W杯二次予選初戦は白星スタート。森保ジャパンの主軸が見せた『ゴールをこじ開ける力』

COLUMN清水英斗の世界基準のジャパン目線 第95回

W杯二次予選初戦は白星スタート。森保ジャパンの主軸が見せた『ゴールをこじ開ける力』

By 清水 英斗 ・ 2019.9.12

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森保ジャパンになって、いちばん大きく変わったのは何か?


いろいろな見方はあるだろうが、私は『決定力不足の解消』と見ている。攻め切る力に優れた若いアタッカーが増え、その個の力を森保監督が素直に引き出しているために、ゴール前の局面が変質してきた。


その様子は、ワールドカップ2次予選のミャンマー戦にも表れている。日本は序盤から優勢だったが、雨天と荒れたピッチの中で、質の高いパスをつなぐのは簡単ではない。固められた相手の守備ブロックをこじ開けるのに、苦労しそうな雰囲気は漂っていた。時間が進むにつれ、4年前のシンガポール戦、スコアレスドローの記憶がよみがえる。


ところが、そのこう着感をあっさりとぶち破ったのが、中島翔哉だった。


前半16分、日本はコーナーキックの流れからボールを奪い返し、左サイドで中島がボールを受けた。そこへ素早く、堂安律がインナーラップをかけ、相手を引き連れてスペースを開けると、中島はドリブルでカットイン。素早く右足を一閃し、美しい弧を描くスーパーゴールを決めた。


こじ開ける――。この一撃こそ、過去の日本代表に欠けていた要素だ。ミャンマー戦の前には、過去のワールドカップ予選の初戦において、日本がいかに苦戦を続けてきたかを思い出させる記事がYahoo!トピックスに上がった。“こじ開ける力”が足りず、日本は初戦の泥沼に引きずり込まれてきたわけだ。しかし…。


そこへ突き刺さる、中島のワールドクラスの一撃。「初戦は難しい」と連呼してきた方々を、あの顔が無垢に笑い飛ばす。明らかに今までとは違う、個の力だ。日本の夜明けぜよ! と叫びたい。


シュートのタイミングを見逃さない攻撃陣


追加点もすぐに決まった。橋本拳人のクサビをスルーした堂安が、素早くターンして大迫勇也のパスを受け、左足で持ち出してシュートへ。GKがはじいたボールを、再び堂安が受け、今度は左足で絶妙なショートクロス。フリーになった南野拓実がヘディングで叩き込み、2点目のゴールを挙げた。


これで日本の勝利は決まり。3点目を奪えればなお、スッキリした結果になったが、それでも、この試合を決定付けるには充分な2得点である。相手の守備をこじ開け、26分で試合を決めた。


森保ジャパンになってからは、「そこシュート打てよ!」と言いたくなる場面がほとんどなくなった。大迫、中島、南野、堂安は、打てるタイミングを絶対に逃さない。フィニッシュへ行く意識が、極めて高い。むしろ早打ちしすぎて、空砲気味の単調さを感じることはあるが、「そこシュート打てよ!」というフラストレーションを我々に与えることは、ほぼない。


また、打てる場面で迷わず打つため、こぼれ球への反応も、森保ジャパンは早い。あれこれとこねくり回し、パスやドリブルを探った末に打ったシュートには詰めづらいものだが、このチームは積極的に打つとわかっているので、味方も迷わず詰められるのだろう。


2点目を挙げた南野も、最初に堂安がシュートを打ったとき、いち早く相手GK前に詰めていた。そして、ボールが他の場所へこぼれる間に、南野は素早くポジションを取り直し、次のシーンに備えている。このようにDFとGKの間を行き来しながら、連続的にゴールをねらったため、相手DFは南野の姿を捉え切れなくなった。“どフリー”になったのは、決して偶然ではない。


ゴールをこじ開ける力。前線の4人に見られる、フィニッシュへの強い意志が、森保ジャパンの決定力=試合を決める力を、大きく向上させている。それはまさに過去の日本代表に不足した要素だ。


残念だったシュートミスの形


私は昨年、『日本サッカーを強くする観戦力 決定力は誤解されている』という本を出版した。なぜ、日本の決定力が不足するのか。一冊丸ごと、そのテーマで書いている。ところが出版を待つ間、新たに立ち上がった森保ジャパンのサッカーでは、私が本の中で指摘した幾つかの技術的なポイントが、すでにクリアされていた。まさかここまで劇的に変わるとは。なんて響かないタイミングで決定力をテーマにしてしまったんだと、天を仰いだものだ。


ただし、どうだろう。「決定力不足が解決した」と言い切るのは、早計かもしれない。


私が物足りなく感じたのは、伊東純也だ。後半26分に吉田麻也のロングフィードに反応し、GKとの1対1を迎えた。絶好の場面だ。しかし、伊東はボールをバウンドさせている間にGKに間合いを詰められ、苦し紛れに打ったループシュートを、あっさりキャッチされてしまった。


このシーンに強い違和感を覚えたのは、これがまさに、過去の日本の決定力不足を思い出させる場面だったからだ。DFと競り合って、確実にハンドオフする。打ちやすい高さになるように、ボールのバウンドを待つ。整えて、整えて……万全の体勢で打とうとする。その間にタイミングを逃す。そんな場面を、過去の日本代表でどれだけ見てきたことか。


ジャンプしながら打ってもいいし、トラップでシュートコースを作りに行ってもいい。しかし伊東のアクションは、タイミングを待つだけの、受け身で神経質なフィニッシュ。積極性に欠けていた。技術的なミス、偶発的なミスなら、私は特に反応しないが、この伊東の失敗は、森保ジャパン以前の日本代表を思い出させてしまう。そこが残念だった。


前線の4人は外せない


2-0になって以降、この試合は3点目の必要性が小さかったのもあり、チーム全体として、ゴールを奪いに行くマインドはやや薄れた。前半40分に吉田が相手のレイトタックルを脇腹に食らったこともあり、怪我をしないようにという気持ちが、レギュラー陣に出たようにも思える。


だからこそ、代わって出た選手には、競争を激化させるプレーを期待したが、その結果は「やっぱりあの4人は外せない」。


中島や堂安、特に堂安は移籍によってクラブが変わった直後であり、9月の招集を回避させたほうがいい、という見方もあった。しかし、この試合を見れば、全力招集した森保監督の判断は正しかったと言わざるを得ない。4人をフル招集しなければ、スコアレスドローの泥沼に巻き込まれた可能性もあるだろう。休ませるなら、少なくとも来月のモンゴル戦、タジキスタン戦で2連勝し、勝ち点を9に伸ばしてからのほうがいい。


日本の決定力の壁を乗り越えたのは、まだ数人だけ。道半ばであることを実感した。(文・清水英斗)


写真提供:getty images

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清水 英斗

清水 英斗

サッカーライター。1979年生まれ、岐阜県下呂市出身。プレイヤー目線でサッカーを分析する独自の観点が魅力。著書に『日本サッカーを強くする観戦力』、『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』、『サッカー守備DF&GK練習メニュー 100』など。

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