大黒柱・大迫をケガで欠く森保ジャパン。香川復帰に向けて、高まる期待

COLUMN清水英斗の世界基準のジャパン目線 第96回

大黒柱・大迫をケガで欠く森保ジャパン。香川復帰に向けて、高まる期待

By 清水 英斗 ・ 2019.9.29

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10月に行われるワールドカップ2次予選のモンゴル戦とタジキスタン戦は、大迫勇也を太腿の怪我で欠くことになりそうだ。無双のセンターフォワードを失った森保ジャパンは、『ノーサーコ・ゲーム』に挑まなければならない。


大迫に代わる1トップは誰か。


最有力は鈴木武蔵と永井謙佑だが、彼らはスピード豊かな飛び出し型。大迫のようなポストプレーヤーではない。彼らを1トップで起用するなら、ボールを受けて違いを生み出すトップ下と組み合わせたいところ。9月のミャンマー戦の後半では、その鈴木と組んだトップ下もまた大迫だったが、同様のプレーを南野が少し調整して実践するか、あるいは久保建英をトップ下に置くか。そんな方法が考えられる。


もしくは、現在の南野ら2列目の推進力を維持するために、鈴木や永井ではなく、大迫同様のポストプレーヤーを1トップに置く手もある。その場合は、3月の親善試合で1トップを務めた鎌田大地のほか、コパ・アメリカで出場した岡崎慎司、あるいは五輪代表から上田綺世を抜てきする選択肢も浮上するだろう。


大きく分ければ、アプローチは二つだ。


前線の仕組みを維持して、大迫の代役を探すか。もう一つは、大迫とは特徴が異なる選手を起用し、新たな仕組みを模索するか。


ただし、今はどちらも心許ない。


森保ジャパンは大迫、南野、中島翔哉、堂安律を同時起用したAチームこそ完成度は高くなったが、Bチームにはまだ、自信を持って送り出せる形がない。本来ならば控えメンバーをそのまま昇格させ、鈴木や永井と久保を組み合わせて出場させられれば一番いいが、久保はまだスタミナに不安があり、守備も物足りない。スタートから送り出せるかどうか。


香川のサプライズ招集は?


そんな折、スペイン2部のサラゴサでプレーする香川真司に対し、日本代表招集の可能性を告げるレターが届いた。今季はスペインで好調を維持し、結果も残している。1トップの鈴木や永井との組み合わせで、トップ下に置けば、計算の立つパフォーマンスが期待できる。


本来ならば、Aチームが不可能である場合、ベンチのBチームを昇格させるのが筋だが、時が熟していないと森保監督が考えるならば、香川のサプライズ招集も充分あり得る。


もともと、今までの森保ジャパンは、香川をメンバーに入れる理由が乏しかった。


すでに前線は大迫、南野、中島、堂安の4人で早々と固まった。中央はゼロトップ型の大迫に連動し、衛星型トップ下の南野が飛び出す。2人の矢印が入れ違い、相手を混乱に陥れる仕組みができていた。


一方の両翼は、左サイドの中島がボールを受けることが多く、独力でどんどん持ち運ぶ。逆に右サイドの堂安は、大迫の近くでプレーしたり、追い越して飛び出したりと、連係に磨きをかける。守備の意識も高く、チームプレーヤーだ。中島と堂安。アシンメトリーの中に、最高のバランスを見出す。


香川を入れることで生まれる変化


ざっくり言うなら、森保ジャパンは大迫と中島の個の力をベースに、南野と堂安が運動量と飛び出しでかき回す。Aプランはこれでバランスが出来上がった。


しかし、香川を起用する場合、南野とはタイプが異なるので、香川が好むライン間のスペースを消さないように、大迫は通常の1トップとしてプレーする必要があるだろう。しかし、2列目の推進力を引き出す、昨今の大迫の絶妙なゼロトップぶりを見ると、そのような役割の限定を、ややもったいなく感じてしまう。


また、中央で南野を下げて、大迫と香川が組めば、背後を突く量とスピードが落ちる。森保ジャパンの速攻スタイルを維持するなら、香川を起用するぶん、サイドは中島ではなく、伊東純也や原口元気を起用したほうがフィットするはず。


このように、一つの変化が周囲に波及する。南野を香川に代えれば、大迫や中島も変化を迫られる。そこで能力をロスする可能性が高い。そうまでして香川をAプランに組み入れる理由が、今までは乏しかった。そして、香川がBプランでベンチに座るくらいなら、より成長を期待できる若手を入れたほうがいい。久保はその典型だった。


10月のメンバー構成から見る、選手への評価


森保ジャパンでは居場所が無くなっていた香川。しかし、今回は大迫が負傷離脱する。そうなれば話は別だ。


大迫がいるからこそ、森保ジャパンでは香川と異なる2列目アタッカーが頭角を現し、それがAプランとなった。大迫がいなければ、Aプランを維持するのは困難だ。他の誰を欠くケースよりも、大迫の離脱は影響範囲が大きい。戦術面では、香川を入れる理由ができたと言える。


10月の2試合、モンゴル戦とタジキスタン戦に向けたメンバーからは、森保監督の現在の考えが透けて見えるはず。


たとえば、Bプランに位置する選手たちの現状を、どれくらい評価しているのか。もし、大迫不在の台所事情で、香川や岡崎のような経験豊かな選手を呼ぶのであれば、若手に対してあまり大きな信頼はない、ということ。逆に経験のある選手を招集しないのなら、森保監督の久保ら若手に対する信頼は相当高い、ということ。


『ノーサーコ・ゲーム』を制するのは誰か。乞うご期待。(文・清水英斗)


写真提供:getty images

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清水 英斗

清水 英斗

サッカーライター。1979年生まれ、岐阜県下呂市出身。プレイヤー目線でサッカーを分析する独自の観点が魅力。著書に『日本サッカーを強くする観戦力』、『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』、『サッカー守備DF&GK練習メニュー 100』など。

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