コパ・アメリカのメンバー決定。A代表と五輪代表の監督兼任を活かした構成に

COLUMN清水英斗の世界基準のジャパン目線 第86回

コパ・アメリカのメンバー決定。A代表と五輪代表の監督兼任を活かした構成に

By 清水 英斗 ・ 2019.5.28

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キリンチャレンジカップのA代表と、コパ・アメリカのA代表(東京五輪世代+海外クラブ所属)が発表された。


U-20ワールドカップを回避させた久保建英、大迫敬介はコパ・アメリカだけでなく、主力が集うキリンチャレンジカップにも招集された。煌めく10代の2人にとっては、大きな刺激になるだろう。中山雄太を含め、普段は東京五輪世代以下でプレーする3人を引き上げ、A代表の雰囲気とクオリティーを体感させる。


そして、若手を引き上げるだけでなく、川島永嗣と岡崎慎司をコパ・アメリカにも招集した。彼らが東京五輪世代に下り、刺激を与える場も作っている。双方向の融合が図られた選考であり、兼任監督のメリットを充分に活かした内容だった。


コパ・アメリカのメンバーは、最初からこの形を臨んでいたのか、あるいは仕方なくこの形に落ち着いたのか。その解釈はともかく、全体的に良い選考という印象を受けた。


ただし、気になるのは、関塚隆技術委員長が記者会見で語ったこと。コパ・アメリカのように選手の招集を強制できない状況を、今後どうクリアするべきか。


「インターナショナルマッチウィーク以外の点に関しては、今後はもっと長期的に調整をしていく可能性があると思っています」(同委員長)


“長期的な調整”の中身については明言を避け、「大会が終わった後に伝えられることは伝える」としたが、果たして、どのような調整を意味するのだろうか。


たとえば、コパ・アメリカに大迫勇也、南野拓実らの主力海外組を招集するための根回し?


それは長期というか、中期の調整と言えるが、一つの方法としては、コパ・アメリカで招集したい選手を、同年のアジアカップで回避させておく。もちろん、あまり何人も回避させると、AFCが黙っていないだろうが、今回で言えば少なくとも東京五輪世代の堂安律くらいは、アジアカップを回避させ、コパ・アメリカの五輪世代に合流させたほうが良かったのではないか。


結果的には中島翔哉をコパ・アメリカに招集でき、このまま行けば、東京五輪のオーバーエイジにも中島を加える目処が立ちそうだが、それは本人の移籍を含め、偶然そうなっただけ。個別調整は、もっと戦略的に行うことが可能だろう。


国内組招集の策は?


そして、もう一つの課題。


今回はコパ・アメリカに、東京五輪世代以外のJリーグ勢を1人も呼ぶことができなかった。本来ならば国内組こそ、コパ・アメリカで得られる経験は貴重だ。今後のA代表に食い込むチャンスとも捉えられる。それを逃したのは損失に他ならない。


また、今回は五輪世代をベースとし、海外組のオーバーエイジ候補を組み合わせることで、東京五輪対策として意味のあるA代表を組めたが、それが可能だったのは、“東京五輪だから”だ。自国開催でなければ、五輪世代の派遣すら、Jクラブとの交渉はスムーズに行かなかったはず。それは関塚氏も会見で示唆している。


もちろん、シーズン中なので、選手の派遣を渋るJクラブの態度は当然のこと。そこに問題は一切ない。


「長期的な調整」を考えるとすれば、この辺りだろう。インターナショナルマッチウィーク以外で国内組を招集するために、どんな対策が考えられるのか。


たとえばコパ・アメリカの期間中、J1を中断してはどうか? しかし、2年連続でワールドカップイヤー級の過密日程にさらされるのは辛い。ならば逆に6月のキリンチャレンジカップ期間は、そのままJ1を開催する。それでもACLの日程はどうにもならないので、完璧ではないが、国内組を呼ぶためには、JリーグとJFAが一体となった調整が不可欠だろう。


五輪に向けた強化の大会『TPPカップ』の提案


あるいは、もっと別の視点。より長期&グローバルに考え、五輪前年の夏を、太平洋地域の五輪強化スケジュールとしてはどうか。


日本は最善を尽くしたとはいえ、やはりコパ・アメリカに“B代表を派遣した”と解釈されるのは否めない。しかし、五輪代表の強化に有効であるのも確かなので、最初から五輪強化のための大会を作ればいい。アジア、東南アジア、オーストラリア&オセアニア、北中米カリブ海、そして南米が参加する、五輪対策の大会を。『TPPカップ』とでも名付けて。


もともと欧州は五輪に力を入れていない。そこで逆に、太平洋地域で思いっきり力を入れて、五輪で欧州をボコボコにしてやる。最近ワールドカップでは、ほぼ欧州にやられているし、今後もこの傾向は止まらないだろう。だったら、五輪だけでも頂く。


もともと南米サッカー連盟が日本やカタールを招待したのは、ビジネスの面が強いとされている。もし『TPPカップ』を作れば、輸出業者を中心にかなりのスポンサードが見込めるのではないか。国や経済産業省の後押しもあり得る。もっとも、その場合はアメリカの参加が難しくなるかもしれないが。


今回のコパ・アメリカは、さまざまな問題が山積みに見える。しかし、そういう場所にこそ、チャンスが転がっているものだ。関塚氏の言う、「長期的な調整」の答えが楽しみだ。(文・清水英斗)



写真提供:getty images

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清水 英斗

清水 英斗

サッカーライター。1979年生まれ、岐阜県下呂市出身。プレイヤー目線でサッカーを分析する独自の観点が魅力。著書に『日本サッカーを強くする観戦力』、『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』、『サッカー守備DF&GK練習メニュー 100』など。

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