新春特別対談 河治良幸×清水英斗「どうなる? 東京五輪のメンバー構成」

COLUMN【新春特別対談】河治良幸×清水英斗 世界基準の真・日本代表論 ②

新春特別対談 河治良幸×清水英斗「どうなる? 東京五輪のメンバー構成」

By 清水 英斗 ・ 2019.1.2

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2020年の東京五輪を1年半後に控え、2019年は強化に向けて重要な年になる。自国開催の五輪でピッチに立つのはどの選手になるのか? 連載コラムでおなじみ、河治良幸氏と清水英斗氏に、五輪代表チームの現状と展望を語ってもらった。


東京五輪を1年半後に控えた現状



河治:2018年はU-21日本代表とU-19日本代表(※2019年はU-22日本代表とU-20日本代表として活動)が並行して活動し、両方に選ばれた選手もいました。ほかにもクラブの事情やAFC U-19選手権があったり、U-21代表で挑んだアジア大会に招集されない選手もいました。


清水:五輪に向けたフルメンバーを組む機会が、なかなかないですね。海外組がいなかったり、AFCチャンピオンズリーグの出場クラブから選ばれなかったり。アジア大会では、1クラブ1名という人数制限もありました。


河治:でも、すごく楽しみなメンバー構成になっているのも確かですよね。すでにハンブルガーSVの伊藤達哉は招集されましたが、東京五輪までは1年半あるので、海外に行った選手がもっとメンバーに入ってきて欲しいなと。A代表でアジアカップに出場する堂安律(フローニンゲン)もこの世代です。すでにオーバーエイジ的な貫禄ですけれど。


清水:冨安健洋(シント=トロイデン)も、この世代ですしね。A代表の主力に食い込める選手が、この世代にいるのは頼もしい。


河治:U-20代表は影山雅永さんが監督をやっていますが、今後、森保一さんがA代表も見ながら、どういうふうに全体を組み上げていくのか。A代表のコパ・アメリカがある6月には、同時にU-22代表のフランス遠征があり、U-20ワールドカップがポーランドで行われて、3チームの日程が重なることになります。JFAの田嶋幸三会長は「チーム森保」と言っていますが。


清水:各代表チームのスタッフ間にギャップが生じたり、森保さんがキャパシティオーバーで行き届かなるリスクはあります。ただ、2018年の11月も日程が重なり、ドバイカップに出場した当時のU-21代表は、横内昭展コーチに代理指揮を任せました。メンバー発表の記者会見で、森保さんは「横内コーチが言うことは、私が言うことと同じ」と説明しました。それを聞いて、兼任のデメリットを強く意識しているなと感じましたね。あの発言は、記者やファンに向けたものじゃない。U-21に選ばれた選手へのメッセージ。「自分がいないことを言い訳にするな」と。僕はそう感じましたね。森保さんには、統括リーダーの風格が出ているなと思います。


河治:新たにスタッフが追加されるとも、予想されていました。たとえば、片野坂知宏さんは腹心になれる人だったけど、大分がJ1に上がり、契約更新されたので難しくなりました。


清水:最近はJリーグで結果を残せば、そのままJリーグで活躍。結果を残せなかった人が、JFAに集められる流れですね。


河治:そうですね。代表チームのコーチ就任が濃厚と見られていた井原正巳さんも、柏レイソルでネルシーニョ監督のもとでコーチになり、代表スタッフ入りはなくなりました。


清水:なにはともあれ、A代表から下の世代へつながる組織は出来てきました。このチームを統合したとき、東京五輪ではどういうチームになるのか。現時点の五輪ベストイレブンを、オーバーエイジを含めて考えてみましょうか。


現時点での五輪ベストメンバーは?


河治:まずはGK。


清水:いきなりだけど、ここがいちばん難しい。


河治:普通に考えれば、小島亨介だけど、大分でどのくらい試合に出られるのか。守護神としてJ1昇格を支えた高木駿がいて、ポープ・ウィリアムも加入した。大分はGKの選手層が厚いですからね。


清水:小島は非常に完成度が高いと思います。ミスが少ない。いいなと思うんですけど、世界を相手にしたときの上積み、器の大きさでどうかなと。そこが正直、自分には見えていません。


河治:小島はハイボールの対応も、上背よりはできると言うか、リーチもあるし、しっかりキャッチングできます。ただ、早稲田大学で試合に出続けているから、パフォーマンスが良いわけで、Jリーグでベンチに座る時間が長くなってしまうと、どうなるか。だったら京都で試合に出ているU-20の若原智哉や、G大阪はU-23の出場があるので、18歳の谷晃生。もちろん、上のカテゴリーでプレーするに越したことはないけど、特にGKは試合に出場していることが大事なので。


清水:そうですね。それにしてもGKは、A代表でも絶対的な選手が決まっていないので、オーバーエイジを起用するにしても、決めづらい。やっぱり、ここがいちばん難しい。


河治:まさにそういう状況です。僕はオーバーエイジで権田修一に期待かな。何しろロンドン五輪などの経験が豊富ですから。ポルトガルのポルティモネンセへ移籍することが濃厚ですが、どれだけ試合に出られるかですね。


清水:海外には、スペインの3部でプレーする山口瑠伊(エストレマドゥーラ)もいます。


河治:アジア大会のときは欧州リーグがシーズン中だったので、招集されていません。そのあたり、GKの序列がどうなっているのか。


清水:全体的には、小島を軸に置きつつ、選択肢を見ていく感じですね。



オーバーエイジは吉田麻也?


清水:では、次は3バック。五輪代表(U-22代表)は3-4-2-1が多いので、このシステムをベースとして。


河治:まず、板倉滉(仙台)は外せない。A代表の縛りをなくしたら、冨安も当然。もう一人なんですよね。橋岡大樹(浦和)はU-19のこともあって、U-21には呼ばれていなかったけど、森保さんの基準で行くと、橋岡も3バックの右がメインになるはず。


清水:浦和ではサイドをやっているし、五輪代表は3バックの人材が結構いるので、僕は橋岡については、右ウイングハーフをメインに考えたいですね。


河治:そこは兼ね合いですね。僕は右から、橋岡、冨安、板倉。もちろん、ほかに候補は大南拓磨(磐田)、立田悠悟(清水)。あとは原輝綺が新潟からサガン鳥栖へ移籍しましたよね。そこで試合に出られるかどうか。


清水:僕は右から、板倉、吉田麻也(サウサンプトン)、冨安健洋。ここでオーバーエイジ投入。というのも、森保さんは五輪代表は3バックをベースに、4バックとの使い分けを考えていると思う。4バックにしたときの2枚のセンターを考えると、板倉も立田も不安。可変性を考慮した上で、冨安のほかに吉田を確保したほうが良い。対世界の経験値と、統率力も重要ですからね。


河治:板倉に関しては、僕なら4バックにするときは前へ上げますね。


清水:ボランチですよね。僕もそう考えます。あるいはサイドバックでもいいですけど、 そこは他の選手、試合状況との兼ね合いです。オーバーエイジをどこに使うのかは、意見が分かれるところ。


河治:そうですね。



ダブルボランチの人選は?


清水:ダブルボランチはどうしましょうか。僕は守田英正(川崎)と中山雄太(柏)。守田の攻守のバランスの良さは、特に五輪代表ではなかなか見られない。欲しい選手です。守田を入れる意味はもう一つあって、A代表の合宿でも大学生の練習パートナーに声をかけたりしていましたよね。年下の選手とラフにコミュニケーションを取ってくれるので、オーバーエイジによってチームが分断しないように、リンクマンになってくれればと。


河治:僕が考えるダブルボランチは、三竿健斗(鹿島)と中山です。森保さんのプランを予想するなら、青山敏弘をオーバーエイジの軸に想定していると思っているんですけど、三竿は五輪世代に無い強度をもたらせる選手です。それによって中山の負担が減り、左利きという特長も生かすことができる。


清水:中山をより前目で考えるんですね。攻撃寄りの役割で。


河治:はい。中山はパスセンスが高い上に、前への推進力もあります。それを発揮させるためにも、三竿がいいかなと。A代表のライバルでもある守田も認めていたんですけど、人への強さは、三竿のほうが高いと。


清水:球際で足をねじ込んでボールを奪うプレーなどは、かなり上手いですよね。ボランチについては人選の違いはあっても、オーバーエイジを使うところでは、お互い一致したようです。


河治:では、次は右ウイングハーフ。


清水:すでに言ったとおり、右は橋岡ですね。


河治:僕は3バックに橋岡を入れたので、ヴィッセル神戸の藤谷壮か初瀬亮。新天地の神戸で一皮むけてくれると期待して、初瀬にします。


清水:次は左ウイングハーフ。ぼくは杉岡大暉(湘南)。もっと相手を抜くタイプを入れてもいいんですけど、バランスの良さと、3バックの使い分けを考えたときに、森保さんの好みはこっちかな。遠藤渓太(横浜FM)を最初から左に置いて、相手にわかりやすい形で入るよりも、後半から遠藤を入れたほうが効果は大きい。


河治:ほぼ同じで、基本は杉岡、オプションで遠藤かな。


清水:五輪は18人しか登録できないので、複数のポジションでプレーできる選手は、すごく重要ですよね。



タレントが揃うシャドーのポジション


河治:次、シャドーに行きましょうか。


清水:お互い、オーバーエイジは残り1枚ですね。


河治:シャドーは豊富ですよ。旗手怜央(順大→川崎内定)、前田大然(松本山雅)、三好康児(横浜FM)、久保建英(横浜FM)、さらに堂安律もいる。ここから1年半の伸びしろを考えれば、U-20に飛び級で入っている斉藤光毅(横浜FCユース)や宮代大聖(川崎)も候補。U-20W杯でアピールできた選手が、そのまま東京五輪に割って入る流れも考えられますね。


清水:三笘薫(筑波大→川崎内定)も面白いプレイヤーですよね。


河治:旗手とともに、A代表のトレーニングパートナーを経験したことも、プラスになるかもしれないですね。あとは伊藤達哉。


清水:めっちゃ好き。ただ、スーパーサブであれほど面白い選手はいないけど、果たして五輪の登録メンバー18人に入れる余裕があるのか。最後にこっそり調子を上げてサプライズ招集とか、ありそう。


河治:中村敬斗(G大阪)や岩崎悠人(札幌)もいます。


清水:岩崎は指導者が好きなタイプですよね。ガツガツ戦って、素直で献身的だし。


河治:7試合戦ってくれそうな気がする。岡崎慎司タイプですから。


清水:タフですね。もうちょっと、狡猾にプレーしてほしいと思うところもありますけどね。僕のベストイレブンは、岩崎と堂安の2シャドーです。右サイドは橋岡が運動量豊富にカバーし、堂安は主にハーフスペースでボールを受けるイメージ。左サイドからは、岩崎がどんどんカットアウトして飛び出して、杉岡はサポート&バランス重視。杉岡、中山、守田のところで、前へ出て攻撃に絡みます。左右違うバランスで、シャドーを配置しました。堂安は本当に呼べるのかな、というのはありますけど、自国開催の五輪だから無理は利くでしょう。


河治:堂安は鉄板で、もう1枚。久保と岩崎、それから安部裕葵(鹿島)で迷っていて。久保はクラブで壁に当たっているイメージはあるけど、代表ではチームの中で攻撃のスイッチなんですよね。


清水:たしかに。


河治:久保を基本で置いて、スタメンもあるジョーカーとして岩崎かな。東京五輪は真夏の連戦なので、どこかでスタメンも想定して。安部は久保と競争ですね。二人の共演も見たいけど。


清水:2シャドーに久保、堂安と左利きを並べる形ですか。珍しいですね。久保は左サイドでも違いを作る技術があるし、面白そうですね。



1トップは大迫で決まり?


清水:さて、1トップはどうなりますか。ここまでオーバーエイジを残した時点で、1人しかいませんよね。大迫勇也です(笑)。


河治:(笑)。まあ、そうですよね。こっちも同じ。


清水:大迫がいるからこそ、岩崎のような飛び出すタイプをシャドーに入れておきたいんですよ。堂安もタイミング良く、3人目で飛び出せるし。そういう状況判断では、三笘もいいですね。


河治:大迫をメインに、前田をジョーカーという感じかな。ニューフェイスに出てきてほしいですけどね。候補は田川亨介(鳥栖)、小川航基(磐田)あたりでしょうか。


清水:ポスト役の1トップなら、上田綺世(法政大)もいますね。


河治: 大迫はA代表でも五輪代表でも、招集できれば絶対的な存在ですけど、そこを突き抜ける人間が下の世代から出てくると、A代表の活性化にもなりますよね。とはいえ、Jリーグで結果を出してくれないことには…。得点ランキングの上位に、東京五輪世代のFWがいないですからね。


清水:今季、どれだけ試合に出られるかが、もっとも大きなポイントですね。注目しましょう。


写真提供:getty images

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清水 英斗

清水 英斗

サッカーライター。1979年生まれ、岐阜県下呂市出身。プレイヤー目線でサッカーを分析する独自の観点が魅力。著書に『日本サッカーを強くする観戦力』、『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』、『サッカー守備DF&GK練習メニュー 100』など。

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