強豪メキシコとの3位決定戦。日本が二度勝つために必要な、戦術的総合力

COLUMN清水英斗の世界基準のジャパン目線 第143回

強豪メキシコとの3位決定戦。日本が二度勝つために必要な、戦術的総合力

By 清水 英斗 ・ 2021.8.5

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これがワールドカップならば、3位決定戦はエキシビジョンマッチに毛が生えた程度の意義しかない。


後世に語られるとき、「3位」「4位」の区別はなく、「ベスト4」とひと括りにされるからだ。3位決定戦の勝敗に、そもそも価値が見いだされていない。


しかし、五輪は違う。3位は「銅メダル」と賞賛され、4位とは異なる栄誉が授与される。天と地ほどに違う。


日本の選手たちは常々、「このチームで1試合でも多く戦いたい」と宣言してきた。その言葉が真実ならば、銅メダルを、このチームで戦った証として、ぜひ獲得してほしい。きっと自分だけの宝物になるはずだ。


メキシコと2回目の対戦



ただし、メキシコとの再戦は、難しい試合になると思う。


『二度目』をキーワードとする格言は世界にいくつもあるが、古代ギリシャの詩人エウリピデスによれば、「二度目の考えが一番賢い」。ロシアの劇作家チェーホフによれば、「人生が二度あれば、一度は手習い、二度目は清書」。


メキシコはグループステージの敗戦から多くを学び、二度目は必ず、改善してくるはずだ。


プロの世界は分析と対策。同じ相手に二度勝つのは、常に難しいミッションになる。今回のメキシコは、一度目以上の強敵と考えたほうがいい。


実際、スタメンも変わった。


メキシコのエースと見られた右ウイングのディエゴ・ライネスは、日本戦以降はベンチスタートとなり、右利きで縦のスピードに長けたウリエル・アントゥナがスタメンに起用されている。


左利きのライネスはカットイン一辺倒で、相手に囲まれてプレッシングのターゲットになりやすい存在でもあり、守備の強度も低かった。


一方、アントゥナはサイドの幅一杯に、縦の推進力を発揮し、サイドをえぐってクロスからチャンスを作る。サイドバックのオーバーラップに頼らなくても、ピッチの幅を使えるようになったメキシコは、攻守のバランスが増した。


日本はグループステージのメキシコ戦、前半6分に、酒井宏樹の縦パスに堂安律が抜け出して、最後は久保建英が先制ゴールを挙げたが、当時ほど簡単にラインの背後を突くのは難しいかもしれない。


そうやってバランスを重視した11人でスタートした後、後半にスペースが空く状況になってから、ライネスはスーパーサブ的に入ってくる。これはこれで厄介だ。ライネスを思い切って外した判断により、メキシコは面倒なチームになった。


配置に微調整を施すメキシコ


もう一つ注意したいのは、日本戦でアンカーを務めたルイス・ロモが、ポジションを右インサイドハーフに上げていることだ。


センターフォワードのエンリ・マルティンの背後から、相手センターバックとサイドバックの間を突くように飛び出すロモは得点力も高く、危険なプレーを続けている。


グループステージの日本は、左サイドの相馬勇紀の片上がりにより、ハイプレスをガチッとはめてショートカウンターを繰り出した。


だが、そのハイプレスの背後を、ロモが虎視眈々とねらっているとしたら、どうか。相馬→中山雄太と、前向きに連動して縦ズレする左サイドの裏は、ロモにとっての獲物だ。


実際、そのスペースはグループステージでも、メキシコは途中からねらっており、ロモをインサイドハーフに上げる采配を見せたが、当時は味方とのタイミングが合わず、飛び出しが実ることはなかった。


メキシコは南アフリカ戦、韓国戦、ブラジル戦を経て連係を上げている。二度目の試合でも、同じハイプレスがはまると考えれば、日本は足元をすくわれるかもしれない。


有終の美を飾りたい


とはいえ、ビルドアップにおけるセンターバックの不安定さは、その後もちらほら見られるので、ロモの脅威に蓋をしながらプレスをかけるように工夫すれば、依然としてハイプレスは有効だろう。


日本はどのようにプランを立てるのか。ここは大きなポイントだ。


いずれにせよ、同じ相手に二度勝つためには、戦術的な総合力が必要になる。


ニュージーランド戦で機能しなかったビルドアップ、スペイン戦であと一歩突き破れなかったロングカウンター、そして欲しいときに取れなかったセットプレーの得点など、いくつかの課題に答えを見せてほしい。


勝って大会を終われるのは優勝チームだけと思いきや、実は銅メダルも、勝って終わることができる。控えめでもいい。笑顔の中で、この挑戦に幕を引きたい。(文・清水英斗)


写真提供:getty images

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清水 英斗

清水 英斗

サッカーライター。1979年生まれ、岐阜県下呂市出身。プレイヤー目線でサッカーを分析する独自の観点が魅力。著書に『日本サッカーを強くする観戦力』、『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』、『サッカー守備DF&GK練習メニュー 100』など。

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