世界基準の欧州に合わせるか、合わせないか。日本サッカーが出した答えは?

COLUMN清水英斗の世界基準のジャパン目線 第124回

世界基準の欧州に合わせるか、合わせないか。日本サッカーが出した答えは?

By 清水 英斗 ・ 2021.2.20

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「Jリーグと世界のサッカーは違う」「違う競技だ」――。


二石目が投じられた。引退会見で触れた内田篤人に続き、酒井高徳もまた『NewsPicks』のインタビューで追随。自身の経験、トーマス・フェルマーレンの葛藤を踏まえたリアルな語り口は具体的で、確かな説得力があった。欧州帰りの2人が、「Jリーグは違う競技」と口をそろえた意味は重い。


むしろ、重すぎたのか。注目度の高い記事にもかかわらず、SNSを見ると、Jリーグ関係者、メディア関係者、ファンもサポーターも、この話題で熱い議論を繰り広げる……という様子はなかった。どちらかと言えば、明け透けな現実を突きつけられ、言葉少なに、リンクを貼るだけ。ぐうの音も出ず、だ。ロングスローの勢いはどこへ。


ただ、別に難しい話ではないし、悩むことでもないと思う。選択肢は2つしかない。世界基準の欧州に合わせるか、合わせないか。それだけだ。そして、Jリーグはすでに暗黙の答えを出している。「合わせない」と。


仮に合わせるとしたら、日本の真夏にJリーグをやっていることが、まず理に適わない。気温30度を越える試合ではスプリント数が著しく低下し、強度が落ちるのは周知の事実だ。その中で勝ち点を得ることを考えれば、省エネ戦術が突き詰められるのは当然で、酒井が言うところの「違う競技」になる。


世界基準には合わせないJリーグ


これを改革するには、単なるカレンダー調整では無理である。夏をオフにした結果、他の日程が過密になり、強度が下がっては何も意味もない。抜本的にはJ1のチーム数、大会を削減することが不可欠になる。


しかし、それはJリーグ側のデメリットが多すぎるし、他にも社会のカレンダーとの歪み等、問題は山積みだ。たとえ日本代表の強化にメリットがあっても、最近はそうした議論に踏み込む気配すら消えた。世界基準には「合わせない」という方向で固まっている。


様々な視点において、海外組が増えた頃から、日本代表とJリーグはお互いの利益を一蓮托生と考えることが難しくなった。10年くらい前なら、日本代表フィーバーをどうにかJリーグに還元しようと苦心する向きもあったが、結局、海外組中心の日本代表が盛り上がっても、Jリーグへの波及効果は薄く、ほぼ期待外れと悟った。


一転、DAZN時代に入った今のJリーグは、マス向けの戦略よりも、対象を絞ったローカル化を進めており、それは日本代表に期待しない経営戦略、とも言い換えられる。おそらく、その方針は正しい。


Jリーグに期待しない、代表の強化方針


ならば日本代表としても、Jリーグに期待しない強化をすればいいだけの話だ。ワールドクラスの才能がある若い選手は、Jリーグに染まり切る前に、できるだけ早く欧州クラブへ行き、世界基準での競争を促す。


最近の日本の若手は、Jリーグで大した活躍をしなくても、早期に海外クラブへ移籍することが常態化しており、すでに傾向は出ている。あとはその若い選手たちのサポート、欧州でのキャリアアップに力を入れ、代表監督も欧州へ移住し、欧州をすべての強化ベースにすればいい。「Jリーグと世界のサッカーが違う」ことで直接的に困るのは、Jリーグではなく日本代表なのだから。


昨年はコロナ禍で実現せざるを得なかった、欧州組限定のA代表も、正直、何の違和感もなかった。ほぼそのままA代表である。違和感があるとすれば、このチームを率いる監督とスタッフが日本にいて、わざわざ欧州へ出かけて指揮を採った、ということくらい。


「Jリーグと世界のサッカーが違う」と同時に、Jリーグと日本代表の目的も違う。対戦相手も、大会フォーマットも違う。日本代表とJリーグは、途中で枝分かれした違う種目と考えたほうがいい。実際の傾向もそれに沿っており、日本では暗黙に答えが出ている話だと思う。


日本サッカーも時代が変わった


世界基準の競争がすべてでもない。サッカー選手にも色々な価値観がある。現役バリバリの時期にアフリカへ飛び込んだ中町公祐、年俸120円でJリーグ最年長デビューを果たした安彦考真、早期引退してビジネスの世界で活躍する元Jリーガーたち……。


現代は特に色々な価値観がある。全員が全員、「夢はワールドカップ出場!」と声を揃え、同じ方向へ駆け出すような幼い時代でも無い。今の日本サッカーは。


合わせるか、合わせないかで言えば、「合わせない」。すでに答えは出ている話だ。違いを埋める努力より、枝分かれをスムーズにすることを考えたほうがいい。(文・清水英斗)


写真提供:getty images

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清水 英斗

清水 英斗

サッカーライター。1979年生まれ、岐阜県下呂市出身。プレイヤー目線でサッカーを分析する独自の観点が魅力。著書に『日本サッカーを強くする観戦力』、『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』、『サッカー守備DF&GK練習メニュー 100』など。

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