中断明けのJリーグは『5人交代』が刺激に。ポジティブに作用する浦和、横浜FM

COLUMN清水英斗の世界基準のジャパン目線 第110回

中断明けのJリーグは『5人交代』が刺激に。ポジティブに作用する浦和、横浜FM

By 清水 英斗 ・ 2020.7.18

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5人交代枠が、サッカーに刺激を与えている。


新型コロナウィルスの影響でリーグ日程が過密になり、選手の健康状態が懸念されることから、一時的に導入された5人交代だが、至極当然、本来の目的に留まらず、戦術にも戦略にも影響を与えている。


第一に采配。あらかじめ想定されたことだが、フィールドの半数を交代できるため、監督はダイナミックな戦術変更が可能になった。3人交代で一気に流れを変える試合は、再開直後の愛媛vs徳島を皮切りに続々と見られ、もはや珍しい光景とは思わない。


5人交代はフレッシュな選手の割合を増やすため、試合が“ダレた”と感じることも減った。プレッシングを前面に押し出すチームは、よりスタイルを貫きやすくなったはず。もっとも、この点は過密日程が進む中で、どう変化するかはわからないが、現時点ではダイナミックな試合が増えた印象だ。


それらの戦術的な影響に留まらず、3~4節をこなすうちに、戦略の変化も見えてきた。上記で挙げたメリットは、ベストメンバーで戦える時間が減るデメリットと表裏一体だが、そのことがチームマネジメントに変革を迫る。


ハードワークでチームを支える柴戸海


たとえば、浦和を例に挙げよう。これまで目立っているのは左サイドの攻撃だ。ハーフスペースを走る偽サイドバックの山中亮輔と、大外でプレーする裏抜け&ドリブラーの汰木康也のコンビが絶妙だ。


山中のインナーラップを使い、汰木が裏へパスを出してもいいし、山中に相手ボランチが付いて行ったら、中央が空くため、汰木は得意のカットインで敵陣を切り裂く。両刃を持つ浦和の左サイドは、どう守られても突破するバリエーションを備えつつある。


彼らの攻撃力を生かす上で、重要なファクターになっているのが、ボランチの柴戸海だ。前方へのプレッシング、後方のサイドバックとセンターバックの間に空く、“チャンネル”と呼ばれるスペースのケアなど、とにかくカバー範囲が広い。


第3節の仙台戦では12.129キロを走り、抜群の運動量を見せた。ボールプレーは物足りないが、球際の鋭さ、カバー範囲の広さは、プレミアリーグ王者リヴァプールのMFを彷彿とさせる。


攻撃の選手が、攻撃に専念できるように。山中や汰木だけでなく、2トップの興梠慎三やレオナルドを含め、彼らが守備にズルズル下がらなくてもいいように、柴戸はハードワークしている。どちらも欠かせない、ワンセットだ。


5人交代により、選手の固定化を防ぐ


ところが、そうやって各選手の持ち味が噛み合ってくると、“外せない選手”が増え、チームが行き詰まることはよくある。


当初、私が懸念したのはレオナルドだった。彼は得点を取るスキルが高く、意欲もあり、ペナ幅に留まってプレーするのを好む。間違いなく点を取れる選手だが、一方で点を取れば取るほど、チームがそれに依存するリスクが増す。


点を取るから守備で手を抜いても黙認、サイドに流れなくても黙認。アンタッチャブルな存在を作ってしまい、早々とチームの上限が決まってしまう。コロナ前夜の今季開幕戦、浦和が3-2で勝利した湘南戦を見た後、私はそれを心配した。


実際、私が当初に予想した浦和の成績は、レオナルド得点王、チームは4位というもの。期待された人が点を取り、それなりに勝つが、特定選手のコンディションに依存し、相手にはまればアッサリ負ける。安定と持続を欠き、3位以上は望めない。だけど、レオナルドは得点王を取る。そんな浦和への期待と懸念が交差する予想をした。


ところが、そこに『5人交代』が降ってきたのである。


長期中断の影響で、中2日、中3日で試合を迎えなければいけない過密日程では、アンタッチャブルな存在など作りようもない。守備的に戦った、第2節の横浜FM戦は、レオナルドではなく、興梠と杉本健勇の2トップが先発した。杉本は献身的に守備に走り回り、0-0で勝ち点1をもぎ取った。


一方、レオナルドは次の仙台戦で先発し、ゴールを挙げて、2-1の勝利に貢献した。毎試合、スタメンも出場時間も変わっていく。ボランチの柴戸も、横浜FM戦、仙台戦とハードワークをしたが、鹿島戦はあっさりベンチスタート。


おそらく鹿島は中央よりも左サイドの永戸勝也が攻撃の肝になるため、柴戸を休ませる代わりにサイドハーフに長澤和輝を入れ、永戸の監視役を作ってバランスを調整したのだと思う。この辺りは、相手を計算しながらターンオーバーしているのだろう。


文字通り、「チーム全員で戦う」ことが大切


浦和はGKとDFは固定傾向だが、MFと前線は相手に合わせながら戦っている。汰木も、リーグ再開の2節から3戦連続で先発したが、後半早めに下がることが多かった。


「この組み合わせは良いなー」と思った選手が、次の試合であっさりチェンジ。それが今季のセオリーだ。ベストメンバーが固定できない代わりに、チームの上限も決まらない。戦えば戦うほど横幅を増す。それ自体には功罪あるが、長い目で見たチームの成長にはポジティブだろう。


選手としても、どんなに活躍し、結果を残しても、この日程ではベンチスタートでも文句は言えない。途中出場が多いので、クサっている暇もない。


今、Jリーグの監督たちが口にする「チーム全員で戦う」という耳慣れた言葉は、真の説得力を備えた。何せ起用がそれを裏付けるからだ。


チームマネージメントだけでなく、試合へのアプローチも変わりそうだ。


今季はどのチームもスタメンを大きくいじるのが前提なので、試合前の分析が難しくなっているのではないか。試合途中にも5枚の交代カードを切り、内容をガラッと変えてくるため、一つのプランの賞味期限はせいぜい45分だ。分析のあり方も、今までと同じ、というわけにはいかないのではないか。


研究された王者へもたらす影響


その意味で第4節の横浜FMvsFC東京は面白かった。


今季、横浜FMはかなり研究されている。これまでの試合を見ただけでも、サイドチェンジの展開と見せかけてスルーパスを狙う得意の崩し手は、各チームの警戒が強く、簡単にスペースを与えてくれない。ボランチが目を光らせ、ときには5バック化され、裏抜けを封じられる。そんな対戦相手が目につく。


昨季も松本山雅戦などは同様の対応をされて苦戦したが、逆に空いた中央へ仲川輝人がドリブルでカットインして左足のスーパーゴールを決め、1-0でどうにか競り勝ったこともあった。


今季はそんな難しい試合が増えそうな様相だが、仲川のスーパーゴールは水物だ。毎試合出るわけではない。いかに組織を崩すかがポイントだ。


FC東京戦では、中断明けから2戦連続出場の仲川ではなく、水沼宏太が右ウイングで先発起用された。仲川のような突破力、裏抜けのスピードは無いが、水沼は得意のクロスで遠藤渓太の先制点をアシストした。


クロスだけでなく、サイドチェンジで来たパスをワンタッチで叩いて矢継ぎ早にワンツーをしたり、ハーフスペースを走り抜けた味方へワンタッチパスを通したりと、単独の仕掛け以外でバリエーションを見せた。


おそらく、こうした試みが、今季の横浜FM包囲網を突破するきっかけになるのだろう。過密日程と5人交代枠は、固定メンバーを許さず、新たなチャレンジ、変化を奨励する。否が応でも研究対象となる王者としては、むしろ良いことかもしれない。


重要になる、即時対応する力


一方、FC東京も大したもので、水沼を入れたねらい、パターンが見えてくると、サイドバックの中村帆高が縦を切りながら鋭くプレッシャーをかけ、水沼のワンタッチパスを引っ掛けるなど、守備に工夫が見えた。クロッサーの水沼は仲川とは違い、カットインの怖さがないので、縦を封じられると、徐々に手詰まりになっていく。


劇的なスタメンの入れ替わりを踏まえると、試合前に細かな分析を落とし込むのは困難だろう。その分、選手がピッチ内で相手のねらいを読み、即時対応する力が重要になる。5人交代によって戦術が途中でガラッと変わるため、受けて立つ側としても、随所に対応力が求められるはず。代表監督もにっこりだ。


5人交代枠は、サッカーに刺激を与えている。頭が疲れる試合になり、選手もどんどん成長するのではないか。


今季は暫定的なルールだが、ひょっとしたら4年に一度くらい、5人交代枠で刺激を与えてもいいんじゃないだろうか。たとえば過密日程のワールドカップイヤーは、5人交代OKとか。もちろん、IFAB(国際サッカー評議会)とFIFAのマターだけど。


新型コロナで予想もできない展開になっているが、意外とJリーグ、楽しく観られそうだ。(文・清水英斗)


写真提供:getty images

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清水 英斗

清水 英斗

サッカーライター。1979年生まれ、岐阜県下呂市出身。プレイヤー目線でサッカーを分析する独自の観点が魅力。著書に『日本サッカーを強くする観戦力』、『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』、『サッカー守備DF&GK練習メニュー 100』など。

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