コパ・アメリカはU-22代表+オーバーエイジで挑む? 選手の招集を巡る“落とし所”

COLUMN清水英斗の世界基準のジャパン目線 第84回

コパ・アメリカはU-22代表+オーバーエイジで挑む? 選手の招集を巡る“落とし所”

By 清水 英斗 ・ 2019.4.30

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コパ・アメリカを巡る交渉ニュースを見ていると、直近2度の辞退を経て、さすがに3度目の正直と言うべきか。JFA(日本サッカー協会)の経験値が上がってきた様子は伺える。


前提として、日本代表のコパ・アメリカ出場は、JFAが2つの駆け引きを行わなければならない立場だ。


1つの相手はクラブ。日本にとって連盟の異なるコパ・アメリカへの出場は、クラブ側に選手を派遣する義務がない。相手が海外クラブであろうと、Jクラブであろうと、クラブ側に「うん」と言ってもらわなければ、選手を集められない。


もう1つの駆け引きの相手は、南米サッカー連盟だ。


上記のクラブ問題があるので、日本としては来年の東京五輪を見据え、「若手に限定するから」「自国五輪だから」「1クラブ1名に限るから」とクラブを説得し、U-22代表を組み、強化の場とするのが理に適う。だが、それはそれで、南米連盟のほうで表情が曇ってしまうのが難しいところだ。


2011年のコパ・アメリカは、ロンドン五輪を目指すメキシコがU-22代表+オーバーエイジで出場した。しかし、結果は3戦全敗。その経緯もあり、コパ・アメリカの権威を落とすような世代別代表の派遣には、南米連盟からNGが出されるようになった。実際、2015年のコパ・アメリカに招待された日本は、メキシコにならって五輪代表を出場させようと試みたが、南米連盟に難色を示され、断念した。


だが、そうは言っても、2011年のメキシコは3敗で得た経験を生かし、ロンドン五輪で金メダルに輝いたわけで。コパ・アメリカ出場が、U-22の強化として有効なのは間違いない。もともと五輪代表は実戦の場が少ないため、公式戦の緊迫感で戦うだけでもありがたい。特に来年の東京五輪は開催国枠であり、予選を経験しない日本にとっては尚更だ。しかし、その思惑を前面に出すと、南米側のプレッシャーがきつい。難しいところだ。


森保監督が行った、欧州行脚の意図


クラブとの交渉、南米連盟の顔を立てること。コパ・アメリカ出場は、2つの駆け引きが必要になる。


このような駆け引きは、2011年、2015年の招待の際にも行われたが、今大会に臨むJFAの振る舞いを見ていると、さすがに3度目の正直と言うべきか。経験が生き、政治力が上がったと感じるところはある。


その一つが、森保監督が今年2月に行った、欧州クラブ行脚だ。大迫勇也も、吉田麻也も、酒井宏樹も、堂安律も、南野拓実も、どの選手も「招集は難しい」とクラブからNG回答をもらい、帰国した。そりゃそうだろう。クラブはそう言うに決まっている。わざわざ欧州まで行き、そんな当たり前のことを確認してきたのかと。無駄使い感は拭えない。


しかし、それは、なくてはならない無駄なのだろう。日本としてはU-22+オーバーエイジを派遣する“落とし所”が、頭には浮かんでいるが、それは南米連盟の顔色を伺い、表には出せない。あくまでもベストのA代表を模索し、監督自ら欧州クラブを回りつつ、最終的にこのチームになりましたよと、ほぼ五輪メンバーを出す。


大事なのはストーリーだ。選手集めに最大限の努力はしたが、クラブが「うん」と言ってくれなかった。欧州クラブがそういう態度だったと、南米連盟を納得させる。森保監督の欧州行きは、政治出張になるわけだ。


国内組の招集も難航


森保監督は一貫して、コパ・アメリカにはA代表のベストメンバーを招集したいと、希望を言い続けてきた。だが、それが不可能であることは、過去の経緯を踏まえ、さすがに監督自身も初めからわかっているのではないか。記者会見でも常に発言をコントロールする人だけに、本音と建前が交錯しつつも、日本は最初から用意していた“落とし所”に向かっているように思える。


欧州組だけでなく、コパ・アメリカの期間(6月14日~7月7日)はJリーグがあり、AFCチャンピオンズリーグもラウンド16が組まれているため、国内組の招集も難航している。そんな状況もあり、最近の報道では、東京五輪世代+海外組で招集できる選手(要はシント=トロイデンだろう)の案が濃厚になってきた。やはりというか、最初からその方針でいい、という気はしなくもない。だが、最初から五輪世代で行こうとすれば、南米連盟の怒りを買い、2015年の辞退を繰り返すだけだった。


幸いなことに、カタールリーグは秋春制でオフシーズンのため、中島翔哉を招集する目処は立つ。中島はアジアカップに出ていないので、クラブの説得はしやすいだろう。そこに香川真司か、長友佑都か、あるいは本田圭佑か。この辺りから1~2名でも呼べれば、たとえそれ以外の選手がほぼ五輪代表でも、交渉経緯を含め、南米連盟は満足するのではないか。


コパ・アメリカは色々と小難しい。だが、この状況を東京五輪の強化につなげることができれば、日本は成熟を示したと言える。メキシコのように、うまくいけばいいが。(文・清水英斗)


写真提供:getty images

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清水 英斗

清水 英斗

サッカーライター。1979年生まれ、岐阜県下呂市出身。プレイヤー目線でサッカーを分析する独自の観点が魅力。著書に『日本サッカーを強くする観戦力』、『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』、『サッカー守備DF&GK練習メニュー 100』など。

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