無観客試合の洗礼を受けた日本。エンパシーを感じられない環境とストレスフルな判定

COLUMN清水英斗の世界基準のジャパン目線 第134回

無観客試合の洗礼を受けた日本。エンパシーを感じられない環境とストレスフルな判定

By 清水 英斗 ・ 2021.7.23

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世界最弱クラスの三半規管を持つ筆者には、なかなか辛い試合だった。ブンブン揺れるカメラワークに酔い、後半途中から気持ちが悪くなった。また、カメラがピッチの全景を映してくれないので、森岡隆三さんが解説する現象は、視聴者から見えない場所ばかり。先生…、サッカーが見たいです。


これは五輪とは関係ないが、レフェリーもストレスフルだった。ものすごくデリケートにファウルを取ったかと思えば、久保建英に背後から、あるいは足ごと刈るほど深いタックルを見舞っても流す。


中山雄太がボールキープ時に伸ばした手が、相手の顔に当たったらファウルで、久保建英の突破を止めようとした相手の手が顔に当たったら、ノーファウル。判定に一貫性が無かった。


あるとすれば、大きな声を出したほうに笛を吹く。これは一貫していた。観客がいないスタジアムは、選手の叫び声が響く。無観客の影響がこんな部分に現れるとは、さすがに想像しなかった。


当該チームからの抗議は無視され、逆にイエローカードで威圧されたが、観客がいれば、どうなっていたのか。スタジアム全体から判定に対し、「えぇ~」と、日本独特の不信感を示す、どよめきが上がったのではないか。


単なる判定への不満と、深い不信感は、明らかに違う音を奏でる。たとえアウェーでも、「ざわざわ…」と利益を得た側の困惑が表れたりもする。


そうした諸感情が審判に届くのは、試合だけでなく、サッカーとしても大きなこと。ところが、無観客ではそのスタジアム効果を得られない。『エンパシー』(共感)の無い試合が悲しかった。


無観客はJリーグでも経験していたが、何だかんだ、国内リーグなら、たとえ無観客であっても共通の感覚は残っているし、近年はジャッジを公に振り返る習慣もある。無観客でも『エンパシー』が消えることはない。


しかし、国際試合はそれが無に等しく、レフェリーの独演が淡々と続く。「これが真の無観客か」と震えた。慣れたくはないが、今だけは、慣れなければいけない。心はホットに、頭はクールに。


省エネ・南アフリカの術中にはまる


そして肝心の試合だが、南アフリカは[5-4-1]でベタベタに引いてきた。ボールの出どころへのプレッシャーは無く、カウンターの意志も希薄。自陣で可能な限りポゼッションして時間を稼ぎ、一方でリスクを一切取らず、寄せられたら即ロングキック。


南アフリカは90分間を消費するためだけに、あの場にいた。徹底的な省エネ戦法。彼らが置かれた状況を考えれば、仕方がないのかもしれない。


解説の森岡さんは、南アフリカもパスを回されて疲れているでしょうから…と、何度か仰っていたが、個人的にはそうは見えなかった。むしろ試合全体的には、南アフリカの意志に従い、徹底した省エネで進んでいると感じた。


特に前半は相手のペースに付き合いすぎではないか、と思ったが、結果として日本は省エネのまま、初戦で勝ち点3を得られた。これはポジティブだ。


遠藤航、堂安律、中山雄太と、3枚のイエローカードを提示されたのは痛手になるが、とはいえ、累積警告は2枚で次戦出場停止なので、大会中、どこかでその機会は訪れる。


仮に次のメキシコ戦で勝ち、イエローカードを受けて、半消化試合となったフランス戦で出場停止を消化すれば、1試合の休養も得られて、まさにベスト。もちろん、わかっている。メキシコは強敵中の強敵だ。


良いスタートを切った日本


逆に一番嫌なのは、準々決勝で2枚目を受けて、準決勝が出場停止になること。対戦相手は間違いなく最強レベルの強豪なのに、遠藤らを欠いて戦えるわけがない。早めに累積2枚を重ね、早めに1試合休んだほうが得策かもしれない。


もちろん、実際の試合ではそんなことを言っていられない。また、警告を受けるつもりが全くなくても、南アフリカ戦で受けてしまった遠藤の場面のように、選手からはコントロールできない部分も大きい。


ただ、言っておきたいのは、初戦でイエローカードをもらったことが、必ずしも悲観的な状況を招くとは限らない、ということだ。


日本は良いスタートを切った。凹まず、凸まず、ちょうどいい。(文・清水英斗)


写真提供:getty images

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清水 英斗

清水 英斗

サッカーライター。1979年生まれ、岐阜県下呂市出身。プレイヤー目線でサッカーを分析する独自の観点が魅力。著書に『日本サッカーを強くする観戦力』、『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』、『サッカー守備DF&GK練習メニュー 100』など。

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