AFC U-23選手権敗退。チームに求められる課題の共有と学ぶ仕組みの必要性

COLUMN清水英斗の世界基準のジャパン目線 第103回

AFC U-23選手権敗退。チームに求められる課題の共有と学ぶ仕組みの必要性

By 清水 英斗 ・ 2020.1.26

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“そうは言っても”、AFC U-23選手権敗退である。


オフ期のJリーグ組でほぼ構成されたU-23日本代表。真冬の日本を離れ、常夏のタイで大会に臨んだ。シーズンの蓄積疲労に加えて、気候の違いも大きく、コンディショニングは困難だった。


しかし、“そうは言っても”、アジアでグループステージ敗退は受け入れがたい。


東京五輪世代は年末にも、E-1選手権やU-22ジャマイカ戦の活動機会があった。しかし、招集メンバーは毎回違う。Jリーグ組がオフを取らなければならないこと、また、年末でなければ招集できないU-23海外組を呼びたい事情もあり、AFC U-23選手権を含めた3回の機会では、招集されたメンバーが一貫性を得ることはなかった。


一方、予選突破をかけたサウジアラビアなどの対戦国は、もっと前から準備を行っており、この大会に向けた完成度には大きな差があった。


しかし、“そうは言っても”、東京五輪で金メダルを目標に掲げるチームが、未勝利で敗退は受け入れがたい。


一体感の難しさもある。日本は五輪代表でさえ、すでに主力が海外組に移行しつつある。U-23選手権を戦ったのは、ほぼ全員が当落線上のライバルだ。そこで「チームになれ」と要求するのは難しかったはず。その雰囲気は、敗退後の選手コメントにも何となく漂っている。しかし、“そうは言っても……”。


未整備だった戦術と連携不足


今回のAFC U-23選手権、グループステージ敗退を一言で総括するなら、“そうは言っても”だ。


そして個人的には『そうは言っても大賞』を、目に余るほどの連係不足に贈りたい。切り離された11個の1対1が展開されているようで、チームスポーツ足るサッカーは存在しなかった。この発掘フェーズでは、完璧なチーム戦術など求められないが、“そうは言っても”、2~3人のグループ戦術に至るまで、あまりにも未整備だった。


「(集まるたびに)毎回イチから」「ここで経験したことは23人にしかわからない」「次に選ばれた選手に伝えなければいけない」といった反省が、選手から口々に出てくる。チームがぶつ切りであることは、連係不足の主な原因だ。それは既述のように仕方がない面もあるが、仕方ないで済ませていいものか。


急激にU-23欧州組が増え、ラージグループは複雑になった。物理的に、ぶつ切りになることはやむを得ない。しかし知識的、心理的に、チームの強化ステップを共有することは可能ではないか。


未招集の選手も学べる仕組みづくりを


たとえばJリーグを担当する審判員のグループでは、判定内容や起きた事象について、審判同士がオンラインで共有するシステムとして『JRSS』(J.league Referee Support System)が使用されている。試合で何らかの誤審、あるいは判定を下す流れにおいて象徴的な事例があったとき、それを担当審判の経験で終わらせず、全審判が共有し、学ぶ仕組みを作っている。


同じようなシステムを、代表のラージグループが用いることはできないか。


たとえば試合の分析映像、監督の指示や指摘、ロッカールームの映像(試合前とハーフタイム、試合後)などを、ラージグループの選手限定で共有する。今、チームで何が起きているのか。修正点をどう話し合っているのか。監督は何を伝えているのか。チームはどんな雰囲気なのか。


その強化ステップを、当該試合で招集外になった選手を含め、全員が共有する。気になったことは、招集外からでも意見する。他人面しない、させない。常に参加させる。現代の若い選手なら、そういうプライベートSNSのようなシステムにすぐに順応するのではないか。


細かい修正点も共有する。つまり、同じ戦術的ミスを犯したら、全員が“2回目”とみなすということ。強化のスピードを上げ、代表の時間不足という根本的な問題を少しでも解決していく。


もちろん、知識レベルの共有と、実践フェーズの間に大きな隔たりがあるのは百も承知だが、本当の狙いはそこではない。


代表チームに必要な課題の共有


特にこのU-23世代は、「コミュニケーションが足りない」とよく言われるが、コミュニケーションを高めるには量と質が必要だ。量のほうは気持ちや姿勢で解決できるが、質はそうもいかない。何を話すべきか、どう話し合うべきか。常に課題を共有することで、コミュニケーションの質を高める。


「初めまして」「久しぶり」で始まる関係を、「初めまして。いつも映像で見てるよ」「久しぶり。この前の試合で監督が言っていたことだけど…」で始めることができる。そうやって“ぶつ切り問題”を、少しでも好転させていく。


兼任、ラージグループ、急増する海外組、難しい日程……。


昨年11月からの3カ月間、五輪代表とA代表の両方を見て、重要な課題は『共有』であると感じた。それが物理的に不可能であるなら、知識、心理レベルで行うシステムを考えるのも一つの方法ではないか。


さまざまな事情と戦略があり、この3カ月間はいちばん結果を出しづらい時期だったのは理解できる。しかし、“そうは言っても”、仕方ないで終わらせれば進歩がない。JFA(日本サッカー協会)の具体的な改善アプローチを待ちたい。(文・清水英斗)


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清水 英斗

清水 英斗

サッカーライター。1979年生まれ、岐阜県下呂市出身。プレイヤー目線でサッカーを分析する独自の観点が魅力。著書に『日本サッカーを強くする観戦力』、『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』、『サッカー守備DF&GK練習メニュー 100』など。

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