを決め、その後も数試合スタメンを飾った。しかし、当時は負傷欠場していたロンドンが復帰すると、今度は武藤が負傷し、再び難しい立場に戻っている。


コンディションだけでなく、森保ジャパンで唯一の初招集選手であるため、連係面も不安はある。プレミアリーグは年末年始も試合が行われるため、吉田麻也同様、武藤の日本代表への合流は遅くなってしまう。


徐々にフィットするしかない。グループリーグの間はコンディションと連係を高め、3戦目の消化試合(となるべき)ウズベキスタン戦で、森保ジャパン初出場。そして、決勝トーナメントでは、重要な日本代表のオプションへ。


そうなってくれたら、心強い。(文・清水英斗)


写真提供:getty images

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清水 英斗

清水 英斗

サッカーライター。1979年生まれ、岐阜県下呂市出身。プレイヤー目線でサッカーを分析する独自の観点が魅力。著書に『日本サッカーを強くする観戦力』、『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』、『サッカー守備DF&GK練習メニュー 100』など。

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