カタールの“3”に対応できなかった、日本の“2×5”。森保監督に求められる、今後の指針作り

COLUMN清水英斗の世界基準のジャパン目線 第79回

カタールの“3”に対応できなかった、日本の“2×5”。森保監督に求められる、今後の指針作り

By 清水 英斗 ・ 2019.2.4

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選手の“柔軟な対応力”に委ねた日本と、監督による“デザイン”で試合を作ったカタール。


アジアカップ決勝の組み合わせを見たとき、私はロシアワールドカップ準決勝、フランス対ベルギーを思い出した。選手のベーシックな配置を大きく変えず、個々の柔軟な対応で粘り強く戦ったフランスと、監督がシステムを工夫し、全体をデザインしながら戦ったベルギー。レベルは違うが、構図は似ている。ただし、フランスは勝ったが、日本は負けた。


日本の対応力には重大な限界があったのではないか。それは“2の集まり”で問題を解決していたこと。


[4-4-2]を敷く日本は、2の集まりで状況を解決する傾向が強かった。2トップの大迫勇也と南野拓実、サイドハーフの原口元気とサイドバックの長友佑都、ボランチの遠藤航と柴崎岳、センターバックの吉田麻也と冨安健洋。それぞれのコンビ。2×5+1(GK)=11のチームである。


2人ずつの連係で解決する流れは、特に守備面で顕著だった。準決勝まではそれで対応できる相手だったし、日本も試合ごとに課題を改善し、決勝にたどり着いた。それは素晴らしかったと思う。


ところが、決勝の相手カタールは3を基盤とする集まりだった。3バックの3、中盤中央の3。“2”で解決を図れば、必ず1人が浮く。


この点に関して、ピッチにバランス良く選手を配する[4-3-3](中盤三角形と逆三角形)で戦えるフランスと、日本は違った。[4-4-2]はコンパクトに守れる利点はあるが、全体が塊として動かなければ、その効力は減少する。端的に示すなら、ボランチの脇に生まれるスペースに、サイドハーフが絞らなければならない。日本はサイドバックとサイドハーフがセットで動くために、中央とのつながりを欠く。これは2×5の弱点だった。


日本の“2”を個人で粉砕した11番アフィフ


対応力をベースとするなら、選手が隣り合うポジションのコミュニケーションで問題解決を図るのは、当然のこと。しかし、それが2×5の硬直化を生んだのではないか。


もっとも、日本は選手個人の能力が高いので、この程度のかみ合わせは、アジアなら局面で飲み込むことができる。しかし、そこに釘を刺したのが、カタールの11番アクラム・アフィフだった。2トップのFWながら、彼は中盤をふらふらと動き回る自由人。かみ合わせの差を、1人から2人に広げられれば、どうにもならない。かといって、吉田麻也や冨安健洋が深追いをすれば、即座にジ・エンド。なぜなら、そのスペースはカタールのインサイドハーフ、特に6番アブドゥルアジズ・ハティムが、常にねらっていたからだ。吉田も冨安も出られない。出なくて正解だが、中盤の混迷は深まる、ジレンマである。


“自由人アフィフ”の存在を、私は意外とは思わなかった。なぜなら、過去の試合でも、彼はずっと自由人だったからだ。プレスバックしない、ボールを奪われても追わない、チームメイトに文句ばかり付ける。でも、プレーの創造力は抜群に高い。ウイングであっても、中盤や中央など、好き勝手に動いてボールを受ける。まさしく自由人であり、チームプレーヤーの10番アルハイドスとは、まったくタイプが違った。


後半開始直後、カタールが[5-4-1]に変えたときも、最前線に残したのは19番アルモエズ・アリではなく、11番アフィフ。この自由人を、献身性が求められるサイドハーフに置くよりも、1トップに残すほうが都合は良いのだろう。


組織力のあるカタールにおいて、アフィフは非組織的な性格を持つ自由人だった。それが逆に、カタールという組織の奥深さを生み出していた。


過去の試合を見たときも、11番アフィフは、いちばん嫌な選手だと直感した。このような自由人を試合から追い出すのは、いかにも日本が苦手な科目に思える。ならばと、マンマークを付けようにも、如何せん2×5チームがそれをやれば、決定的にバランスが崩れる。


森保ジャパンは4-3-3向き?


[4-4-2]の妥当性も、今後は考えても良いのではないか。バランスと対応力をベースとする森保一監督の志向を見るに、私はフランス、あるいはリヴァプールと同じ[4-3-3]のほうが、今の日本には合っているように思える。[4-3-3]はピッチに均等に人を配する特徴があるので、対応力が高く、バランスが崩れにくい。これをシステム遊びと捉えて欲しくはないが、森保監督の戦略志向と選手の特徴から逆算すれば、そう考えられる。


ただし、これはデュエルの重要性が、再びクローズアップされることを意味する。前半35分に南野がアンカーの23番マディボのマークに下がった修正も、相手にかみ合わせただけ。システムのかみ合わせによるメリット、デメリットをキャンセルした格好だ。これはJリーグでミハイロ・ペトロヴィッチの5トップ戦術に対し、対応し切れなくなった過去のJクラブが、4バックから5バックに変えた修正にも似ている。より正確に言えば、かみ合わせても位置的優位は残るので、キャンセルというより、最小化した格好だ。森保ジャパンが行った修正も、本質的にはそれと変わらない。


だとすれば、はじめから[4-3-3]のほうが、かみ合わせる自由度は高い。仮に乾貴士のように、中間ポジションの守備がうまい選手が11人いれば、[4-4-2]のほうが良いかもしれないが、2×5で解決しがちな傾向、あるいは中島翔哉が戻ることを踏まえても、[4-3-3]のほうが、森保ジャパンの現状に合っているのではないか。


カタール戦は、森保ジャパンがこれから進むべき道を問うものだったと思う。


2×5+1の問題を解決し、11人の塊で動けるチームにするか。あるいはそれとは逆に、1×11に分解してかみ合わせやすい、[4-3-3]のような対応力の自由度が高い形にするか。大迫と南野のコンビネーションが減るのも悩ましいので、結局、使い分けるのがいちばん良いのだが。


色々な考え方があると思う。森保監督には今後の日本代表に期待を抱かせる指針を、言葉で示してほしいところだ。「我々がやってきたことを今後も続けていくだけ」では、再び期待を抱ける状況とは思えない。次の会見が楽しみだ。(文・清水英斗)


写真提供:getty images

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清水 英斗

清水 英斗

サッカーライター。1979年生まれ、岐阜県下呂市出身。プレイヤー目線でサッカーを分析する独自の観点が魅力。著書に『日本サッカーを強くする観戦力』、『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』、『サッカー守備DF&GK練習メニュー 100』など。

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