3バックにトライした森保ジャパンから漂う“闇鍋”感

COLUMN清水英斗の世界基準のジャパン目線 第87回

3バックにトライした森保ジャパンから漂う“闇鍋”感

By 清水 英斗 ・ 2019.6.7

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手探りの90分、トリニダード・トバゴ戦。みんながあやふやな材料を持ち寄り、暗闇の中で、ぼとん、ぼとんと、落として食べる。


えっ! 翔哉さん、自由過ぎる! シャドーなのに、全然ライン間に立ってない。大迫と半端ない距離が開いてるんですけど! ど、どーする?


代わりに岳さん、英正さんのダブルボランチがライン間へ侵入したりするけど、バランス悪くない?


佑都さん、宏樹さん、まるで4バック時のサイドバック。ポジションが低い。3-4-3の両ウイングハーフだから、もっと高く、ダイレクトに裏を取っても良くない?


迷い、戸惑い、手探り。誰が何を入れるのか、何を考えているのか、先が読めない。まるで3バックという闇鍋。


相変わらず中島翔哉はスーパーテクニックを披露したが、空回り感は強かった。シャドーポジションから自由に離れすぎるため、1トップ2シャドーの前線が厚みを欠いてしまう。特に大迫勇也と堂安律は、縦パスを受けてもコンビネーションの選択肢に困り、『南野ロス』を抱えたのではないか。


この試合の中島は、いつものようにメイン食材として振る舞ったというよりは、「おい、中島のやつ、鍋にイチゴなんか入れやがって!」といった印象。まさに闇鍋の主役だった。


3バックのベース共有は?


攻撃だけでなく、守備も連動していなかった。特に目立ったのは堂安と酒井宏樹のところだ。[5-4-1]の状態からボールを奪おうと、堂安が前にプレスをかけたとき、後ろの酒井宏がついて来ない。ボールを奪う瞬間には堂安、酒井宏が縦スライドし、冨安健洋が横スライドして[4-4-2]に変えながらプレスの圧を高めたいが、日本は連動を欠いた。堂安の空振りプレスが目立ってしまった。


ボールを奪えたのは、相手のエラーか、個人の駆け引きで制したケースばかり。組織的なプレッシングは乏しかった。


もう少し、森保監督は明確な動き方を提示しても良かったのではないか。細かい部分は時間がかかるとしても、2シャドーやウイングハーフの立ち位置、酒井宏の縦スライドなど、これらは3バックで戦うなら基本の基。それすら統一感が無く、あまりに手探りすぎた。


アジアカップを思い返しても、基本的に森保監督のやり方は、闇鍋スタイル。まずは選手にやらせてみる。そして、うまくいかない部分は、ぎりぎりまで選手に委ねつつも、試合中に修正する。試合前の仕込みを少なくして、実戦的に試行錯誤して積み上げるのが、森保流だ。


しかし、せめてスープのダシくらい、あらかじめ共有しても良いのではないか。まさかのイチゴをぶっ込む選手が現れないように。そう感じるほど、3バックで戦うときの攻守のイメージは共有されていない。


3バックのメリット、デメリット


これまで日本代表が主流としてきた4-4-2(4-2-3-1)は、全体をコンパクトに保ちやすいシステムだ。中島の自由過ぎるポジショニングで流動性が出ても、それをカバーするコンパクトさも、手順も染み付いている。


しかし、3-4-2-1の場合、ピッチの幅をカバーしやすい反面、コンパクト性は保ちづらい。誰かが自由に動くと、そのスペースがすかっと空いたままになる。後半は中島のポジションに修正の跡が見られ、ライン間に立つようになったが、何と言っても3バック初導入の試合だ。まずは基本ポジションに立つ、という出発で試みて欲しかった。


次の段階として、中島には多彩なポジションをとる道が広がってくるだろう。引いてボールを受けたいなら、代わりに長友がニアゾーンへ斜めに飛び出してもいい。あるいは中島がサイドに広がって仕掛けるなら、大迫と堂安に加えて、逆サイドから酒井宏が飛び込んでくれば、中の厚みは減らない。むしろ大きな武器になる。


トリニダード・トバゴ戦は、そうした新システムにおける応用問題に、前半の頭から取り組む格好になってしまった。3-4-2-1のベーシックな約束事、立ち位置をもっと整理しておかなければ、本格派の闇鍋になってしまう。


3バックの先輩、U-22から学ぼう


おそらく、ファンやサポーターも少しストレスが溜まっているのではないか。3月のコロンビア戦、ボリビア戦は新メンバーを多く試したため、人バージョンの闇鍋だった。そして6月は、システムバージョンの闇鍋。さらに久保建英ベンチ外という肩透かしまである。


第2段階に入った森保ジャパンは、より高く跳ぶため、今は縮んでいるタイミングだ。しかし、あまりに縮んだ期間が長くなると、世間の期待ごと萎んでしまう。


個人的にはU-22代表を、もっとうまく使えなかったかなと思う。アジアカップ後に3バックに手を付けるつもりなら、すでに先行して3-4-2-1が浸透しているU-22代表を、A代表と共に活動させ、戦術の浸透を早める。U-22がA代表から学ぶだけではない。A代表がU-22から学ぶこともできるはずだ。


そんな機会を、この6月か、あるいは3月の時点で作っておけば、今回のような闇鍋感は減らすことができたかもしれない。エルサルバドル戦までに、どこまで修正できるだろうか。


みんなが今、感じているであろう、じれったさ。「ああ、あれは成長痛だったんだな」と、言える日が来ればいい。(文・清水英斗)


写真提供:getty images

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清水 英斗

清水 英斗

サッカーライター。1979年生まれ、岐阜県下呂市出身。プレイヤー目線でサッカーを分析する独自の観点が魅力。著書に『日本サッカーを強くする観戦力』、『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』、『サッカー守備DF&GK練習メニュー 100』など。

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