史上最強の五輪代表結成に向けて、コパ・アメリカは千載一遇のチャンス

COLUMN清水英斗の世界基準のジャパン目線 第85回

史上最強の五輪代表結成に向けて、コパ・アメリカは千載一遇のチャンス

By 清水 英斗 ・ 2019.5.16

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6月の代表ファンは忙しくなりそうだ。U-20日本代表は、5月末に始まるU-20ワールドカップでグループステージを勝ち抜けば、6月は決勝トーナメントを戦うことになる。U-22日本代表も、1日からトゥーロン国際大会に出場する。また、女子ワールドカップも開幕し、なでしこジャパンは11日に初戦を迎える。


A代表も大忙しだ。6月はキリンチャレンジカップとコパ・アメリカで、最低5試合が組まれている。と言ってもコパ・アメリカのほうは、名目はA代表だが、実質的には五輪代表。U-22をベースに、クラブから了承を得られた海外組、オーバーエイジを加えたチームで編成される。


な~んだ……本気のA代表じゃないのか……と、コパ・アメリカに対する世間の興味が、日に日に萎んでいくのを感じるが、もし、あなたが来年の東京五輪を楽しみたいなら、コパ・アメリカは見逃すべきではない。


これは千載一遇のチャンスだ。基本的に、五輪代表は強化が難しい。FIFA主催の大会ではないので、招集に強制力がなく、満足な強化スケジュールを組むことができない。リオ五輪の日本代表に限らず、ほとんどの国が、五輪直前にオーバーエイジをかき集め、即席の融合で本番を迎えるのがせいぜいだ。


しかし、今回はコパ・アメリカがある。東京五輪まで残り1年のタイミングで、招集に計算の立つオーバーエイジや海外組を呼び、なかなか出来ない長期合宿を行い、コパ・アメリカの緊迫感を味わいながら、森保一監督が指揮を執って戦う。これだけの条件がそろった五輪代表の活動機会は、極めてまれだ。これほどの準備ができる五輪代表チームはほとんどない。間違いなく、対戦国へのアドバンテージになる。


そして、その機会を逃したくないからこそ、久保建英、安部裕葵、大迫敬介の3人は、U-20ワールドカップの招集が回避されたのだろう。つまり、彼らは東京五輪の有力候補として数えられたわけだ。


久保建英はどちらに参加すべき?


U-20ワールドカップと、コパ・アメリカ。久保らはどちらへ行くべきだったのか。この件で議論されているのは、選手個人にとっての成長機会の云々がほとんどだが、それ以上に大事なことは、チームだ。東京五輪のプライオリティは、ワールドカップ級になる。そのチーム作りの重要性は、U-20ワールドカップを上回る。だから3人は、U-20を招集外となった。そう考えるのが妥当だ。


おそらく、コパ・アメリカに出場する日本は、そのまま東京五輪のベースになるだろう。今回、クラブから派遣を渋られたオーバーエイジや海外組の選手は、東京五輪の本番でも、やはり派遣を渋られるリスクが大きい。好例が大迫勇也だ。喉から手が出るほど欲しい選手だが、リオ五輪の久保裕也のように、直前でクラブから派遣NGを食らい、突発的に戦力を失った状態で本番に臨むのはつらい。できればというか、絶対に避けたい。


それくらいなら、今の時点で計算できるオーバーエイジを組み込み、コパ・アメリカという舞台を経験しながらチームを作ったほうがいい。具体的には、本田圭佑が強い意欲を見せているほか、遠藤航もコパ・アメリカ参戦が濃厚だ。日本資本のシント=トロイデン所属の選手は、招集に障害がないため、戦力として計算できる。オーバーエイジの遠藤のほか、U-22でも冨安健洋の招集が計算できるのは大きなメリットだ。


中島翔哉の招集は?


また、個別の話はわからないが、アル・ドゥハイルの中島翔哉もそれなりに計算できるのではないか。カタールが2020年1月のU-23アジア選手権で五輪出場権を獲得すれば、国内リーグ、カップ、ACL等のスケジュールをずらす可能性は高く、そうなれば中島のオーバーエイジ招集に障害はなくなる。もちろん、移籍でクラブが変わる可能性もあるが、その大勢は5月、あるいは6月には判明するだろう。森保監督がオーバーエイジ招集を約束するなら、新クラブの契約条件に付けてもらうことも可能だ。


すべては東京で、史上最強の五輪代表を作るために――。コパ・アメリカは千載一遇のチャンスだ。


とはいえ、コパ・アメリカは3敗するだろう。良くて1引き分け。ウルグアイ、エクアドル、チリと対戦相手が強烈で、カテゴリーも違う。日本は連係が整っていない初顔合わせのメンバーが増える。過度な期待はできない。


ただし、戦術的には森保監督とそのスタッフが、A代表とU-22の両チームを見てきたわけで、選手にとってもギャップは少ない。そのメリットを生かし、短期間でチームの機能を上げることはできる。そのための兼任だろう。


U-20の若き才能、中核となるU-22、そしてA代表からオーバーエイジ候補。3つのチームから選手が融合し、コパ・アメリカを戦う。この大会こそ、森保監督の兼任監督としての真の手腕が試される。楽しみだ。(文・清水英斗)


写真提供:getty images

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清水 英斗

清水 英斗

サッカーライター。1979年生まれ、岐阜県下呂市出身。プレイヤー目線でサッカーを分析する独自の観点が魅力。著書に『日本サッカーを強くする観戦力』、『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』、『サッカー守備DF&GK練習メニュー 100』など。

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