なぜ大迫は、半端ない存在になれたのか? 上田綺世に必要な、ゴールを向いたポストプレーの意識

COLUMN清水英斗の世界基準のジャパン目線 第101回

なぜ大迫は、半端ない存在になれたのか? 上田綺世に必要な、ゴールを向いたポストプレーの意識

By 清水 英斗 ・ 2019.12.12

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ポストプレーでボールを配り、守備も献身的に走り、時にはドリブルで仕掛ける。日本の先制場面ではポストに入り、裏へ抜け出した森島司へおしゃれな足裏パスで、流れる連係プレーの基点になった。6月のコパ・アメリカに続き、E-1選手権・中国戦の上田綺世は、なかなか器用な選手に見えたかもしれない。


しかし、そんなふうに見えること自体がサプライズだ。彼は本来、生粋のストライカーである。汗をかくFWではない。点を獲るFWだ。一瞬の駆け引きで飛び出したり、クロスからヘディングで決めたり。ファー詰め最高、こぼれ球上等。「ごっつぁんゴール」を喜び勇んで獲りに行く、ザ・点取り屋である。


五輪代表では彼の特徴は随所に見られるが、このA代表では影を潜めてしまった。ポストプレーをこなしたり、サイドに流れて基点になったりと、多々の汗をかく間に、上田自身がゴールから離れてしまう。そしてさばいた後、もう一度ゴール前へ入ろうとしても、すでに味方が飛び込んでいるため、スペースがない。


味方のためのプレーを続け、ゴールから離れていく


2シャドーに鈴木武蔵が入ったことも大きな関係がある。1トップが空けたスペースへ、1.5列目が飛び出す。大迫勇也と南野拓実の関係に見られるように、森保ジャパンはこの連係を好む。先制シーンは上田がポストプレーで相手センターバックを釣り出し、そのスペースへ森島と鈴木が飛び出してゴールを挙げた。どうしても1トップの上田は、飛び出し支援の役回りになりがちだ。


とはいえ、左サイドでは上田はポストプレーばかりではなく、森島が外に流れたり、間で受けたり、あるいは佐々木翔が上がってきたりと、柔軟な形はできていた。しかし、右サイドはそうはいかない。前半に機能した左サイドへの中国の警戒を見越したのか、後半の日本は、攻撃の目先を右サイドに変えた。しかし、如何せん鈴木は森島とは異なり、ほとんど足元でボールを受けられない。


後半の序盤にそうしたミス、というよりブレーキがかかり始めると、日本はやり方を変えた。鈴木は足元ではなく、裏へ走って左センターバックの2番リー・アンを引きつけ、空けたバイタルエリアに上田が寄る。そこへ橋岡大樹から斜めにパスが入り、上田はポストプレー。……こうしてゴール前へ飛び込むプレーは、鈴木らに先を越され、上田はどんどんゴールから離れるのであった。


ザックジャパンの大迫との共通点


組織から要求されるプレーと、個人が出したい特徴。これらが乖離し、フラストレーションの元になるのは、サッカーではよくあることだ。というより、それこそがサッカーかもしれない。


そのバランスを、どう取ればいいのだろうか。


思い返せばザックジャパンの頃の大迫勇也は、今の上田と似たような役回りだった。2列目のスキルを生かすためにポストプレーを厳命され、ボールを受けて、さばいて、受けて、さばいて。安定したプレーだった。しかし、半端ないプレーはほとんど見られず、大迫半端だった。


あの頃の大迫と、今の大迫。決定的に違うのは何だろう?


僕はゴールを向けるかどうか、だと思う。当時の大迫は相手を背負うことばかりで、ゴールを向いたプレーは少なかった。しかし今の大迫は、サッと相手から離れ、トラップしながらゴールを向いたり、そこからもう一度真ん中に当てて自分で侵入したり、時には一発でスルーパスを通したり、あるいは背負った相手に入れ替わりをねらうこともある。


基本的に大迫はポストに入った後も、常にゴールを意識してプレーする。そういうボールの受け方をするようになった。それが大きな違いだ。


ゴール方向を向けていない上田


逆に上田はポストに入ったとき、身体がほとんどゴール方向へ開けていない。橋岡から来たボールを左足でトラップできれば、それだけで視界は開けるが、あまりそうした試みは無かった。そのままサイドへさばくか、バックパスか、横パスか。しかし、それではゴール前の美味しいスペースは、味方に使われたままだ。その味方へ、もう一度縦パスを当て、自分で追い越して行けばいい。その多彩さがあったほうが、相手も戸惑うだろう。


自分がゴールから離れた状況のままで攻撃を終わらせず、もう一度かき回す。大迫のように“もうひと崩し”のバリエーションがあれば、上田は1トップの役回りの中でも、自分が生きる場所を見つけられるはずだ。


組織と個人のバランスをどう取るか。ポストプレーに忙殺されないためには何が必要なのか。


それは、もっとポストプレーが上手くなることだ。ゴール方向を意識したポストプレー、これに尽きる。いつ、いかなる状況でもゴールを意識できる技術、身体の使い方を身につける。


ポストプレーが上達すれば、チームから要求されるタスクに脳みそを握られる感覚も無くなるだろう。その結果、2次攻撃やこぼれ球に対する反応も鋭さを増す。たとえば後半24分、日本の2次攻撃から遠藤渓太が左足でワンタッチクロスを入れたような場面でも、今度こそ上田は反応できるはず。


個人か、チームか。このハイレベルな世界では、突き抜けた先で、結果としてバランスを取るしかない。


その道は、かつて誰かが通った道。自分らしさを出すために、上田は大迫のプレーを穴があくほど見るといいのではないか。(文・清水英斗)


写真提供:getty images

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清水 英斗

清水 英斗

サッカーライター。1979年生まれ、岐阜県下呂市出身。プレイヤー目線でサッカーを分析する独自の観点が魅力。著書に『日本サッカーを強くする観戦力』、『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』、『サッカー守備DF&GK練習メニュー 100』など。

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