評価しづらい2019年の森保ジャパン。2020年は監督の力が問われる一年に

COLUMN清水英斗の世界基準のジャパン目線 第102回

評価しづらい2019年の森保ジャパン。2020年は監督の力が問われる一年に

By 清水 英斗 ・ 2019.12.28

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2019年の森保ジャパンは、1月のアジアカップから始まった。


前年の秋に行われたコロンビア戦やウルグアイ戦など、チーム発足後の5つの親善試合では、“全員起用”が一つの方針だった。アディショナルタイムの数分とかケチなことは言わず、招集した選手全員にたっぷりと出場時間を与え、多くの選手を試す。


ロシアワールドカップで活躍した主力選手も、当初は招集なし。森保監督は横一線のガラガラポンで新チームを作り始め、その後、吉田麻也、大迫勇也、柴崎岳らをメンバーに加えた。


ところが一転、アジアカップ本番に入ると、レギュラーをガチガチに固定。大迫の怪我などアクシデントが起きない限りは、毎試合同じメンバーで臨む。対戦相手が誰でも、どんなスタイルでも、関係なし。全員起用はどこへいった。「この試合はここが肝になるから、この選手のほうが――」とか、真面目にプレビューするほうが馬鹿を見た。そして消化試合になったグループリーグ3戦目は、スタメン総入れ替えで主力組は総休み。AチームとBチームの序列は、驚くほど明確だった。


このアジアカップは中島翔哉を欠いたこともあり、序盤は今ひとつのAチームだったが、試合を重ねる毎に、尻上がりに連係を高めた。その集大成となったのが準決勝のイラン戦だ。アジア最強と目された相手に日本は3-0で会心の勝利を収めた。……ひとまず、ここで終わっておく。


初招集選手を積極起用


アジアカップを終えた森保ジャパンは、3月の親善試合でコロンビアとボリビアを迎え、再びガラガラポン。吉田や大迫、酒井宏樹や長友佑都など経験のある主力を休ませ、鎌田大地、鈴木武蔵、橋本拳人、畠中槙之輔など新たなメンバーを招集。やはり彼らは全員がドーンと起用された。


親善試合でガラガラポン。公式大会でフィックス。一定のリズムを刻む森保式マネージメント。


もちろん、親善試合で新戦力を探すのは代表強化としては当たり前の手法だが、森保監督はより極端に進めている。


過去のケースであれば、新しく招集された選手は、そう簡単に出場機会を得られないのが常だった。出場したとしても、終了間際の数分のみ。代表の戦術を理解するまで、数回の招集で下積みをしなければならなかった。


ところが、森保監督はお構いなしにスタメン起用する。細かい指示も戦術もなく、ドーンとお前の持ち味を出せと。「戦術はお前の中にある」と言わんばかり。そして、選手の様子を見ながら、「この個は効く」「この連係は使える」と部品を拾い集めていく。一般的なチームよりも設計図が緩く、素材出発の造形的なチーム作りをしている。


チーム作りは第2フェーズに入る


その後、6月の親善試合、トリニダード・トバゴ戦とエルサルバドル戦は、やや趣が変わった。初めての3バック導入だ。それまで親善試合はガラガラポンの方針だったが、この2試合は3バックとGKを固定。過去の試合とは異なり、ドーンとは出場時間が与えられないメンバーが数名いた。


新たなシステムにトライしつつ、人もガラガラポンでは難しい。この6月は全員起用を少しだけセーブし、バランスを取った。チーム作りが第2フェーズに入ったことの証でもある。


その後、9月からワールドカップ2次予選が始まると、再びアジアカップの固定メンバーを中心に据えた。苦しんだ試合もあったが、とりあえず4連勝。ミャンマー戦では橋本拳人をスタメン起用し、モンゴル戦では大迫の負傷もあり、永井謙佑と伊東純也を抜てき。タジキスタン戦では鎌田大地と植田直通をスタメンで起用した。


試合ごとに新戦力を加えた格好だが、大迫や冨安健洋の負傷が無く、遠藤航がクラブで絶好調であれば、4試合共にアジアカップのメンバーが並んだ可能性も高い。森保監督はトライさせる親善試合と、結果を取るべき公式戦の間に、驚くほど明確に線を引く。リスクは取らない。


2019年は公式戦だけを振り返れば、アジアカップは準優勝、ワールドカップ2次予選は全勝だ。コパ・アメリカやE-1選手権を、実質的に親善大会とすれば、取るべき結果は上々。


問題は未来の話になる。


2020年は東京五輪と、ワールドカップ最終予選が行われる。アジアカップや2次予選とは比較にならないプレッシャーが待っている。


大きなプレッシャーがかかる、2020年の日本代表


五輪の結果自体もさることながら、一つ気になるのは、8月の東京五輪と9月から始まる最終予選に、間がないことだ。つまり、森保監督が“ガラガラポン”の親善試合を行う暇がなく、これまでのリズムが狂ってしまう。


4年前のハリルジャパンを思い返すと、最終予選の初戦であるUAE戦は、リオ五輪で活躍した大島僚太を抜てきしたが、ものの見事にすべった。五輪後に親善試合を挟むことができればいいが、スケジュールがそれを許さない。リスクを好むハリルホジッチは、その後も遠藤や久保裕也、井手口陽介など五輪世代の抜てきを続けたが、最初のつまずきが響き、苦しい最終予選になった。


今回はどうか。そこで効いてくるのが、コパ・アメリカやE-1選手権だ。森保監督はA代表と五輪世代をミックスさせて戦った。すでに五輪とA代表のガラガラポンは始まっている。結果は出ずに批判を受けたが、仮に最終予選の初戦で五輪世代を起用したとしても、今回は“いきなり”ではない。大島の悲劇は回避できるはず。


おそらく、東京五輪の結果には、森保監督の進退がかかってくるだろう。ただ、五輪が悪い結果に終わったとしても、個人的には最終予選の3試合目くらいまでは様子を見たほうがいいと考えている。つまり、2019年の種まきは五輪だけでなく、最終予選に通じるものだからだ。兼任のメリットがきちんと出るかどうか、五輪と最終予選の両方でしっかりと見定めたほうがいい。逆にそこまで続けないと、兼任の評価はできない。2020年は答えが出るだろう。


相手に研究されたときに、どう対応する?


また、兼任以外にもメリット、デメリットに言及するべき要素はある。それ前述した森保監督の選手主導マネージメントの弱点が、より表面化する可能性だ。これは多くの人が感じているかもしれない。


現状、森保監督からは細かい戦術の指示が少なく、ゾーンやマンツーマンも「両方必要だから柔軟に」といった具合で選手の対応力に任せている。指示の内容も「こうしろ、ああしろ」ではなく、「こうしたらどうか」という問いかけ式だ。選手の当事者意識が高まり、コミュニケーションが活発になるメリットは大きい。


しかし、そうやって選手間の連係が高まれば高まるほど、答えが一つに収束し、対戦相手に研究されやすくなる側面もある。その典型的な試合が、アジアカップ決勝のカタール戦、W杯2次予選のキルギス戦だった。


たとえば、長友の箇所で問題を抱えている。パスの出どころは? 真反対のエリアだ。長友から伊東純也にコーチングできるわけではない。選手が影響を及ぼせる範囲は、基本的には自分と隣り合う選手まで。どんなに連係が高まっても、選手1人では解決できない問題が必ずある。


公式戦の森保ジャパンは、ガラガラポンではなく固定メンバーになる。試合を重ねれば重ねるほど、相手に研究される。その割に試合中の対応も遅い。今後、対戦相手のレベルが上がり、現代サッカーが分析と采配の質を上げる中で、生き残ることができるのか。


カタールやキルギス、E-1の韓国のように、日本代表を研究した上で変化を付けられると非常に脆い。これは森保ジャパン最大の弱点だ。選手主導と対応力だけではマッチプランが狭く、対応のスピードも遅い。今後はその弱点を埋めるべく、監督の関わり方が問われることになる。これは現状、うまくいく裏付けは何もない。


率直に言って、ここまでの森保ジャパンは、良いとも悪いとも評価しづらい。種まきや成長のためとエクスキューズが付けば、何も言えないからだ。しかし、2020年は東京五輪や最終予選が待っている。いよいよ本番。侃々諤々、熱く、激しく、本気のサッカートークが可能になるだろう。


良いお年を。来年もどうぞよろしく。(文・清水英斗)



写真提供:getty images

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清水 英斗

清水 英斗

サッカーライター。1979年生まれ、岐阜県下呂市出身。プレイヤー目線でサッカーを分析する独自の観点が魅力。著書に『日本サッカーを強くする観戦力』、『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』、『サッカー守備DF&GK練習メニュー 100』など。

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