コロナ禍で過密日程のJリーグ。優勝への“3つの条件”に合致するのは川崎。注目はC大阪

COLUMN清水英斗の世界基準のジャパン目線 第112回

コロナ禍で過密日程のJリーグ。優勝への“3つの条件”に合致するのは川崎。注目はC大阪

By 清水 英斗 ・ 2020.8.15

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J1再開後、2節から9節まで破竹の8連勝。川崎フロンターレの勢いが止まらない。


元々尻上がりの印象が強いチームだ。リーグ序盤はしばしばAFCチャンピオンズリーグによる疲労を抱えて勝ち点が伸びず、ACLに敗退して日程が楽になると、コンディションと共に勝ち点が上昇していく。


技術に長けた川崎のサッカーは、運動量、スプリント共に低く抑えられ、夏場、あるいは夏バテを引きずる秋場との相性が良い。それらの結果、川崎は尻上がりのシーズンを送り、徐々に順位を上げる傾向があった。


ところが、今季は新型コロナの影響で、1節の鳥栖との引き分け後、リーグが中断。そして7月初旬のリーグ再開から、川崎は好調に転じた。ある意味、今年はコロナ禍の影響で、いつもの川崎の尻上がりのタイミングが2節に早まった。


本来はここからが真骨頂のスロースターターだが、このタイミングで転調したのなら、川崎の尻はどこまで上がるのか。今年はACLにも出場していないため、下がる要素は少ない。この先も注目だ。


優勝に向けた、3つの条件


今季のJリーグは、異次元の過密日程による負担が大きく、最近は暑熱も加わった。必然的にコンディショニングの戦いになる中、今季を制するチームの条件は以下の3つに集約されるだろう。


・走らずに勝てる戦術

・ターンオーバーを苦にしない選手層(+5人交代を最大限に生かせる選手層)

・ターンオーバーしても、組織力の低下を食い止められる戦術浸透度


「走らずに勝てるサッカー」について、9節終了時の上位陣のスタッツは以下のようになっている。


1位:川崎(走行距離17位、スプリント数14位)

2位:G大阪(走行距離8位、スプリント数11位)

3位:C大阪(走行距離10位、スプリント数18位)

4位:名古屋(走行距離3位、スプリント数17位)

5位:柏(走行距離16位、スプリント数14位)

6位:FC東京(走行距離18位、スプリント数1位)


全体的に上位チームの運動量は低く抑えられている。昨季は走行距離、スプリント共にリーグトップの横浜F・マリノスが優勝したが、今年は違うトレンドになりそうだ。この先は過密日程と暑熱の影響が、さらに深刻化することを踏まえると、省エネで勝つ戦術、あるいは戦略がますます大事になる。


その省エネ方法は各チームの色が出るところ。川崎で言えば例年通りの圧倒的な技術によるポゼッション、さらに今季はカウンタープレスにより高い位置でボールを奪い返すことで、攻撃性を増している。リーグ再開後、川崎は8試合中4試合で前半に2得点以上を挙げており、スコアで試合を楽にしているのも一つの省エネ要素だ。


スプリントが圧倒的に少ないC大阪


また、個人的にはC大阪を興味深く見ている。


ロティーナ監督が作る桜のチームは、昨季もスプリント数が最下位で、今季もやはり最下位だ。しかも、ただの最下位ではない。17位の名古屋が1試合平均150本のスプリントであるのに比べ、C大阪はたった123本。圧倒的な最下位だ。


実際に試合を見ると、理由は想像がつく。C大阪は無理をしない。無理にボールを奪いに行ったり、無理にカウンターで突進したり、それは普通のクラブで普通に見られる光景だが、C大阪にはその様子がほとんど無い。


プレッシングも印象的で、たとえば空いているスペースにボールを展開されたら、他のチームなら、一番ボールに近い選手が出来るだけ早くスライドしようとするが、C大阪はゆったりさん。ジョギングとまでは言わないが、1500m走程度のスピードで走っているように見える。時速24km以上の『スプリント』ではない。


他のチームの試合では、ボールにスプリントして寄せたFWがあっさりかわされ、「後ろの味方がついて来てない!」と激怒する場面をよく見るが、それはある意味、前線が全速力のスプリントで追うからこそ、後ろが遅れてしまう面もある。C大阪は早く相手にプレスをかけるよりも、味方がまとまってプレスすることを、より重視している。


7割程度のランニングで、ねっとり寄せれば、味方はまとまりやすい。もちろん、寄せが若干遅れることで、相手の前進をある程度は許すことになるが、それは味方と共に斜めに下がりながらスライドし、相手の勢いを吸収していく。C大阪の「ねっとり寄せ」は、リーグ最下位のスプリント数と結びつく。


ターンオーバーがポイント


もちろん、C大阪の省エネはそれに留まらず、ロティーナ監督になってから整理されたビルドアップも大きな要因だろう。無理をしない、無駄にリスクを侵さない、C大阪の省エネスタイルは、特に今季との相性が良さそう。上位陣はそれぞれが省エネ戦術を確立している。


今後のキーポイントは、ターンオーバーか。


これまではある程度、選手を固定起用してきた上位チームだが、コンディションの負荷が高まってくると、戦術的な省エネでは補い切れず、ターンオーバーを積極的に行う必要に迫られるはず。


川崎で言えば、谷口彰悟はこれまでリーグ戦全試合にフル出場した。今季は高い位置でボールを奪い返すことが注目されているが、そのアグレッシブな戦術が可能になるのは、谷口のような万能のセンターバックが広いスペースをカバーできるからだ。このピースが欠ければどうなるか。あるいは、ジェジエウと同時に。無理をして使い続ければ、負担が深刻になる。


川崎は選手層が厚く、戦術浸透度も高いので、上で示した今季の3条件にいちばん当てはまるクラブではある。特に攻撃陣はターンオーバーしても全く心配は無い。だが、中盤やDFについては、要のポジションを失うリスクは当然あるわけで、その時にどれだけ対応できるか。ともすれば、今季の牙を失う可能性もある。


これはどのクラブにも共通する課題だ。全員サッカー。今後はその意味がより重みを増してくるだろう。『全員サッカー』の雰囲気をまとうベンチは、それ自体が強みであり、魅力だ。(文・清水英斗)


写真提供:getty images

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清水 英斗

清水 英斗

サッカーライター。1979年生まれ、岐阜県下呂市出身。プレイヤー目線でサッカーを分析する独自の観点が魅力。著書に『日本サッカーを強くする観戦力』、『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』、『サッカー守備DF&GK練習メニュー 100』など。

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