コロナ禍の『共生』を経て、2021年のJ1リーグは『競争』が激化する

COLUMN清水英斗の世界基準のジャパン目線 第123回

コロナ禍の『共生』を経て、2021年のJ1リーグは『競争』が激化する

By 清水 英斗 ・ 2021.1.31

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コロナ禍の降格なしに代表される『共生』の1年を経て、2021年のJリーグは再び『競争』が復活する。


しかも通常の競争ではない。昨季の降格なしで生じた歪を直すため、今季は一気に4クラブが降格する。J1もJ2も、特別に厳しい競争だ。J1はクラブ数も通常より2つ多く、全20クラブになるため、日程は4節分増える。今のところ東京五輪やワールドカップ予選も開催予定であり、過密日程は必至だ。さらに各試合はコロナ禍の開催リスクも潜む。


そんな厳しい2021年に向け、J1の各クラブはどのようにチーム編成を進めたのか。


予算下位のクラブを見ると、軒並み、主力の流出に苦しんでいる。特に目立つのが、大分だ。田中達也、知念慶、渡大生らの攻撃陣が入れ替わるまでは想定済みとしても、片野坂知宏監督が「想定外」と語る移籍により、最終ラインの絶対的な主力、鈴木義宜と岩田智輝を失うことになった。影響は甚大。戦術の基盤が揺れる大分は、試練の2021年になりそうだ。


湘南も、今季は中盤と最終ラインの流出が激しい。鈴木冬一や齊藤未月の海外移籍に加え、金子大毅、松田天馬、坂圭祐と、屋台骨の選手を一気に失う。鳥栖も同様に、中盤と最終ラインの流出が大きい。原川力、原輝綺、森下龍矢など昨季の主力を失い、果たして2021年の荒波を乗り切れるか。


補強により、相手の戦力を削り取る


下位クラブにとって戦力の流出は毎年のこととはいえ、今季はより一層厳しい。各クラブが強化予算を抑えるコロナ禍のリスクオフのためか、J1で手堅く計算できる選手が上位クラブの補強ターゲットに挙がりやすい。予算規模の小さいクラブは、狩り場になった印象だ。また、選手側としても、J1である程度の残留を続けると、次のキャリアを見据える意志も芽生えてくる。そうした要因が重なったのだろう。


結果的には、相手の戦力を削り取った。4クラブの降格という厳しい残留争いが予想される2021年だが、降格の本命を他に作ってしまえば、自分たちは残留に近づく。


バイエルン・ミュンヘンが、ドイツで無敵の存在になっているのはなぜか。自身が強いのは一番の理由だが、毎年のようにライバルの主力を引き抜き、相手を弱体化させたからだ。ある意味、これ以上の補強戦略はない。横取り40萬、最強。


若手の出場数が増大


逆に主力流出の痛手を被ったクラブにとっては、降格なしによってチーム作りの時間が与えられた昨季の積み上げがキーポイントになる。


28日にJリーグが公開した『J.LEAGUE PUB Report 2020』によれば、5人交代枠が導入された昨季J1は、1試合平均4.33回の交代が行われ、多くの選手が出場機会を得た。


若い世代を見ても、U-23選手の出場は2019年の1298試合から2243試合に増え、出場時間も87,930分から134,856分へアップ。出場した選手数も112人から144人に増えた。この傾向はU-21選手も同様で、出場試合は543試合から969試合、出場時間は33,724分から54,400分、出場選手数は56人から73人に増えている。


このように昨季は主力選手に限らず、多くの選手が出場機会を得た1年だった。この積み上げをチーム力の向上に生かしたクラブは、今オフの流出による戦力ダウンをある程度カバーできるかもしれない。この辺りもポイントになりそうだ。


優勝を争うクラブはどうか


昨シーズンの王者・川崎は、ベストイレブンに輝いた守田英正が海外移籍したのが痛手だ。重要ポジションのアンカーだけに、唯一の不安要素でもある。代役としてジョアン・シミッチを名古屋から獲得したが、スピード、活動量、俊敏性において、守田と同じプレーは期待できないだろう。逆にダイナミックなパスセンス、セットプレーでも生きる高さなど、シミッチならではの特徴も持っているので、どう噛み合うか。あるいは、田中碧が鍵を握る可能性もある。


ほぼ盤石の陣容ではあるが、隙なし、とまでは言えない。アンカーの確立、ACLとの両立が、無敵の王者に忍び寄る影になりそうだ。


川崎に限ったことではないが、G大阪、鹿島、FC東京など上位陣は全般的に、最低限の補強に留まった。大半は欠いたポジションの穴埋めで、積極的なチーム力増強の動きは見られない。


そんな中、やはり目を引くのは名古屋と清水だろう。


名古屋は、C大阪から木本恭生と柿谷曜一朗、川崎から齋藤学、浦和から長澤和輝、鳥栖から森下龍矢を獲得した。各ポジションに2人以上の競争を作る方針で、ACLを含めた過密日程を乗り切ろうとしている。本気度が伺える補強だ。


ただし、得点力不足を解消するストライカーは現時点で獲得できておらず、齋藤も柿谷もそのタイプではない。新規外国人の入国制限、隔離措置など、難しい状況ではあるが、目指すところを考えれば、補強は少なくとももう一手欲しい。


積極補強の清水


清水は昨季16位に沈み、今季は残留を目指す立場だが、想像以上のアグレッシブな補強に驚かされた。権田修一、鈴木義宜、原輝綺、中山克広、指宿洋史などを次々と獲得。外国籍選手も、チアゴ・サンタナ、ウィリアム・マテウスなど実績充分の選手を獲得した。


ただし、これだけ一気に選手が入れ替わると、チーム作りに時間を要し、スタートダッシュに躓く可能性も捨て切れないところ。だが、白羽の矢を立てた監督の名前が、その不安を一掃してくれる。ミゲル・アンヘル・ロティーナ。戦術の落とし込みに長けた指揮官である。C大阪時代の序盤は割り切って5バックを使い、守備安定を優先させつつ、徐々にチーム作りを進めた現実派でもある。


愛弟子の片山瑛一もC大阪から獲得した。この監督なら、新チームを1年目から軌道に乗せ、見事残留、場合によっては上位争いに進出させることも可能かもしれない。クラモフスキー時代とは違い、堅守遅攻のスタイルになりそうだが、清水が目指す「主導権を握るサッカー」をどのように解釈するか。C大阪では首脳陣に受け入れられなかったが、清水ではどう浸透するか、楽しみではある。


一昨年優勝の横浜FM、昨年優勝の川崎が、それぞれ異なる歩みで成し遂げたチームスタイルとクラブ戦略の一本化。それに続けとばかりに、今は多くのクラブが四苦八苦している最中だ。もっとも、コピーではいけない。目指すべき形は、歴史や地域性、規模等により、クラブの数だけある。清水はどうなるか。浦和はどうか。C大阪はそっちへ行くのか。数年後、その結果は出ている。(文・清水英斗)

写真提供:getty images

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清水 英斗

清水 英斗

サッカーライター。1979年生まれ、岐阜県下呂市出身。プレイヤー目線でサッカーを分析する独自の観点が魅力。著書に『日本サッカーを強くする観戦力』、『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』、『サッカー守備DF&GK練習メニュー 100』など。

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