フランス撃破で準々決勝進出! 完勝のポイントになった旗手の起用と“5レーン”

COLUMN清水英斗の世界基準のジャパン目線 第138回

フランス撃破で準々決勝進出! 完勝のポイントになった旗手の起用と“5レーン”

By 清水 英斗 ・ 2021.7.29

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フランスを4-0で圧倒! 男子サッカー・日本五輪代表、3連勝でグループリーグ突破を果たす! うーん、たしかA組は「死の組」と書いていたメディアもあった気がするが…。強い。


日本はメキシコ戦に続き、フランスに対しても正しいゲームプランを用意していた。基本的には後ろでボールキープし、主導権を握る。守備も無闇に下がらず、ミドルゾーンまでに解決することを目指す。


フランスに対して受け身になり、自陣深くに押し込まれると、彼らはクロスやセットプレーで相当な圧力をかけてくるので、両チームの特徴を踏まえても、その戦い方は絶対ダメ。戦略は日本が主導権を握る以外にない。


ボランチの安定


日本は田中碧と遠藤航を中心としたボール回しが、終始安定していた。田中はいつからあれほど安定した選手になったのか。昔は調子良くプレーしている試合でも、一度は致命的なミスをやらかすイメージがあったが、今では最後までキリッと締められる選手になった。頼もしい限り。


そうやって後ろでポゼッションしつつ、フランスがプレッシングの矢印を前向きに変えると、その瞬間に日本は縦をねらっていく。


攻撃のキーワードは『5レーン』だ。前半4分に酒井宏樹が大外をオーバーラップしたとき、左ウイングの18番コロ・ムアニは付いて来なかった。


フランスは元々、ウイングが下がって守備をしないし、この試合は2点差以上の勝利を目指し、攻撃的に戦う必要があるため、尚その傾向が強まる。


つまり、フランスの4バックは“晒されやすい状況”であり、日本は中盤を越えて縦パスさえ突き刺せば、相手4バックのすき間で、5レーンに人数をかける攻撃が抜群に効く。


先制点は狙いどおりか


前半27分の先制ゴールが、まさにそうだ。


田中が鋭い縦パスを入れたとき、大外に堂安律、ハーフスペースに久保建英、センターバック間に上田綺世、反対側のセンターバックとサイドバックの間に旗手怜央がそれぞれ立ち、日本は相手4バックのすき間に美しく立ち位置を取っていた。


必然、相手サイドバックの4番ティモテー・ペンベレは、堂安と久保を1人で見る格好になり、田中の縦パスを受けた久保がフリーで前を向く。そこから上田が受けてシュートに持ち込み、旗手が飛び込んで空けたスペースから、こぼれ球を久保が押し込んだ。


決して偶然の形ではなく、メキシコ戦同様、日本はねらった形を見事に得点に結びつけたと思う。


存在感を発揮した旗手


おそらくだが、旗手を起用したねらいも、ここにあったのではないか。


旗手は5レーンを突く攻撃が抜群にうまい。レーンから飛び出すことも、レーンへ飛び出した味方を使うことも。左サイドバックの中山雄太はハーフスペースへのインナーラップを活発にねらい、タイミングが完璧ではなかったにせよ、ねらい所の連係は取れていた。


もちろん、三笘薫、旗手を縦に並べれば、攻撃の破壊力は増したかもしれない。しかし、守備やゲームコントロールの不安があるので、この形で全体のバランスを意識しつつ、フランスの弱点となる4バックのすき間を突いたのだろう。


酒井の豊富な運動量


2点目はカウンターだった。相手ウイングのドリブルを酒井が引っ掛け、遠藤から久保にボールが渡ると、旗手とのパス交換から、久保が上田へスルーパス。上田のシュートをGKポール・ベルナルドーニが高くはじき、ノーバウンドで酒井が詰めて押し込んだ。


酒井のシュートがバレーボールのスパイクに見えてしまったのは、この試合が五輪であるせいだろうか。


それにしても、走り込んだのは最初にボールを奪った酒井だった。逆に、カバーするべき位置にいた相手ボランチの12番アレクシス・ベカ ベカは、追う素振りすら見せなかった。


久保の先制ゴールにより、3点が必要になった時点で、フランスは何人かの選手が折れていたのかもしれない。


新たなプレッシャーに立ち向かう


日本は2-0でハーフタイムを迎え、これまで2戦フル出場の久保を下げ、三好康児を投入した。


第2戦で南アフリカが引き分けてくれれば(しつこい)、このフランス戦は主力を全員休ませることができたが、それが叶わずとも、日本は前半に2点を奪って突破を盤石にし、久保を休ませた。


後半は遠藤、堂安、田中も順番にベンチに下げ、自力突破ならぬ自力休養をゲットした。唯一、酒井がイエローカードをもらったのは理想的とは言えないが、橋岡大樹を長めに起用し、慣らすことはできた。次戦で本領発揮してくれるだろう。


ここからだ。グループリーグは正直、万全の準備をした日本のアドバンテージが大きかった。しかし、これで各チームが3戦を終えるわけで、未成熟だった連係や戦術は徐々に形になってくる。日本の環境にも慣れる。逆に日本は金メダル期待の現実化という、新たなプレッシャーが登場する。


本物のヒリつく勝負は、ここからだ。(文・清水英斗)


写真提供:getty images

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清水 英斗

清水 英斗

サッカーライター。1979年生まれ、岐阜県下呂市出身。プレイヤー目線でサッカーを分析する独自の観点が魅力。著書に『日本サッカーを強くする観戦力』、『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』、『サッカー守備DF&GK練習メニュー 100』など。

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