W杯二次予選でフルメンバー招集。3連勝で首位に立った、森保ジャパンの成果と課題

COLUMN清水英斗の世界基準のジャパン目線 第97回

W杯二次予選でフルメンバー招集。3連勝で首位に立った、森保ジャパンの成果と課題

By 清水 英斗 ・ 2019.10.18

シェアする

「この2次予選のレベルで、フルメンバーを呼ぶ必要があるのか」「移籍したばかりの選手をわざわざ呼ぶ必要はない」という意見が、ここ2カ月ほどの間、くすぶっている。正解のある議論ではないので、それも一理あると思う。


ただ、個人的には森保監督の判断を支持する。フルメンバーを招集したほうがいい。


その理由の一つは、月並みだが、W杯予選は絶対に落とせないこと。フルメンバーを招集しなければ、個だけでなくチームの連係が落ちる。万が一にも予選で失敗すれば、その先は何もないのだから、過剰なリスクを受け入れるのは簡単ではない。


今回のタジキスタン戦を経験した後なら、実感できるのではないか。日本はフルメンバーでなければ、バーレーンに敗れたイランのように敗戦を喫した可能性もあったし、思い返せばアウェーのミャンマー戦も、負けはないが、引き分けはあり得た。首位のみが自動突破の2次予選。特にこの序盤は、毎試合勝つことが至上命題だ。


連携で苦労したことの成果


そして理由の二つめは、代表チームの活動時間が限られていること。前述したようにW杯予選は結果を得ることが最優先だが、それだけではなく、選手が共に代表チームとして活動し、お互いの連係やチームの誇りを高めることも大事なステップだ。代表チームは初めから活動期間が少ないのに、それをクラブ事情で減らすのは、かなりのリスクを伴う。


タジキスタン戦で鎌田大地が四苦八苦したように、たとえクラブで活躍していても、代表の戦術の中で輝くかどうかは別の話だ。その連係を高めるためには、やはり継続的に招集し、共に活動する時間を増やさなければならない。


鎌田がクラブとは異なるポジションで起用されたことを指摘する人もいるが、それは代表では当たり前のこと。最高の11人を便利に、相手にも合わせて、ポジション通りに過不足なく集められるなら、監督は何も苦労しない。南野と共に試行錯誤したタジキスタン戦は、鎌田にとっても、森保ジャパンにとっても重要な経験になったはず。それぞれの意外な面が見えたり、できないことが見えたり、お互いをわかり合う時間になったのではないか。


フルメンバーで競争することの意味


やはりチームスポーツは、チームとしての結束力が最終的にモノを言う。ラグビー日本代表ほどの合宿期間を取るのは不可能だとしても、代表チームが共に過ごす時間は、できるだけ確保したい。ただでさえ、少ないのだから。


また、チームの結束と同時に、日本代表は競争の場でなければならない。スカパー!の『スカサカ! 激論』で、元日本代表の岩政大樹さんが語っていたが、代表に呼ばれた選手は、ここで試合に出るために競争し、常にギラギラと燃えている。強烈な刺激もある。岩政さん自身がそうだったように。


その競争の場は、フルメンバーを集めてこそ意味がある。怪我は仕方がないが、クラブ事情で未招集とされる“特別枠”の選手がいれば、代表チームは目の前にライバルが不在の競争になってしまう。それで誰が本気になれるのか。選手たちには正々堂々、ポジション争いをさせなければならない。それでこそ、日本代表は成長する。


継続的な招集は必要


そもそもクラブ事情で招集外にしたとして、その選手が必ずクラブでレギュラーを獲る保証もない。仮にレギュラーになり、大活躍し、クラブではタイトルを獲るほどの選手になったとしても、それで連係の積み重ねを減らした日本代表にやって来て、機能するかどうかは別の話だ。リオネル・メッシも、代表では今ひとつなのだから。


個の成長は大事だが、代表チームの枠組みで機能するか。そこにフィットさせるために、継続的な招集はやはり必要だ。


また、「招集したのなら起用するべき」という論もあるが、これにも首を傾げる。そんな基準で起用してしまえば、競争の場が崩れる。親善試合ならば、テストやアピールの場として、全員を起用する方針でいいと思うが、予選や公式大会はピッチに立つ11人に選ばれるかどうか、各自が必死に努力、アピールして、その権利を得るべきだ。アジアカップもそうだった。それは今までの日本代表選手が脈々と受け継いできた誇りであり、それを勝ち取る競争の場として大事にしなければならない。


ただし、そうした競争の原理を踏まえても、久保建英は起用する価値があったと思う。実際、モンゴル戦では酒井宏樹に負傷退場のアクシデントがなければ、投入されていたはず。


一方、タジキスタン戦で投入が遅くなったのは、根本的には彼の守備力に対する不安だろう。少なくとも筆者はこれまでの試合を見て、久保の守備とスタミナには不安を覚えている。タジキスタン戦は決して楽な試合ではなかったし、2-0とした後の逃げ切りなら、久保よりも浅野拓磨をチョイスした判断もわからなくはない。左サイド起用には驚いたが。同様に3-0として余裕ができるまで久保を投入しなかったことも、わからなくはない。


おそらく日本が先制を許せば、久保の投入はもっと早く、最初の交代カードになっただろう。だが、彼を必要とする展開ではなかった。今回の数分にとどまった出場時間は、久保の現在の能力と試合展開が導いたものであり、それを「招集したのなら起用しろ」は筋が違うと思う。


そんなわけで、森保監督のマネージメントには概ね納得している。ただ、失敗がないわけではなく、たとえば冨安健洋の負傷を防げなかったことは大失策だった。酒井のアクシデントが重なったとはいえ、若い彼をもう少しコントロールできなかったのか。6-0の状況、そして試合前に腿の張りを訴えていたのだから。これは大失策。


ただ、それだけですべてが否定されるわけでもない。大筋ではマネージメントに納得している。フルメンバーを招集しているのは、当然の判断だ。


今後のスケジュールと強化方針は?


とはいえ、物事はバランスである。


冒頭で「一理ある」と書いたように、選手がクラブで良い日常を過ごすことも、もちろん考慮しなければならない。そのほうが個人は成長するし、コンディションが良い状態で代表に来てくれる。だからこそ、代表はクラブと駆け引きをする必要がある。


ここで年間スケジュールを見ると、代表の活動月は、9月、10月、11月、3月、6月と大まかに決まっている。代表は活動が少ないだけでなく、その活動期間にすき間が多く、チームを継続的に積み重ねることが難しいのが、積年の課題だ。ザッケローニを思い返すと、彼は招集のたびに「代表でやっていたことを忘れてしまう」と、復習の必要性を説いていた。


その意味では、9月から11月の連続した3カ月間は、代表チームが毎月集まって継続的に強化を行う絶好の機会でもある。この時期が大事なのは、クラブの話だけではない。


12月のE-1選手権は国内組で参加


一方、3月に目を移すと、代表スケジュールでは離れ小島のような月になっている。ここをどう考えるか。


今年で言えば、12月はE-1選手権があり、日本代表は国内組で戦うことが決まっている。そこでアピールに成功した国内組と、現状のサブ組、あるいはクラブでの立ち位置に問題のない主力を集め、3月の2次予選(モンゴル戦&ミャンマー戦)を乗り切る。


9月~11月はレギュラー争いをしながら勝ち点を稼ぎ、順位に余裕ができたら、3月は親善試合と似た位置づけで、ラージグループまではいかないが、やや大きめのグループで争いながら2次予選突破を決める。そんな方針も考えられるだろう。東京五輪のオーバーエイジに呼びたい選手がいれば、この3月で招集外とし、クラブに配慮することもできる。


物事はバランス。すべてを理想的には進められない。代表や2次予選のスケジュールを踏まえれば、この方法がベターではないか。とはいえ、来月のキルギス戦を落とせば、その余裕も無くなる。まずは必勝。勝ち点を12に伸ばせば、今後はさまざまな選択肢が広がるだろう。(文・清水英斗)


写真提供:getty images

シェアする
清水 英斗

清水 英斗

サッカーライター。1979年生まれ、岐阜県下呂市出身。プレイヤー目線でサッカーを分析する独自の観点が魅力。著書に『日本サッカーを強くする観戦力』、『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』、『サッカー守備DF&GK練習メニュー 100』など。

このコラムの他の記事