森保ジャパンに推薦! J1開幕節で見せた、GK林(FC東京)とFW藤本(大分)の存在感

COLUMN清水英斗の世界基準のジャパン目線 第80回

森保ジャパンに推薦! J1開幕節で見せた、GK林(FC東京)とFW藤本(大分)の存在感

By 清水 英斗 ・ 2019.2.27

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2019年J1開幕節を見て、印象に残った選手が2人いた。


1人はFC東京の林彰洋。DAZN週間スーパーセーブには選ばれなかったが、川崎戦の後半9分、中村憲剛のシュートを防いだプレーは、鳥肌モノのビッグセーブだった。


きっかけは味方のミス。中盤でボールを持った橋本拳人が、GK林へバックパスを出したところ、このボールがGKへのチェイシングで残っていた中村へ渡ってしまった。FC東京はロングキックのこぼれ球を回収した後、ポゼッションを整えるために、GKへ戻して時間を作ろうとしたが、橋本はトコトコ歩いて気配を殺す、中村の存在に気が付かなかった。


中村は中村で、エロス漂うサボり。ボールが落ち着いていないためか、すぐに走って戻ることはなく、相手センターバックの裏で芸術的に歩いていた。FC東京がポゼッションを安定させた後なら単なるサボりだが、まだ攻守がどう転ぶかわからない、あの場面では、エロかった。


ところが、そんなエロスをぴしゃり。怒涛の寄せで、林が襲いかかった。解説の戸田和幸さんも「おおっと!」と、橋本のパスミスに驚いていたが、戸田さんの「お」が出る以前から、林は飛び出していた。味方の不測のプレーに対し、あのタイミングで出るのは難しいはずだが、林はしっかり準備が出来ていた。


ゴール前で壁になった林


その後の判断も出色だ。ボールに先に触ることが不可能であるため、中村がタッチするタイミングでしっかりと静止し、重心を下げてブロックに移行。股下も抜かせない構えだ。また、この距離まで詰められれば、上を抜かれるリスクも軽減できる。あの瞬間、林は壁になった。実に美しいブロックの構えだ。リプレイで見返しても、見事なプレーだったと思う。


そして隅をねらった中村のシュートを左手に当て、チームを救った。シンプルな1対1なので、中村がトーンと前にボールを置いたら、終了のお知らせだ。しかし、それを許さない、かつ無謀ではないチャレンジ。冷静とアグレッシブの間にある、ビッグセーブだった。


それ以外にも、前半31分にコースぎりぎりに来た小林悠のシュートをセーブした場面。35分にコーナーキックのハイボールを直接キャッチし、脇からレアンドロ・ダミアンに当たられながらも、ボールをこぼさなかった空中戦のパフォーマンス等々。ブラボーだ。


単純に決定機を防いだ、というだけではない。構えといい、技術といい、前方へアタックする判断といい、確かなトレーニングの跡が感じられる、再現性のあるセーブばかり。日本代表に推挙したくなる、GKの姿を見せてくれた。


4カテゴリーで開幕戦ゴールを挙げた男


そして、もう1人。今節、印象に残った選手として、FW藤本憲明(大分)を挙げたい。


私はシュートについて、最も大事な要素を一つだけ挙げるとしたら、それは“タイミング”だと思っている。シュートはタイミングが命。コースや威力は2番目だ。極端な話、GKのタイミングさえ外せたら、それほど厳しいコースではなくても入る。


また、人間の身体は股下、膝横、脇、肩上など、たくさんのすき間がある。GKの身体に近い場所にシュートを飛ばしてしまっても、タイミングさえ外せばGKは反応できず、入る可能性は充分にある。タイミングはとても、とても大事だ。


鹿島戦で決めた、藤本の1点目にもそれを感じた。


ボールを右アウトサイドで止めながら、左足でランニングシュート。若干、左足は流れ気味だったが、走りながら、そのまま蹴っちゃう。踏み込みが甘いので、威力はそれほどでもなかった。しかし、ボールから遠い位置に立っていたわけではない、GKクォン・スンテが、一歩も動けず、尻もちを付きそうになったのは印象深い。


もし、あそこで一回整えてしまったら、コースや威力は、より優れたシュートになったはず。しかし、DFにコースを狭められ、GKにもタイミングを合わされ、結局、確率の低いシュートになってしまったのではないか。


ゴールのツボを知る藤本


藤本はゴールのツボを知っている。2点目はワンタッチシュートだったが、ボールに対するGKの移動の逆を突く、コントロールショットだ。GKの習性を、逆手に取るのがうまい。


さらに、駆け引きを支える技術要素もある。それは小さなモーション、あるいは不完全な体勢から、最小限の動作でキックを繰り出すセンスに長けていることだ。


PKの名手でもある藤本は、ぎりぎりまで駆け引きし、GKの動きを外してねらうシュートがうまい。ただし、相手の不意を突くためには、自分のボディーバランスも万全にならないことが多い。藤本はそういう姿勢から、最小限のキックモーションでねらったコースへ、それなりの威力で打ち込むのだ。この技術があってこそ、駆け引きが映える。


シュート以外にも、1トップのポストプレーで裏へ飛び出す選手を使うのも巧みだ。非常に面白い選手。


JFL、J3、J2、J1の4カテゴリで開幕戦ゴールを挙げ、藤本は話題を呼んだ。次のターゲットは? ACLの開幕戦? でも、1年待つのもシンドイ。だったら、コパ・アメリカの開幕戦? あるいはワールドカップ予選の開幕戦? そのときは『珍記録』と呼ばれることもないだろう。

これから藤本は対戦クラブに警戒される存在になるはず。それでも点を取り続けたら、シンデレラ・ストライカーの妄想は現実味を帯びるかもしれない。(文・清水英斗)


写真提供:getty images

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清水 英斗

清水 英斗

サッカーライター。1979年生まれ、岐阜県下呂市出身。プレイヤー目線でサッカーを分析する独自の観点が魅力。著書に『日本サッカーを強くする観戦力』、『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』、『サッカー守備DF&GK練習メニュー 100』など。

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