東京五輪3位決定戦、メキシコに完敗。久保建英の涙に、痛いところを突かれた

COLUMN清水英斗の世界基準のジャパン目線 第144回

東京五輪3位決定戦、メキシコに完敗。久保建英の涙に、痛いところを突かれた

By 清水 英斗 ・ 2021.8.7

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東京五輪3位決定戦。メキシコに1-3で敗れた後、久保建英はピッチに突っ伏して号泣した。起き上がってからも、その涙が枯れることはなく、嘆き続けた。


20歳の涙には胸が締めつけられたし、同時に、グサッと痛いところを突かれた気がした。なぜ、彼はあれほど号泣したのか。準決勝でスペインに敗れた後には、泣かなかったのに。


そのときは「死ぬほど悔しかったですけど、本当にもう出せるものは全部出したので、涙も出てこないですし、なんもないですね」と語っていた。


それなのに、なぜメキシコ戦では涙が溢れたのか?


敗退した現実感が襲ってきたことも大きいが、もう一つは、スペイン戦とは違い、メキシコ戦では“出し切れなかった”と感じたのではないか。


テレビ中継のインタビューでは、最初の一言で悔しそうに言った。


「グループリーグで勝ってた相手だったので、結果論ですけど、気の緩みがあったのかもしれないですし、ちょっとこのゲームの重みを、自分たちは理解できなかったのかなと思います」と。


日本を上回ったメキシコ


このゲームの重み。


ロンドン五輪で4位に終わった吉田麻也と酒井宏樹は、3位決定戦の意味、それが勝利で終わるか敗北で終わるかにより、チーム自体がポジティブにもネガティブにも捉えられることを、身をもって知っていた。


だからこそ、3決の恐ろしさをチームに伝えようとした。


それが伝わらなかった、とは思わない。日本も真剣だった。だが、メキシコはさらに上回った。


おそらく、彼らはムカついていた。グループリーグで日本ごときに敗れ、屈辱にまみれて。あるいは、フランスに大勝した後で油断があったかもしれない、自分たちに対して。


メキシコのスタメンにも驚いた。日本戦以降は右ウイングのディエゴ・ライネスをウリエル・アントゥナに代え、ルイス・ロモの配置も変更していたのに、全部元に戻した。


負傷したエリック・アギーレを除けば、グループステージの日本戦と全く同じスタメンだ。まさしく再戦。悔しさを晴らすのは、同じメンバーで。


ハイプレス対策は万全


リベンジの意志は予想していたが、正直、予想以上だったかもしれない。


メキシコは序盤、堂安律が足下に受けるふりをして飛び出そうとすると、サイドバックとアンカーのロモ、両方がカバーに走るなど、堂安に対する意識はかなり強かった。足下に入れたボールも、図ったように潰していた。


また、日本はグループステージほどのハイプレスはかけなかったが、相馬勇紀を肩上がりさせる場面があれば、メキシコはロモが下がって3バックを組み、そこへ同数でマークしてくる林大地、久保、相馬の3人の間を通し、両サイドバックを出口に使うなど、日本のハイプレス対策は万全の様子だった。


そしてカウンターからのPK奪取、フリーキック、コーナーキックで3得点。サイクル・セットプレー。日本をしっかり分析していた。


彼らはムカついていた。日本に自尊心を傷つけられた。だからこそリベンジをかけ、この試合に臨んだ。そして、日本はそれを跳ね除けることができず、まんまとリベンジを許したのだ。


悔しくてたまらない


試合に対する準備や気持ちで負けた。久保はそう感じたのではないだろうか。監督や他の選手たちは、もしかしたら否定するかもしれない。


だが、感性の強い久保だからこそ、メキシコとの3位決定戦に臨むチームの準備が、それまでの試合に比べて緩かったことを、敏感に感じ取ったのではないか。


だからこそ、「気の緩みがあったのかもしれないですし、ちょっとこのゲームの重みを、自分たちは理解できなかったのかなと思います」という言葉が出てきた。悔しくてたまらない、後悔が終わらない。


20歳の叫び


久保は欧州クラブとの契約内容に、「東京五輪の出場確約」を付けていた、という話は聞く。ともすれば契約の条件を悪くする可能性もあるのに、それだけのことをしてでも、自分のすべてを尽くすと誓い、臨んだ東京五輪。それなのに、最後に消化不良の敗戦だ。


まんまとリベンジを許した、自分たちの甘さ。こんなに悔しいことはない。この終わり方はない。


3位決定戦とか、銅メダルとか、○○年ぶりとか、そんなことはどうでも良かったんじゃないだろうか。


リベンジに燃える相手に対し、「絶対にリベンジなんかさせるか!」「俺たちのほうが強えんだよ!」と、このチームを大事に思うからこそ、シンプルにメキシコを叩き潰す気持ちで向かえていれば。


個人的にも、久保の涙が無ければ、3位決定戦のレビュー原稿は今大会屈指の緩さになった気がする。


それだけに、20歳の叫びはグサッと刺さった。しばらく、この棘は抜けない。いや、抜かないでおく。(文・清水英斗)


写真提供:getty images

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清水 英斗

清水 英斗

サッカーライター。1979年生まれ、岐阜県下呂市出身。プレイヤー目線でサッカーを分析する独自の観点が魅力。著書に『日本サッカーを強くする観戦力』、『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』、『サッカー守備DF&GK練習メニュー 100』など。

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