森保監督続投は兼任メリットを考えれば当然。一方で気になる、情報発信の少なさ

COLUMN清水英斗の世界基準のジャパン目線 第104回

森保監督続投は兼任メリットを考えれば当然。一方で気になる、情報発信の少なさ

By 清水 英斗 ・ 2020.2.1

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ハンガリーにはこんな諺があるとか、ないとか。


辞めるは恥だが役に立つ。


後ろ向きな選択だっていいじゃないか。恥ずかしい辞め方だったとしても、日本代表が生き抜くことのほうが大切で、その点においては異論も反論も認めない。オブジェクションしている場合じゃない!


……と多くのファンは望んでいるだろう。


しかし、森保一監督が「辞め恥」の主人公になることはなさそう。キャラが正反対だ。頑固で信念が強く、批判やプレッシャーには滅法強い。昨今これだけの逆風にさらされながら、誰に対するたった一つの恨み節や愚痴すら出てこないのは驚嘆に値する。人としての芯の強さを感じるし、ある意味、人間ドラマにしたら、これほどつまらないキャラクターはない。自分から辞める確率は現状ほぼゼロだ。


技術委員会でも改めて、森保監督の続投が確認された。


『兼任』メリットを生かすことを前提にするなら、当然の判断だろう。兼任はこれからが本番。3月以降の五輪代表には、堂安律、冨安健洋、久保建英といったU-23欧州組、さらにオーバーエイジを含めたA代表が徐々に加わってくる。彼らは森保監督と共に経験を積んだ選手たちであり、『兼任』のメリットが五輪代表に生きるのは、これからが本番だ。


五輪優先でA代表を犠牲にするリスクを負いながら、自国開催の五輪に向けて準備していく。その成果は確認したいので、続投という結論自体に反対ではない。


絵に描いた餅になる危険性


しかし、その根拠としてJFA(日本サッカー協会)や技術委員会から出てくる情報は、相変わらず貧弱だった。


関塚隆技術委員長は「方向性は間違っていない」と戦略の正しさをアピールしているが、今問題になっているのは、そこではないと思う。


兼任体制を組んだこと、コパ・アメリカやE-1選手権で世代を融合させた戦略は、ねらいがよく見える。問題は、その戦略が正しいか間違っているかではなく、“絵に描いた餅”になる危険性だ。


招集して一緒にプレーさせる=融合ではないはず。触媒はどうだったのか。融合編成のメリットを引き出す指導、采配は行われたのか。選手の主体性に任せ、能力を引き出す、(前日本代表監督の)西野流マネージメントの継承は、実際にどう機能しているのか。デメリットは無かったのか。実践フェーズの反省が聞こえてこない。


そもそも兼任体制や編成方針については、技術委員会も関わる部分であり、「方向性は間違っていない」というのは自己弁護に過ぎない。今の段階で戦略が合っているか間違っているかなど、判断できないし、それを実践する森保監督の手腕をどう評価しているのか。何を問題と捉えているのか、それをサポートする案は出ているのか。こうした話はほぼ出てこない。



遠くに感じる日本代表



様々な批判がある中、具体的な反省も改善案も出さず、「応援してほしい」は虫が良すぎる。日本代表の看板を背負うのは、何もサッカーだけではない。最小限の言葉で、事なかれ的に沈静化を図ると、ファンの熱ごと沈静化していく。Jクラブの場合、もっと発信を多く行うので、ファンもコミュニケーションを取れる相手として捉えているはず。その距離感に慣れてくると、密室気質の代表はとても遠く、「They(彼ら)」に感じてしまうのではないか。


もちろん、発信できないことはあって。


いちばん言うとまずいのは、大会戦略だろう。コパ・アメリカはほぼU-22世代で臨み、現地で「大会軽視」と批判にさらされた。E-1選手権では、国内組を呼べる状態にもかかわらず、U-22世代を増やして臨んだ。この大会ではあまり批判を受けなかったが。やはり「大会軽視」とそしりを受けても仕方ない。


そして次の3月の代表活動は、報道によると、ワールドカップ2次予選から森保監督やオーバーエイジ数人が回避し、五輪代表の親善試合に合流する案が出ているようだ。日本の強化事情としては理に適っているが、AFC(アジアサッカー連盟)側はどう見るか。波風が立つ可能性も否定できない。あまり大声で言えないこともある。


とはいえ、現状はあまりに情報が少ない。技術委員会から続投の根拠も示されない以上、ファンにとっての代表はコミュニケーションを取れない相手、どんどん遠い存在になっていく。


今、森保監督に向けられている批判の嵐を、技術委員会も少し引き受けてほしい。情報を隠して監督を擁護するのではなく、発信してアグレッシブに守る。黙っていれば、正誤入り混じった情報が駆け巡る現代だ。時代に合った発信方法を考えるべきではないかと思う。(文・清水英斗)


写真提供:getty images

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清水 英斗

清水 英斗

サッカーライター。1979年生まれ、岐阜県下呂市出身。プレイヤー目線でサッカーを分析する独自の観点が魅力。著書に『日本サッカーを強くする観戦力』、『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』、『サッカー守備DF&GK練習メニュー 100』など。

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