コロナ禍で生まれた、欧州ベースの活動は『新しい代表様式』となるか? 

COLUMN清水英斗の世界基準のジャパン目線 第116回

コロナ禍で生まれた、欧州ベースの活動は『新しい代表様式』となるか? 

By 清水 英斗 ・ 2020.10.17

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2020年10月9日と13日に行われた、カメルーンとコートジボワールとの親善試合は良かった。結果は上出来、内容はイマイチとソコソコ。しかし何より、このマッチメークが実現したことが大きな収穫だろう。


日本と対戦相手は、共に欧州クラブに属する選手が集まり、コンディションも整った状態で、実りのあるテストマッチを行った。試合後も移動の負担は小さく、所属クラブへ帰還。過去にはこのタイミングで、コンディションを理由に週末のリーグ戦メンバーから外される日本代表選手が続出したが、今回はその心配がない。


この欧州遠征は、コロナ禍でもどうにか日本代表の活動を実現しようと、たどり着いた窮余の一策だった。通常であれば、このマッチメークは行われない。しかし、コロナ禍をきっかけに、私たちはリモートワークを含めた新しい働き方を創造したり、暮らしや人生を見直したり、あるいはハンコや書類文化を見直したりと、未来への発展が次々と起きようとしている。


強化としての意義があった2試合


それは日本代表の強化も同じだ。今回の欧州遠征が、コロナ禍における急場凌ぎの一策だったとしても、強化として意義深い2試合が行われたのは事実だ。この功績を「今回はたまたまだから」と忘れることなど、できようか? 


世界のトップをめざす日本代表だからこそ、サッカーの最前線たる欧州をベースに活動するのは自然な考え方だ。レベルの高い強化ができるのは、図らずもこの2試合で明らかになった。コロナ後も、欧州ベースの活動は『新しい代表様式』として定着してもいい。


もちろん、国内で親善試合を行うのも、日本サッカー協会(JFA)の運営上は必要なことであり、そもそもワールドカップ予選はホームでも行われるので、国内の試合がゼロになることはない。


たとえば昨年6月のように、2試合のスケジュールが空いたときは、欧州開催でマッチメークをする。あるいは予選のアウェー戦が、中東で1試合だけ組まれ、もう1試合が空いているときは、日本で親善試合を組まず、中東や欧州の東側等で試合を想定し、強い相手を探す。もう無駄な大陸移動はしない。A代表の強化としても、選手がクラブでのステータスを上げるためにも、できる限りはその方向へ持って行きたいところだ。


たとえ、日本国内で行う親善試合が減っても、選手がクラブで活躍し、名前を上げたほうが、世間の注目を集めやすく、収益につながる面はあるはず。ユニフォームだって、たくさん売れるだろう。そうしたマネタイズは、今までとは少し違うものを模索する必要はある。

 

代表監督、欧州移住のすすめ


マッチメークだけではない。代表監督の居所も、欧州へ移したほうがいい。日頃からA代表の主力選手とコミュニケーションを取りやすくなるし、クラブによっては練習も視察できる。怪我やコンディション等の理由で試合に出ていないときなど、彼らがクラブで置かれている状況を直接チェックできるのは大きなメリットだ。


また、クラブの監督や強化担当者とも関係を築きやすくなる。今の時代、代表でプレーする選手の大半が欧州にいるのに、監督が日本国内に居を構えるのは理に適わない。日本で予選や親善試合が行われるときは、欧州組の選手と共に、あるいは数日早く帰国すればいい。


Jリーグの視察はJFAの技術委員会に任せ、そちらは育成の結果として評価する。そしてA代表監督のリクエストを踏まえつつ、推薦する選手のリストを作って渡せばいい。この体制のほうが、それぞれの役割が明確に見えると思う。


もう一つ考えたいのは、ワールドカップの上位を目指す日本代表の監督が、最先端の現場にライブで触れることの価値だ。日本代表は日本人とは戦わない。戦う相手のサッカーは、どのようなアイディアで、どういう仕組みになっているのか。戦術は? コーチングは? コンディショニングは? データは? スカウティングは? そうした考えを知らず、無防備に戦うのは敗北への近道でしかない。


強化に必要な「新しい代表様式」


敵を知り、己を知れば百戦殆うからず。日本代表監督だからこそ、敵を知らなければならない。トップレベルに触れ続けなければならない。欧州組の日本人選手に聞いて知るといった間接的な方法ではなく、活発に、ライブで素早く、目でも耳でもアップデートできる環境にいたほうがいい。


私自身、過去にJリーグの日本人監督を何人も取材してきたが、勤勉な監督は必ずオフシーズンに欧州へ行き、「彼らはこんなことをやっているのか!」と刺激や学びを得て戻って来ていた。その経験を熱っぽく語る姿は、とても印象的だ。



世界の舞台で戦わなければならない代表監督なら言わずもがな、そこに居ることを日常とするべきだと思う。反対する勢力はもちろんいるだろう。しかし、現状維持は緩やかな衰退にしかならない。新しい代表様式へ向けて、JFAにも河野太郎がほしい。(文・清水英斗)


写真提供:getty images

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清水 英斗

清水 英斗

サッカーライター。1979年生まれ、岐阜県下呂市出身。プレイヤー目線でサッカーを分析する独自の観点が魅力。著書に『日本サッカーを強くする観戦力』、『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』、『サッカー守備DF&GK練習メニュー 100』など。

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