新春特別対談 河治良幸×清水英斗「どうなる? Jリーグ勢が挑むAFCチャンピオンズリーグ」

COLUMN【新春特別対談】河治良幸×清水英斗 世界基準の真・日本代表論 ④

新春特別対談 河治良幸×清水英斗「どうなる? Jリーグ勢が挑むAFCチャンピオンズリーグ」

By 清水 英斗 ・ 2019.1.4

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2017年に浦和レッズ、2018年の鹿島アントラーズと、Jクラブが2年連続でアジアの頂点に立った。昨年末、アジア王者としてクラブW杯に出場した鹿島は、レアル・マドリード、リバープレートと熱戦を繰り広げた。はたして、Jリーグ勢の大会3連覇はなるのか? 識者に展望を語ってもらった。


清水:まず2018年のAFCチャンピオンズリーグを振り返ると、日本からは川崎フロンターレ、セレッソ大阪、鹿島アントラーズ、そしてプレーオフから勝ち上がった柏レイソルが参戦しました。グループリーグで3つのJクラブが敗退し、唯一、決勝トーナメントに進出した鹿島が、初めてアジア王者になるという結果になりました。


河治:Jリーグ王者の川崎が、まさかのグループ最下位でしたね。上海上港、蔚山現代、メルボルン・ビクトリーという最難関のグループでしたが、1勝もできずに終わってしまったのは、正直情けない結果でした。


清水:ACLに出たクラブは、みんなリーグ戦の序盤で躓いちゃうし、毎年そんな感じですね。川崎はかなり盛り返しましたけど。


河治:すごい盛り返しでしたね。ただ、川崎の場合は”負けパターン”というか、わかりやすい負け方なんですよね。その意味ではJ1を連覇したチャンピオンとして、今年はリベンジに期待したいです。それと、ACLは今年からグループリーグの抽選方法が変更されて、ほぼシャッフルになったので、各国の王者同士が同じグループに入るケースも出てきました。


清水:”死の組”ができやすくなったと。


河治:その結果、川崎はまた上海上港と一緒になり、さらにオーストラリア王者のシドニーFC、もう1つがプレーオフを順当に勝ち上がれば、また蔚山現代が来るという。前回のメルボルンがシドニーになっただけじゃん、ということで、格好のリベンジの場が用意されたことになります(笑)


清水:昨年のACLで優勝した鹿島は、日程がきつい中で見事でしたね。


河治:なんだかんだで、ここまで25年かかりましたね。鹿島にとってはちょうど20冠目がACLでした。小笠原満男がいた20年間で、17個の主要タイトルを獲っています。最後の最後に、越えられなかった壁を越えたと。内田篤人に聞いたら「これまでのチームより特別強くなっているわけではなく、巡り合わせもある」と言っていました。ただ、巡り合わせでチャンスが来た時に、しっかりと引き寄せるだけのものが鹿島にあった。準々決勝で当たった天津権健に、モデストやヴィッツェルがいなくなっていたことや、ダボス会議(世界経済フォーラム年次総会)の警備強化で、アウェーの会場が中立地のマカオになったり、準決勝では、グループリーグで対戦した水原三星と再び対戦するとか。厳しい戦いを勝ち抜いて決勝にたどり着き、ペルセポリスとのファイナルはすごかったですね。


清水:鹿島はACLに最適化したチームになったと思いましたね。それをわざと作ったんだろうなと。鳥栖から獲得したチョン・スンヒョンは、いかにもACLに向いている選手です。対世界で考えると、相手を深追いする傾向があるので穴になるかもしれませんが、アジアのチーム相手には、球際の強さなどは効果的です。ACLに最適化したチームを作ったのが、今までの鹿島との違いかなと。その分、狡猾さみたいなものが、明らかに抜けてはいましたけど。勢い、若さ、フィジカルは抜群。


清水:逆に2年前の鹿島の方が、クラブW杯ではよく戦えたと思うんです。当時は開催国枠だったので、Jリーグ化した鹿島でした。レアル・マドリードともうまく戦えましたが、今回のようにACL化した鹿島は、レアルのようなチームと戦うには、どうしても球際に行く分、コンビネーションで外されるんですよね。クラブW杯は、相手を外すのがうまいチームばかりなので、球際で勝つという前提が通用せず、走らされる。その辛さは抱えていたと感じました。


河治:鈴木優磨と三竿健斗も、ACLではより能力を発揮しやすい選手です。Jリーグでも活躍はしてるんだけど、より輝くという。Jリーグだと個人の部分で持て余し気味のところを、ACLではデュエルの強さなどをフルに発揮していました。セルジーニョの加入も大きかったですね。レオ・シルバはJリーグでもACLでもスペシャルにやれる選手ですが、ACL向きの補強もハマりました。巡り合わせという意味では、清水さんの言う”狡猾さ”を埋める存在として、内田篤人が大事な時期に戻って来て、難しい場面を乗り切る力になりました。


河治:柴崎岳が欧州に旅立ち、小笠原満男はベンチから見守ることが多くなり、2018年のクラブW杯を最後に現役を引退。2016年のチームの象徴である2人の入れ替わりが、変化に関連しているのかなと思います。


清水:2017年の浦和も、ACLに優勝してクラブW杯に出ましたけど、開催国として出る方がメリットが大きいと思いました。浦和も球際に強く、粘り強く勝って行った結果のACL優勝でしたけど、それがベースだとクラブW杯では厳しい。そういうジレンマはあったかなと。もっとも、浦和はレアル・マドリードと戦うところまでは行けませんでしたが。


河治:鹿島は北中米カリブ王者のグアダラハラに勝って、準決勝でレアル・マドリードとの“再戦”が実現しました。そこは賞賛するべきところですが、現地で取材していて、レアル・マドリード戦以上に、リバープレートとの3位決定戦にショックを受けました。内容的には、レアル・マドリード戦に比べればやれているのに、結局は自陣と敵陣のファイナルサードでの厳しさの違いが、0−4という結果に出ちゃうんだなと。


清水:鹿島は勝ち上がりに応じて、Jリーグや天皇杯の変動もあって色々大変でしたね。ワールドカップとアジアカップの影響を受ける中で、スケジュールの変更は柔軟にやったと思います。ただ、この時期のクラブW杯は、今回で終わりなんですよね?


河治:正式発表はされていませんが、少なくとも毎年はやらない方向になっているんじゃないですかね。


清水:Jリーグの日程も、少しは余裕ができるかな。



河治:そうですね。余裕ができる代わりに、モチベーションがどうなるかですね。


清水:クラブW杯に出なくなれば、その分、賞金も落ちますからね。


河治:”DAZNマネー”のおかげで、Jリーグで優勝すれば、総額21億円ほどが収入になります。一方で、ACLで優勝しても、賞金はおよそ4億5千万円です。


清水:協会とJリーグからの報奨金も出ますけど、苦労を考えるときついですね。


河治:大人の事情を抜きにファン目線で言えば、アジアに出る以上はしっかり戦って欲しいとは思いますけどね。


清水:2019年からJ1の外国人枠が5人になりますが、ACLの外国人枠は3人+アジア枠1人と変わりません。JリーグとACLで同じメンバーでは戦えないので、やりくりの難しさはありそうです。


河治:中国超級リーグが同じような問題を抱えていて、国内リーグには出るけど、ACLに出ない外国籍選手がいました。


清水:今年、Jリーグ勢で期待しているクラブは?


河治:鹿島は2018年のACLでの戦いを見届けて来たので、引き続き頑張ってもらいたいと思います。他には一年越しの挑戦になる浦和と、Jリーグ王者としてリベンジを目指す川崎。ひとつを挙げるなら、川崎かな。元ブラジル代表で、ロンドン五輪得点王のレアンドロ・ダミアンも獲得しまたし。かなり難しいグループですけど、頑張って欲しいです。


清水:川崎も昨年の敗退があるので、ACLのモチベーションは高いでしょうね。


河治:川崎はセレッソ大阪から、山村和也も獲得しました。ゴール前の強さやセットプレーの守備もかなり強化されるはず。そこはアジアの戦いで足りなかった部分ですからね。セットプレーの守備で、1、2枚はミスマッチになっていた不安が軽減されるはずです。浦和への期待はどうですか?


清水:それはオリヴェイラ監督への期待とイコールのところがあって、オリヴェイラになってからの浦和は、ペナルティエリアに割り切って下がって、そこでの守備もこだわっています。一方で、形にはどんどんこだわらなくなっているんです。ミシャ(現・コンサドーレ札幌のミハイロ・ペトロヴィッチ監督)からの反動がすごいなと(笑)。セットプレーの攻撃のパターンをやるのとかもそうですけど、それがACLではうまく出る部分もある。ACLではミシャのやり方が特殊すぎて、アジアのチームをびっくりさせた部分もあったんですけど、それはオリヴェイラにはありません。その分、粘り強くは戦えるのかなと。まずはグループリーグ突破ですね。


河治:オリヴェイラ監督は鹿島の監督時代にアジアを獲れなかったので、Jリーグだけでなく、ACLにかける思いはあるでしょうね。2018年の浦和はACLに出ることへのモチベーションが高く、J1の順位では届かなかったけど、天皇杯で優勝して出場権を勝ち取りました。


清水:やっぱり、過去にタイトルを獲って来たクラブのACLに対するモチベーションは高いですね。賞金にかかわらず。それは、滑り込んできたチームとはちょっと違うかなと。


河治:それで言うと、広島は何度かACLの壁に跳ね返されていますが、意識をそこに向けるのは難しいかもしれません。鹿島とともに、まずはACLのプレーオフからの出場になりますが。


清水:広島は難しい。シーズンの終わり方が苦しかったので、まずJリーグに向けた立て直しが必要になりますね。



河治:アジアカップのメンバーに青山敏弘と佐々木翔が選ばれているので、彼らはまとまったオフが無く、2019年のシーズンに入らないといけない厳しさもあります。グループステージも広州恒大、本田圭佑のメルボルン・ビクトリー、韓国の大邱ですね。


清水:まあ、仮に城福監督がACLを捨てたとしても、何も言えねえという感じです。さすがに、しょうがない気はします。



河治:今回もオーストラリア遠征があって、広島からまず関西国際空港に行くのがしんどいとか言われていますけど(笑)。


清水:そうなるとチャーター機を飛ばすしかないし、色々辛い(笑)。


河治:もちろん最初から勝負を捨てる様なことは言わないだろうし、若手にもチャンスが巡ってきそうです。ACLで躍進したら賞賛されると思うので、Jリーグの代表として頑張って欲しいですね。



写真提供:getty images

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清水 英斗

清水 英斗

サッカーライター。1979年生まれ、岐阜県下呂市出身。プレイヤー目線でサッカーを分析する独自の観点が魅力。著書に『日本サッカーを強くする観戦力』、『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』、『サッカー守備DF&GK練習メニュー 100』など。

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