権田の安定したプレーで難敵に勝利。キルギスと決定的な差があった、GKのパフォーマンス

COLUMN清水英斗の世界基準のジャパン目線 第99回

権田の安定したプレーで難敵に勝利。キルギスと決定的な差があった、GKのパフォーマンス

By 清水 英斗 ・ 2019.11.16

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アウェーのピッチ。その荒れた芝に、日本の選手がズルッと足を滑らせるなか、キルギスの選手は鋭い切り返しを披露していく。地の利はホームチームにあった。


また、試合の2日前に全員が合流した日本代表に対し、キルギスは試合の5日前、国際マッチデーではない11月9日にウズベキスタンと親善試合を行い、3バックを組んで入念な準備を行っている。戦術調整、コンディション面でも差は生じた。


さらに日本代表はU-22の活動で、堂安律や久保建英を欠き、冨安健洋も負傷で欠場した。おそらく負傷がなくても、冨安はU-22に招集されただろう。コンディション不足と判断された大迫勇也も招集されておらず、戦力的に言えば、日本はベストでは無かった。それはセンターフォワードのビタリー・ルクスを負傷で欠いたキルギスにも言えることだが、欠いた量で言えば、日本のほうが多かったかもしれない。


このワールドカップ2次予選、アウェーのキルギス戦はそうした条件下で行われたとはいえ、それでも思った以上に苦戦したというのが正直な感想だ。日本は2-0で勝ったが、内容的には五分。キルギスは昨年に日本で行われた親善試合にはいなかった、8番のグルジギト・アリクロフといった優れた若手が台頭し、また、2番のバレリー・キチンのような新たな選手も加わっていた。日本は彼らへの対応に手を焼き、苦戦の原因となった。


だとすれば、この試合はいったい、どこで2点の差が付いたのだろうか。


それはGKだろう。権田修一はタジキスタン戦に続き、このキルギス戦でも素晴らしいパフォーマンスを披露した。この2試合はクリーンシートで終わったことが若干不思議に思える内容ではあったが、最後は権田がゴールに鍵をかけた。


GKの判断ミスでPKを与えたキルギス


逆にキルギスはどうだったか。この日本戦に際して、キルギスはこれまでスタメンを張ってきたベテランGK、1番のパベル・マティアシュではなく、予想に反して13番のクトマン・カディルベコフを送り出している。事情はわからないが、結果的にはGKのミス絡みで2失点を喫することになった。


このGKカディルベコフは積極的に前へ出るタイプで、いわば『川島永嗣型』のGKだ。0-0で推移した時間帯も、ディフェンスラインの裏をカバーする意識が強く、積極的なスペースディフェンスが効いていた。


ところが、それが裏目に出たのが前半40分。伊東純也のコントロールミスで流れたボールに、持ち味を生かして南野拓実が鋭く抜け出すと、そこへ飛び出したGKカディルベコフが南野の足を引っ掛け、PKを与えてしまった。それまでにカディルベコフが前へ出てクリアし、得た利益を考えれば、このシーンだけをあげつらうのはフェアではないが、それでもPKを与えたのがペナルティエリアの角という、もう一度守備のチャンスが訪れる場所であることを踏まえれば、ここでPKを与えたのは勿体ない。そう考えざるを得ない判断だった。


守備の連携に向上が見られる日本


プレースタイルでいえば、権田の場合は前へ出ず、ゴールラインに留まる傾向が強い。後半23分には南野のボールロストからカウンターを食らい、ミルラン・ムルザエフに決定的なターンシュートを打たれたが、権田がセーブしたボールがペナルティエリアの角へこぼれたとき、権田は出るのをやめ、DFに任せてゴールに留まった。この辺りの判断はGKによって特徴が異なる。


権田は自分の身体でタイミング良く面を作ってセーブするのがうまく、シュートを待ち受けて防ぐタイプのGKだ。川島なら、もう一歩、半歩でも間合いを詰め、アグレッシブに前方向にセーブする場面でも、権田の場合はゴールライン近くで横移動し、身体で大きな面を作って待ち受ける判断が多い。両者は正反対のプレースタイルといえる。


この2次予選、特にアウェーでは日本もリスクを避けてプレーする。相手に攻め込まれたら、ペナルティエリアの中にも入ってスペースを埋め、慎重にディフェンスを行っている。そうやってDFが狭めたシュートコースに連動し、残りのコースは権田が面を作ってセーブする。この多面的な壁の作り方について、日本は連係が向上している。


もしも、日本がもっと高いラインを保ってプレーするなら、権田のライン背後へのカバー対応は、もう少し問題になったのではないか。それは初期の森保ジャパンにおいて、権田のプレーから露呈した不安でもある。しかし、今の予選仕様、アウェー仕様の慎重な守備ならば、待ち受け型の権田との相性は良い。


GKの質によってついた2点差


そうやって自身の持ち味を生かし、高いクオリティーを発揮した権田に対し、キルギスは2失点目の場面でも、GKが先読みして逆に動き、フリーキックを食らってしまった。


原口のフリーキックは非常に味のあるクオリティーだった。中村俊輔を彷彿とさせる、こすり上げて三塁線を抜くような蹴り方。ジャンプした壁に隠れるボールの初期軌道。そして、GKの手前で絶妙にバウンドするボール。見事だった。


だが、相手GKが先読みしすぎた面もある。逆にそうやって敏感に反応するなら、壁を跳ばせるべきではなかった。かえって壁が邪魔になったし、原口もそれをうまく利用するような蹴り方だった。最終的にはGKのパフォーマンスについて、日本とキルギスには決定的な差があった。


五分の試合でも、GKのパフォーマンスにより、2点もの差がついてしまう。その恐ろしいほどの責任を背負うのがGKの宿命でもある。このポジションに対する注目やリスペクトは、より高まって然るべきだ。もっとも、前回のタジキスタン戦後の『スカサカライブ』で、うかつにも権田のプレーに触れるのを失念した筆者に言えることではないかもしれないが。(文・清水英斗)


写真提供:getty images

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清水 英斗

清水 英斗

サッカーライター。1979年生まれ、岐阜県下呂市出身。プレイヤー目線でサッカーを分析する独自の観点が魅力。著書に『日本サッカーを強くする観戦力』、『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』、『サッカー守備DF&GK練習メニュー 100』など。

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