東京五輪サッカー男子準決勝。見どころは、スペインのポゼッション対日本のプレッシング

COLUMN清水英斗の世界基準のジャパン目線 第141回

東京五輪サッカー男子準決勝。見どころは、スペインのポゼッション対日本のプレッシング

By 清水 英斗 ・ 2021.8.2

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いよいよ準決勝のスペイン戦だ。大会直前に対戦した強化試合は、1-1で引き分けたが、本番はどうなるのだろうか。


2012年のロンドン五輪も、大会直前に強化試合を行ったメキシコとは本番の準決勝でも対戦したが、当時は強化試合に勝ち、肝心の本番で負けてしまった。今回はこの再戦をどう戦うか。


最初に注目したいポイントは、スペインのアンカーへの対処だ。[4-3-3]を敷くスペインは、アンカーがポゼッションの中心であり、逆に日本は[4-4-2]なので、相手のアンカーは浮くポジションになる。ここに、どう連係して対処するか。


メキシコ戦を踏襲?


一般的には2トップが天秤の動きで、センターバックとアンカーの間を斜めに行き来してプレッシャーをかけるが、メキシコ戦の日本は、主に久保建英がアンカーをほぼ専任でマークし、センターバックへのプレッシャーは1トップの林大地と、左サイドハーフの相馬勇紀が出て噛み合わせる形を取った。


前者は2対3の数的不利で追っているので、どうしても瞬間的には相手のアンカーやセンターバックがフリーになりやすい。強化試合でも、スペインは特に左CBパウ・トーレスのドリブルが巧く、前にスペースが出来たら、すかさず中盤へボールを運んできた。


そこへ日本はダブルボランチが反応し、空いた脇でインサイドハーフに縦パスを受けられ、中盤を攻略される。どうしてもこの守り方は、真ん中が不安定になりがち。相手のビルドアップが巧ければ巧いほど、その傾向はある。


逆に、後者のメキシコ戦で取り入れた形は、真ん中のマークが決まっているので、守備がずれにくい。しかし、サイドでは相馬の背後にスペースができるので、ここを利用されると、打開される恐れはある。


どちらを取るか、何を捨てるか。スペインが相手ならば、真ん中にボールを通されるほうが嫌なので、個人的には後者のメキシコ戦のやり方が向いていると思う。ただし、メキシコ戦のことはスペインも情報として持っているので、うまく外される懸念はある。森保監督はどう考えるだろうか。


逃げ切る展開が理想


基本的に、森保ジャパンは先行逃げ切りのチームだ。相手に先制されると、試合を大きく動かすことが得意ではない。どうにかプレッシングから先制ゴールを奪ったら、相手の変化に粘り強く対処しつつ、逃げ切る展開に持ち込みたいところだ。


その際、自陣での守備でポイントになるのは、ポケットを徹底して封鎖することだ。センターバックとサイドバックの間、ニアゾーンとも呼ばれる場所を、スペインはウイング、インサイドハーフ、サイドバックが連係して突いてくる。


日本は4バックなので、ニアゾーンは常に空きがち。ここにサイドバックが留まるのか、サイドハーフが中へ下がるのか、ボランチがカバーするのか。この守備連係は大きなポイントになる。


優先順位として、サイドの大外は捨てても構わない。スペインの特徴を考えれば、グラウンダーで折り返されるニアゾーンを徹底して防ぐことが大事だ。


準決勝でスペインと戦ったコートジボアールも、このニアゾーンを守る意識は高かった。しかし前半の終わり頃など、疲れで集中が途切れそうな時間帯には、しっかり隙を作ってしまい、スペインはそれを抜け目なく突いた。日本はフワッとしそうな時間帯こそ、声を掛け合って集中を促したい。


5バックも視野に


スタメンの11人に関しては、安定して守るだろう。やや不安があるとすれば、後半に選手が代わった後だ。強化試合ではサイドの守備連係が悪く、ニアゾーンを崩され、1-1に追いつかれる原因になった。


もし、交代後の連係不安が解決できない場合は、4バックをやめ、ニアゾーンに人の厚みで対抗できる5バックに変更することも考慮すべきだ。


その場合はセンターバックが1枚多く必要になるが、冨安健洋が出場停止になる中、ベンチから外れていた町田浩樹、瀬古歩夢は準備が出来ているだろうか。今こそ、力が必要だ。


日本は[5-4-1]で構え、1トップには前田大然を置き、ミラクル・レスターのジェイミー・ヴァーディのごとく、あるいはロンドン五輪の永井謙佑のごとく、裏へ蹴り出したロングボールへ爆走して、終盤を凌ぐ。


あくまで先制ゴールを奪えたら、という前提だが、リードした後半をどう凌ぐかは、日本にとって重要なポイントになるはず。


相性の良い格上との対決


ここではスペインをどう止めるかに焦点を当てたが、相手を恐れるばかりではなく、相手を恐れさせる要素も、日本は持っている。


久保建英や堂安律を中心としたコンビネーションは驚異的であり、プレッシングの強度も高い。スペインが相手なら、日本はセットプレーでも優位に立てる。どうにかそこで、先制ゴールを奪いたい。


スペインはビルドアップが世界一巧いが、日本もプレッシングが長所だ。ニュージーランド戦に比べると、試合の相性は良い。


準々決勝では相性の悪い格下チームに大苦戦した日本だが、この準決勝は、相性の良い格上チームとの戦いになる。その点はポジティブだ。いや、いけそうな気がする。(FIFAランキングはスペイン6位、日本28位、ニュージーランド122位)


日本もスペインも、準々決勝は120分間を戦った。条件はほぼ五分だ。どちらも疲れはある。最後は気持ち。


悲願の金メダル、初の決勝へ向けて、歴史の扉は開くのか。(文・清水英斗)


写真提供:getty images

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清水 英斗

清水 英斗

サッカーライター。1979年生まれ、岐阜県下呂市出身。プレイヤー目線でサッカーを分析する独自の観点が魅力。著書に『日本サッカーを強くする観戦力』、『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』、『サッカー守備DF&GK練習メニュー 100』など。

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