強敵メキシコ攻略にはパススピードアップが不可欠。田中碧に期待したい“川崎風”パスリズム

COLUMN清水英斗の世界基準のジャパン目線 第135回

強敵メキシコ攻略にはパススピードアップが不可欠。田中碧に期待したい“川崎風”パスリズム

By 清水 英斗 ・ 2021.7.24

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南アフリカとの初戦を1-0で制した男子五輪代表は、第2戦で強豪メキシコとの勝負に挑む。


4-1で圧勝したフランス戦を見る限り、メキシコの仕上がりは相当良さそうだ。ロシアW杯の初戦でドイツを破ったような、いわゆる奇襲戦法ではなく、真っ向勝負でフランスを倒した。


もちろん、今回のフランスは「Cチーム」と揶揄される編成であり、連係も未成熟だが、それでも各ポジションには名選手、有望な若手をそろえる。そのフランスを堂々と上回って見せたメキシコは間違いなく強い。


強力3トップのメキシコ


システムは[4-3-3]。3トップの個性が際立ち、中央の9番エンリ・マルティンは身体能力と技術を兼ね備え、ガッチリと前線に起点を作る選手だ。両ウイングは左サイドに11番アレクシス・ベガ、右サイドに10番ディエゴ・ライネスが入り、共に利き足とは逆サイドに配置される。


特にベティス所属のライネスは、左足のドリブルが技巧的で小回りが利き、状況打開力に長ける。日本で応対するのは中山雄太になりそうだが、1人で止めるのは難しいだろう。


かといって2人、3人がフラフラと囲いに行けば、その間を抜いたり、引きつけてパスを出したりするセンスもあるので、対応はよくよく考えなければならない。反対側のベガも、小柄ながらパワフルで突進力があるので、こちらも要注意だ。


センターラインを司るオーバーエイジ


逆三角形の中盤3枚も運動量があり、技術が高く、メキシコらしいテンポの良い攻撃を司る。センターバック2枚は上背もスピードもあり、強固。サイドバックのオーバーラップも連係が取れており、ウイングのライネスらが相手サイドバックを引きつけたスペースへ、タイミング良く上がって来る。厄介な選手ばかりだ。


オーバーエイジは9番マルティン、7番ルイス・ロモ、13番ギジェルモ・オチョアの3人。センターフォワード、アンカー、GKと、センターラインの各所に3枚を使用している。


守備の対応を整理したい日本


このメキシコと、日本はどう戦うか。


足下の組み立てを好むチームなので、理想的にはハイプレスで追い詰めたいところ。しかし、メキシコはアンカーの7番ロモの立ち位置により、4枚回しと3枚回しを巧みに使い分ける。連動は非常にスムーズだ。


日本が遅れてチェイシングすれば、あっさりかわされる可能性が高い。また、たとえ追い詰めても、メキシコは9番マルティンへのロングパスで中盤を越え、起点を作ることも柔軟に行う。相手3トップも個の力が高いので、日本の中盤が前へ、前へと深追いするのはリスクが大きい。


スペースを与えるとサイドバックのオーバーラップなど連動も早いので、日本はDFとMFの距離を近く保ちたい。基本的にはミドルゾーンで、[4-4-2]ブロックを敷いて構える形になるのではないか。


ただし、[4-4-2]そのままの立ち位置では、5レーンの隙間にうまく顔を出されるので、MF4枚は中に絞る必要がある。ウイングにはサイドバックが対応し、ボールを展開されたら、カットインのコースをMFが消す。メキシコのFWは上背が無いので、クロスは入れさせてもOKだろう。そんなこんなで、守備は対応を整理しなければならない。


メキシコのプレスをどうやって外すか


攻撃面では、メキシコの積極的なプレスをいかに外せるかが焦点になる。


注目は日本のダブルボランチ、遠藤航と田中碧だ。スタートポジションで言えば、メキシコのインサイドハーフ、17番セバスティアン・コルドバと8番カルロス・ロドリゲスの2人とマッチアップする形だが、コルドバとロドリゲスは中盤にゾーンで立つ意識が高いため、一旦スペースを抑えた状態から前に寄せてくる。


DFラインから2列目の久保建英や堂安律に、直接クサビを入れるのは簡単ではなさそうだが、その前で遠藤や田中を経由すれば、彼らが前を向く時間は得られるはず。そこを起点に縦パスや横の展開を入れ、主導権を握ることは、日本の技術なら不可能ではない。


ただし、それにはパススピード、パステンポが不可欠だ。たとえ隙間があっても、日本のポゼッションのスピードを、メキシコの再ポジショニングのスピードが上回ってしまえば、上記で想定されるスペースは使えず、守備が間に合ってしまう。


田中碧に期待


正直、南アフリカ戦のテンポでは、メキシコに潰されると思う。もっと大胆に、リズムを上げてサッカーをしなければ、メキシコには押し込まれっぱなしになる。日本はギアを上げられるか。もし、それを避けるなら、リトリート+ロングカウンターの一択になってしまう。


その意味で、最も期待するのは田中だ。川崎風の早いパスリズムに、チームを乗せてほしい。メキシコは球際も深く突っ込んでくるが、その勢いを逆手に取って運ぶことができれば、日本が試合を支配できる。勝負はそこからだ。


金メダルへの道を考えても、このメキシコ戦は思い切ってチャレンジするべき試合だろう。先にフランス対南アフリカが行われるので、その試合が引き分けなら、日本の戦略にも影響を与える可能性はあるが、いずれにせよ、前半は思い切って行くしかない。


日本はどんな試合ができるか、楽しみだ。(文・清水英斗)


東京オリンピック 男子サッカーグループA 第2節

U-24日本代表 vs U-24メキシコ代表

7/25(日) 20:00キックオフ

テレビ朝日、NHK-BS1は19:50

BS朝日 4Kは20:00より生中継予定



写真提供:getty images

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清水 英斗

清水 英斗

サッカーライター。1979年生まれ、岐阜県下呂市出身。プレイヤー目線でサッカーを分析する独自の観点が魅力。著書に『日本サッカーを強くする観戦力』、『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』、『サッカー守備DF&GK練習メニュー 100』など。

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