キリンチャレンジカップ、期待のボランチは小林祐希

COLUMN清水英斗の世界基準のジャパン目線 第81回

キリンチャレンジカップ、期待のボランチは小林祐希

By 清水 英斗 ・ 2019.3.21

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『ダブルボランチ』が好きだ。


英語のダブルと、ポルトガル語のボランチが交じった珍妙なサッカー用語であると、指摘を受けることもあるが、『ドイスボランチ』と直す気にはならない。


『love.fútbol』をご存知だろうか。ストリートサッカー中の交通事故や病気で亡くなる子どもを救うため、サッカーのグラウンド作りを通して、子どもたちが安全にプレーできる場所、支える仲間を提供しているNGOだ。日本にも支部がある。


その創始者マノ・シルバに、『love.fútbol』の由来を教わったことがある。『love』という英語と、『fútbol』というスペイン語。2つの異言語を組み合わせ、世界がサッカーでつながっていることを表現したかったそうだ。マノ氏はブラジル人だが、あえてポルトガル語ではなく、英語とスペイン語を選んだ。世界を広くカバーするために。


別に違う言語が交じってもいい。英語とポルトガル語で『ダブルボランチ』。イングランドとブラジルの両方から影響を受けた日本のサッカー文化を、これほど言い表した言葉はない。日本の地理的な条件、サッカーの歴史的な流れ。その膨大な情報を、たった7文字で『ダブルボランチ』。素敵だ。まあ、そういう意図で作られた言葉ではないだろうけど、世の中そんなものだ。


そんなわけで堂々とダブルボランチと書かせて頂くが、3月のキリンチャレンジカップの招集メンバーで、いちばん気になるのは、ダブルボランチである。森保監督は、どんな組み合わせを送り出すつもりだろうか。


3月シリーズはW杯アジア予選を意識したメンバー?


今回のコロンビア戦とボリビア戦を、コパ・アメリカの準備と捉える風潮はあるが、メンバーをザッと眺めたところ、あまりそういう感じはしない。DFに西大伍、畠中槙之輔、安西幸輝など、新顔はビルドアップや攻撃を重視している。コパ・アメリカというより、9月から始まるカタールW杯・アジア2次予選を意識したメンバーに感じられる。


森保監督に重大なノルマが課せられているのは、コパ・アメリカではなく、W杯予選であるのは言うまでもない。そして、今年のW杯2次予選は、大迫勇也や吉田麻也といった主力を、いかにターンオーバーさせるかも焦点になるだろう。なぜなら、東京五輪があるから。


もし、来年の東京五輪で、オーバーエイジ等の海外組の招集を望むなら、所属する欧州クラブとの交渉をクリアしなければならない。たとえば、W杯2次予選の数試合で大迫らを招集外として休ませ、クラブを納得させる材料を出す。今後もそういった駆け引きがなければ、東京五輪でベストメンバーを組むのは難しいだろう。


そんな諸事情を踏まえると、今回の招集メンバーは単純に色々な選手を試すだけでなく、W杯2次予選で主力をターンオーバーさせつつ、乗り切るためのラージグループ。この攻撃的なメンバーには、そんな目論見がある気がする。というか、あってほしい。


小林祐希に期待


その前提で、ダブルボランチを見てみる。


今回招集されたのは、柴崎岳、山口蛍、小林祐希、橋本拳人の4人。守田英正が負傷離脱した以上、キャリアから言えば、柴崎と山口がファーストチョイスだろう。だが、あまりこの2人が合うイメージはない。どちらもプレーが直線的なので、対戦相手が守りを固めるアジア2次予選では、いちばんやってはいけない組み合わせだ。さらに、2人共にコミュニケーターではない。吉田らと頻繁に声をかけ合う、長谷部誠や遠藤航がいたときには無かった問題が発生しそうだ。


もちろん、『士別れて三日。更に刮目して相待すべし』と三国志で呂蒙が言っているように、いつまでも固定観念で見るのは良くない。特に山口は久しぶりの日本代表。ヴィッセル神戸でも新たな成長を始めているし、出場したら、改めてニュートラルに見たいが。


個人的には小林に期待したい。「オレがパスを出した先で、誰かがミスをしたら、それはオレのミス」と語り、2手3手先を意識したパスにこだわりがある。引いた相手を崩すアイデアと、よく喋るコミュニケーションを備えた、レフティーの司令塔。4年前の柏木陽介を彷彿とさせ、小林もアジア2次予選のキーマンになる可能性がある。


その片鱗が見えるとしたら、ボリビア戦か。コロンビア戦よりは、この2試合目のほうが、アジア予選をイメージしやすいだろう。おそらく森保監督は昨年の親善試合と同様に、2試合でほぼ全員を起用するはず。どんな組み合わせで送り出すのか、楽しみだ。(文・清水英斗)


写真提供:getty images

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清水 英斗

清水 英斗

サッカーライター。1979年生まれ、岐阜県下呂市出身。プレイヤー目線でサッカーを分析する独自の観点が魅力。著書に『日本サッカーを強くする観戦力』、『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』、『サッカー守備DF&GK練習メニュー 100』など。

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